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〜めげない心・折れない心〜

花みずき(ペンネーム) [プロフィール] :2月号

 この連載の第5回「うまくほめて正しく叱る」では、人の心の階層に注目し、内側に届くほめかたと正しい叱り方について、MEHモデルを使ってPS研究会の成果を披露しました。今回は、このMEHモデルを応用し、嫌なことがあってもめげない方法、折れない方法について考えてみましょう。

  自分と仕事を切り離す

 連載の第5回「うまくほめて正しく叱る」をざっと振り返ると、人の心には1層から3層の3重構造の階層があり、内側にいくほどその人の本質的な価値観や、持って生まれた性質に近い部分に迫ります。ほめるときは内側に届くように、叱るときは外側だけを指摘するようにという話でした。
 筆者は、最近、コールセンターのオペレータを取りまとめるマネージャの方にお仕事についてお話を伺う機会がありました。お察しのとおり、コールセンターにはいろいろな電話がかかってきます。怒っているお客様やあわてているお客様が多いとのこと。電話口で怒鳴られたり、あからさまにイライラした口調で叱られたりするそうです。そのマネージャは、オペレータを何年も経験してきた「たたきあげ」キャリアの方でした。話の終わりに、私はお仕事が辛くないかと尋ねました。その答えは次のようなものでした。
 「お客様のおっしゃっている“こと”はそのとおりです。お怒りもごもっとも。ただしそのことを、自分が怒られているとは思わないように、(対象となる)システムやミスそのものが悪いのだ、というふうに思い直す必要があります。つまり、悪いのは自分ではなくて、“そのもの”なのですね。自分と仕事の間にしっかり壁を作って切り離す必要があります。」
 この話をきいて、なるほど、とヒザを打つ思いでした。他人の指摘や怒りは、自分以外の対象物そのものに向け、自分の心のコア部分とは切り離しておく。自分に怒りをぶつけてきても、そのことを自分の内側に取り込まないようにする、という方法は、たしかに、穏やかに仕事をする上で大事なことですし、今までPS研究会が提唱してきたMEHモデルの理屈にもかなっています。

 時には俳優/女優のように

 その方は続けます。
 「そして時には小さい子供のいる母親のようにお客様をなだめたり、老人を介護する青年のように優しく接したり、相手によって態度を使い分けます。『はい、スタート』であっという間に泣いたりできる俳優のように、自分を切り替えるのです。」
 なるほど。「プロジェクトマネージャ」や「部長」「課長」は、仕事の中で与えられた役割であり、普段私たちが果たしている「会社員」「お父さん/お母さん」などの役割と同じです。その時々の状況や果たすべき役割によって相手への接し方を切り替る、それが短い期間に行うことができれば、まさに俳優/女優のようであるといえるでしょう。

 受け止め方をコントロールする

 人から怒られたり(PS研究会の中では「怒る」でなく「叱る」を推奨しています)、意見が衝突したりしても、そのことを自分自身が悪いのだというように心の奥底までは届けず、ものごとそのものにフォーカスして、対処方法を考えたりすることが大事だと思います(図-1)。
図1 何でも内側に取り込まない  これはすべてのものごとを軽く受け止めるとか、無責任でよい、ということとは違います。嫌なことや自分の意図しないことが起こったとき、はたまたプロジェクトでのレビューで厳しい指摘を受けたとき、自分自身が否定されたとか、自分はダメだとか思わないこと。なんでも闇雲に自分自身の内側まで取り込んでしまわないというのは、健全な心で生活するために重要な過ごし方だと思います。
 「嫌なできごとはどんな人にも起きるもの。そのことをどう受け止めるかで、今後が変わる」という話をよく見聞きします。じゃ、どう受け止めればいいの?と思っていたのですが、そのひとつの答えが「できごとやものごとそのものにフォーカスし、自分の内側に取り込まない」ということなのだと思います。MEHモデルの3層は行動や成果物。ここに着目してどう対処すればよいのかを、考えてみることがポイントです。心の外側で処理して、頭を使って対処すればいいのです。めげない心、折れない心を育てていきましょう。

 編集者コーナー
 このコーナーの編集担当二人が語ります。
花水木(はなみずき、以下「は」)「久しぶりだね!上海に行ってたんだって?どうだった?」
木犀草(もくせいそう、以下「も」)「うん。ビックリすることが多かったよ。一番ビックリしたのは、とにかく人が多いこととスピードの速さかな。万博が近いから急ピッチで街の整備が進んでいるよ。」
は:「へぇ、歴史が長いからゆったりしてるイメージだったよ。違うんだね。」
も:「職場のメンバーは、控えめだったり、謙虚だったりするけど、街の中は違ってて、地下鉄も我先に乗ろうとするし、信号も守らないから事故が多いよ。とにかく自分が優先って感じ。」
は:「生き残るためにタフなのかな?」
も:「それはあるかもね!今回の話の、嫌なことを内側に入れないってことを自然にやってる気がしたなぁ。行動や成果物に責任を感じないのか、『それはそれ、これはこれ』なのか分かんないけど。」
は:「周囲の変化が早いとか、競争が厳しいとかって環境なら、その刺激とうまく付き合う方法が自然と身につくのかもしれないねー。」
も:「そうかも。・・・あれ、何これ?」
は:「もくちゃんがいない間に、この前の企画原稿をチェックしといたんだ。修正箇所に赤ペン入れといたよ。っていうかさ、そもそも企画に無理があるかもね。」
も:「がーん。めっちゃ真っ赤やん。自信あったんだけどダメだったかぁ。凹む・・・」
は:「こらこら、タフな話をしたばっかりでしょ!内側に入れないの。中国人にもまれて鍛えられたんだから、気を取り直して改善案を考えてみてね。」
も:「はーい。じゃあ、”自分優先”で、先にゴハン食べにいっていい?」
は:「しょうがないなぁ。気分転換の時間も大事だしね。」
も:「もりもり食べて、いい3層だすぞ。」
は:「その意気!タフな、もくちゃんを応援してるよ!」
も:「タフでいるために・・・じゃあ今日は編集長のおごりってことで!笑」
は:「こら。調子にのらないの!笑」


 筆者・編集チーム:花水木(はなみずき:ペンネーム)
PS研究会メンバーで本業はIT企業の技術職。現在は、研究教育企画部門に所属し、現場に役立つ研修を試行錯誤している。長年にわたり、プロジェクトという閉ざされた空間で、いかに個人が幸せに過ごすかを追求中。花水木の花言葉は「私の思いを受けて下さい」と「華やかな恋」。当コラムの編集チームの編集長。
 編集チーム:木犀草(もくせいそう:ペンネーム)
関西弁バリバリのPS研究会メンバー。キャリア形成をメインテーマに研究活動中。本業ではIT企業の人材育成企画と並行してPMOを担当。現場を走り回ってます。木犀草の花言葉は「陽気、快活」。プロジェクトをサポートする木犀草になりたいな。当コラムの副編集長。
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Partner Satisfaction PS研究会について:PS研究会は、財団法人日本科学技術連盟のソフトウェア生産管理(SPC:Software Production Control)研究会のひとつで、2002年から動機付け(モティベーション)に関する研究を続けています。2003年から、PMAJ(旧:JPMF)のIT-SIGのひとつ「パートナー満足と人材活用(PS&HM)ワーキンググループ」としても活動しています。詳しい紹介はこの連載の第1回目をご覧ください。
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