日本の危機の認識とプロジェクト・マネジメント活用への提言 (22)
東京P2M研究会 渡辺 貢成: 2月号
Z. |
1月号ではいろいろ多岐にわたって書いてもらった。今月は歴史の流れにそって、何がおきて、その問題点はなにで、目先の解決、抜本的な解決等に分けて、歴史を掘り起こしてみよう。通称【タックスイーター図表】

- 1990年日本は製造業で世界1となる。しかし、経済成長率2%を下まわる。
日本国は~1990年までは10兆円規模の新規事業を立ち上げてきた。模範生であった。
- 1990年~1995は経済成長率が2%を切り、デフレに差し掛り、税収が下降してきた。しかし、ここで新進気鋭の経済学者が広大な「つくば学園都市開発が成功した」学園都市構築のための財テクを手掛け、土地価格の上昇で、計画の成功を示した。そのため大蔵省も財テクを推奨していたが!
- 1997年から2000年にかけて突然バブル崩壊で山一証券が自己破産し、日本全土で復旧対策が行われた。
- 2000年以降はA~Dまでの復旧政策を採用するも、
- A: 経営上に問題のない組織 復旧対策浮揚
- B: 経営に部分的に不都合がある組織は不都合箇所を解体排除し、小型化して復帰する
- C: 大企業・中企業で復活に不都合な組織は復活できる部分を復活させ、大企業に吸収合併させる。
- D: ゾンビ企業と見なされた企業は解体される。
A~Dのこの格付けで組織を調査すると、財テクの規模がおおきく、ゾンビとなる企業が多かったことから、災害多発国日本ではゾンビ企業も含めて再調整されて生き返った。
第一がゼネコンである。この財テクの主は土地の値下がりで被害が大きかったが、災害大国日本のゼネコンが消滅すると今後の災害復旧に困るコト、後に控えたオリンピックの施設完成ができなくなるという視点が理解され、ゼネコンは運よく復活した。
- この時点で国家の予算管理はすべて大蔵省の権力範囲に収まり、大蔵省はN0. 1組織となった。
- 2005年度には官僚による公共投資の予算は200兆円準備された。
- ①今までの予算は目の前にある必要最低限を準備した。最低限の積立は官の節約主義に基づいて予算を決めていた。それも節約は美徳という発想のもとに予算が決められていた。
- ②現代の発想では、日本は常時災害の被害が高い。しかし低予算が評価されているため、その後の修復頻度が高くなり、予算不足がおこる。正しい手法は1度作った堤防は再度作り換えることは不経済である。長期堤防修理の場合は、十分なる予算を見込み、年月ベースで損失を少なくすること。
- ③外人は予算が大きいと、確実に長持ちする災害防止策を講じるが、もっと重要なことは、その工事に使った金は、即日、市内を駆け巡るため、景気がよくなる。更に公共物件ができたために、その町の人が使うことで、2重に役立つことである。そして次の仕事の予算となって、帰ってくることができる。また、本工事だけでなく、次回の工事の予算になる。公共工事は予算のダブル価値をつくる。
- 2005年小泉内閣構造改革で世界一低い最低賃金法を採用した。
- ①この手法は日本への出稼ぎ外人向けに低賃金をきめたと、国家は判断しているが、民間使用者は日本人に向かって、あんたがこの金額で嫌なら、外人にまわすよという言葉で、日本人は仕方なく最低賃金を受け入れる。その習慣が定着すると、日本人が値下げした分は発注者の懐に入り、確実に中流的生活者が最低で我慢し、発注者が貯金するので好景気にならず、結果として低景気となる。これも財務省好みのデフレ政策になっているが、小泉総理はイノベーションと理解して満足していた。そしてこのイノベーションは国力を上げて、多くの貧乏人と、少数の富裕層をつくる仕組みとなった。理由は総理の勘違いで、『実施者の目的は安い外国人を使うことで、国が豊かになるという発想であった。ところが、金持ち(例えば官僚)は貧乏人よりケチなため、これを貯蓄に回し、日本人の労働者にも最低賃金を要求する方式を採用した。(経済学をきわめた政府なら、まず国民を豊かにすることが、優先される。質の低い人材から、国を豊かにする結果を期待できない。昭和の人間が国を豊かにした。池田総理の所得倍増論だ。当時の日本人は外人に対し、劣等感を持っていた。しかし所得倍増が国民を鼓舞し、日本人の既存の優秀さを発揮させてくれた。「国のなすべき発想」と「家庭的な発想での政策」は事態を逆転させることを学んで欲しい)。
