理事長コーナー
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コンピュータが意識をもつ日

PMAJ理事長 光藤 昭男 [プロフィール] :2月号

 機械は人間を超えるか。この問いにレイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)が答えている。カーツワイル氏は、世界的な未来学者で発明家といわれている。Googleの技術責任者としてAIの開発に携わっている。彼によれば、「人間は脳をコンピュータに接続することによって、さらに複雑な感情や特質を発達させる。人間は、もっとユーモラスで、魅力的に、そして愛情表現が豊かになる」という。

 レイ・カーツワイルは、著書「The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology」(邦書名「シンギュラリティは近い:人類が生命を超越するとき」)の中で、2045年にその特異点(singularity)を迎えると予言している。すなわち、2045年にコンピュータの能力が人類を越えるという予測だ。それによって起こるさまざまな問題に触れている。その結果、「コンピュータが、自らを規定しているプログラムを自身で改良するようになり、永続的に指数関数的な進化を始める。それ以降の発明などはすべて人間ではなくコンピュータが担うようになるので、以降の進歩を予測できなくなる。人間がいくら考えても、このコンピュータの思考が想像できないレベルに達してしまう」。コンピュータが自己増殖を始め、その行く先がどこまで成長して行くか判らなくなってしまうのだ。

 それでは、コンピュータが人間の知能を超え凌駕するのは、いつだと予測しているのだろうか。レイ・カーツワイルは、10年後の2029年だとしている。2030年代初頭には、「人間の“意識”を全て電子化でき、その結果、われわれはどこにいてもアイデアや経験を瞬時に交流できるようになる。仕事のために人と会ったり、打ち合わせをする会議も不要になる」。

 東大大学院で意識の神経メカニズムを研究する渡辺正峰准教授は、「“意識”とは、物事を処理する時に伴う感覚体験です。喜怒哀楽のような感情も意識の一部。意識と思われがちな認識、思考、意思決定は別の機能です。人の脳の行う機能の多くは、機械によって実現しています。」(朝日新聞朝刊文化・文芸欄@2018年8月16日)脳機能の一部が機械で実用化されている例として、「車の自動運転機能、デジカメの顔認証機能」をあげている。いずれも「周囲の状況を認識し、適切な行動を判断し、実行に移す」。

 「自動運転にはドライブが楽しいという感覚はない」。機械だから当然だ。また、機械は冷徹であり人のように感情を持って行動することはないと一般に考えている。ところが然に非ず。「人間らしく振る舞う機械は既に存在します。(そして近いうちに)見た目だけでなく動作や受け答えまで、まるで人と変わらない機械もできるでしょう」。渡辺准教授はこう予測する。機械が喜怒哀楽を持つのである。

 レイ・カーツワイルは、「脳をコンピュータに接続する」ことに言及している(前記)。渡辺准教授は、これを具体的に考えている。「開頭手術をした上で、脳と機械を接続する」ことで「脳と機械の意識が一体化してしまえば、たとえ脳が終わりを迎えても、意識は機械側に存在し続けるはずです」という。「脳はニューロン(神経細胞)を組み合わせた神経回路網に過ぎず、それを十分に模した機械を作ることができれば、そこには“意識”が宿るはずだと多くの科学者が考えています」。すなわち、人の意識は機械に宿る。機械の維持管理を適切に行い続けることが出来れば、機械に移された“意識”は永遠に存在し続ける。レイ・カーツワイルのいう「人間は、もっとユーモラスで、魅力的に、そして愛情表現が豊かになる」のである。

 プロジェクトの基本属性の一つに個別性がある。同じ内容のプロジェクトはないということだ。ディープラーニング等の技術を使い、この多種多様なプロジェクトの過去実績データを収集し、進行しているプロジェクトに有益なアドバイスや教訓を授けることができる。進行中のプロジェクトの客観状況を適切に与えることができれば、環境や制約条件の範囲内で、行動すべき事(Do it)、行動すべきでない事(Don't do it)を判断して行動することができる。時間と伴に“賢くなり進歩することは確実だといえる。

 月や火星の探査機が運んだ小型ビークルは、適切な解を自ら導き自立的に稼働している。やがて、地上でもヒトに類似の身体を持ち、五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)プラス予測(第六感)を備えた多言語対応のロボットが仕事や家庭の場で出現するだろう。多くの現場で、仕事の3~4割を占めるルーティン業務対応のロボットは既に稼働している。残り仕事の6~7割がプロジェクトタイプだ。ホワイトカラー対象のロボットは、どのように実現されるか興味が尽きない。人材不足といわれる今、まさに登場が待たれる“emergingプロジェクト人材”である。

 
 以 上

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