- 2011年大津波の発生という情報入手後に2社の原発は防波堤を設置し、防衛を果たした。
- 2011年3月霞が関村の住人と、経団連傘下東電は無対策であった。米国では原発最高責任者は大統領である。日本の担当官庁は経産省でるが、津波情報を無視した。東電がこの重要な情報を相談無しに無視するわけはない。東電は自然現象に対する責任はないと弁明。しかし米国オハラ米大統領は潜水艦で来日し、東電福島原発への救助薬品を手土産に持参したが、東電は支援の拒否をおこなった。
- 2011 日本国の原発稼働の全責任者経産省は破壊した原発の改修作業の許可をしているはずだが、その理由書も国民に知らせていない。
- 2022現在東電からの回答は、会長、社長、福島第一原子力発電所所長からも責任がないという回答だけがある。日本の電力会社は運営上すべての経費を国民からの収入で賄うことになっている。
- 2011東日本大震災の復旧作業はすべてのゼネコンが受けて実行したが、ゼネコン傘下の現場作業実施会社の大半が財テク被害で破産し、復旧予算を使い切ることができなかった。
- 2012年 アベノミクス
2012年民主党野田政権が消費税増税を実施する体制を整えたが、11月解散総選挙で自民党安倍政権が勝利した。安倍政権は財務省と野田政権が主張した消費税8%増税の延期を求めて、緩やかなインフレ対策を主張し、2年間で2%弱の政策を宣言した。しかしこの案件は財務省からクレームがつき、官が実施する公共投資以外は国債発行をすると日銀法違反となること拒否した。
この結果安倍政権は米国イエール大学浜田宏一名誉教授に依頼し、ノーベル賞国際経済学者クルーグマンの支援を得て、財務省に交渉し、日銀は民間からの要請も審査し、結果に不備がなければ受け入れることになった。
アベノミクスは
第一の矢:金融緩和政策の実施: インフレ率を緩やかな2%成功
第二の矢:財政政策の実施:①資源配分機能 ②公共財の供給 ③所得再配分機能
第三の矢:成長戦略の実施:人口減少の中での成果は難しい?
を実施した。
最初の実行は第一の矢の実施で緩やかなインフレ率2%弱は成功した。
ところが財務省は翌年8%消費税増税を実施した。その結果はインフレ率の効果はなっていたが、マイナスにまではならなかった。
第二の矢を飛ばした。再度緩やかなインフレ率2%弱を確保した。
ところがまた消費増税10%がぶつけられ、多少マイナス気味になったがデフレになったわけではなかった。
第三の矢が放たれた。
この第三の矢に問題がある。人口減少であること。経済成長のネタがすくないこと、その中での成果である。ここでは下記に示す日本国の乖離する税収、歳出、公債、GDPを並べた表を示す。
図表2 日本国の乖離する歳出、税収、公債、GDP (兆円)
年号 |
会計税収 |
歳出総額 |
公 債 |
GDP |
2010 |
41.5 |
95.3 |
53.8 |
510,720 |
2011 |
42.8 |
100.7 |
57.9 |
510,841 |
2012 |
43.9 |
97.1 |
53.2 |
517,861 |
2013 |
47.0 |
100.2 |
53.2 |
528,248 |
2014 |
54.0 |
98.8 |
44.8 |
529,812 |
2015 |
56.2 |
98.2 |
41.9 |
538,081 |
2016 |
55.9 |
100.2 |
44.3 |
542,137 |
2017 |
57.7 |
97.5 |
39.8 |
551,220 |
- 2013年~2017年までのGDPが増えているので、アベノミクスの成果が出ているように思われる。
- ◎アベノミクスの参加者の社員の報酬が10年間停滞しており、この課題に対峙した。大企業に余剰金が残されており、当然参加者に配布されるものと新聞に書かれていたが、財務省は、これを無視して余剰金を抱える大企業に減税として配布した。配布されるのが正当な回答であったかわからないが、社員の昇給という対策はとりやめ、大企業への減税として配布した。これで日本国はバブル前の一般社員は世界的に低級労働者の部類に格下げされた。
- タックスイーターとしての財務省:今回の財務省の減税は400兆円と言われている。日本国の1990年代の報酬は先進国並みであった。1990年のイノベーション費用として10兆円が企業に研究費として使われていた。1995年から財テクがはじまり、一般税収は5兆円さがり、歳出総額が5兆円上がり、差し引き20兆へと倍増した。1997年バブルが弾けて、企業の救済政策が行われ、2000年には年間40兆円消費し、2005まで年間40兆円が対策費として使われた。5年間で200兆円である。200兆円はゾンビ企業への救済として使用されたものと思われる。図表1【タックスイーター図表】これまでの時期は大蔵省が査定する金額は正確に利用者に届けられた。
- ①1990年~1995までの研究費は10兆円X5=50兆/5年間であった。
- ②1995~2000年の間で財務省査定額は①の2倍=100兆円
- ③2000~2005年間の財務査定額は200兆円 (公共投資査定額)
- ④2005~2009年間の財務査定額は200兆円
- ⑤2010~2014年間の財務査定額は275兆円
- ⑥2015~2019年間の財務査定額は未定 (275兆円+中級社員の給付金を減税活用?)
1995年までは大蔵省の査定で、明確に物件別に査定された額が大蔵省から配布されたが、2000年になって、ゾンビ企業の損金含み財務省が取り仕切っているが、ここで財務省は大蔵省を上回る権限を獲得した。更に2000年以降の公共投資利用として官が使う予算として総額200兆円を獲得した。この200兆円は官が使う総額で、件数別に試算した数字ではないトータル予算で、財務省は大きな権限を確保し、大蔵省時代より大きな権限を持つようになった。
- ☆①アベノミクス後の最近の事例は、アベノミックス案件で働いた雇用者は10年間昇給なしで働いた。彼らの期待は、アベノミックス関連の大企業は受注金額から、社員の昇給分が支払われると思っていた。経済的に考えると、昇給分は次の景気上昇に使われ、アベノミックスの成功に寄与するはずであったが、財務省の判断で、従業員への昇給が無視され、大企業への減税にかわり、逆に、これを財務省は大企業へ400兆円規模の減税をおこなった。それまでは財務省の権限は公共投資の200兆円であったが、日銀が民間の企業の案件も日銀が使えることになり、民間大企業減税分400兆円が財務省の管轄範囲となり、過去にない大きな権限を得た。これで財務省は天下り案件をすべて財務省の権限で実施できることになり、更に国家の危険がまた一つ増えることになった。
- ☆②上記に関しては財務省傘下の経団連系大企業から、グローバリゼーションに見合ったイノベーションは期待できない。霞が関村の住人は官庁への入所時の試験の成績は官庁機構の持つプライド育成に貢献するが、グローバリゼーションへの競争力に貢献しないのは自明の理である。
- ☆③現在の経団連はグローバリゼーションに勝つという発想を持っていない。
- ☆④最低賃金法は国民の恨みを買う方向になるだろう。
- ◎3月号のお知らせ
3月号はグローバリゼーションへの準備を取り上げる。
しかし、今の日本の霞が関村の存在で簡単に勝てることは無理である。
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以上
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