① |
時間がかかる
なぜなぜ分析に慣れていないエンジニア(開発担当者)に説明資料を作らせ、エンジニアの周りの関係者たちが、資料の不備を見つけて、エンジニアに何度も資料の作り直しをさせる。
エンジニアが説明資料を作成することに、平均8時間かかる。期間では、長くなると、半年程度かかることもある。こうして、分析の専門家でないエンジニアの時間をどんどん奪っていく。 |
② |
エンジニアが責められる
TPSでのなぜなぜ分析は、工場の製造ラインで適用されてきた分析である。この場合、分析対象は、現場の“もの”である。
しかし、ソフトウェアに適用する場合、対象は“もの”ではなく、“エンジニア”となる。分析対象であるエンジニア自身に「なぜ」と問うのである。
「なぜ」は最強の質問であるが、心理学的に「なぜ」は、ストレスがかかる質問であると言われている(The Art and Architecture of Powerful Questions, Eric E Vogt, Juanita Brown and David lsaacs, 2003)。意図せず、過ちを犯した人を攻撃してしまう質問である。
エンジニアは、間違いを起こしたくて、起こしているのではない。質問する側も責めるつもりはなくても、「なぜ」と問うと、エンジニアは攻撃されていると感じる。
ソフトウェアの間違いは、エンジニアの判断で、作り込んだり、見逃したりしたものである。エンジニアに「なぜ」と問うことは、エンジニア自身の判断基準を分析させていることになる。これは、価値観を評価させていることにもなりかねない。
このようになぜなぜ分析は、エンジニアが責められている感じ、ストレスを感じる分析である。 |
③ |
分析力が育たない
エンジニアは、「なぜ」と問われただけで委縮し、正しい分析が行えない心理状態となる。「なぜ」「なぜ」と繰り返すごとに、根本原因からどんどん離れていく。
また、エンジニアと聞き手との間で、議論が空中戦に陥りやすい。
このため、個人の分析力も育たないし、障害の再発防止、未然防止のノウハウも蓄積しない結果となる。
出てくる原因と思い込んでいるものが、中途半端な内容である。
例えば、“テストが漏れた”“設計間違いだった” 、“レビューが不十分だった”、“ コーディングミスだった”などの中途半端な内容を原因に採用してしまう。
これらの原因への対策も中途半端となり、絆創膏を貼るだけとなる。テストやレビューを増やすことが対策になりがちである。このように、仕事が増えるが、根本原因に辿りついていないため、絆創膏を貼り続けなければならない。
ぼやけた原因にぼやけた対策で、工夫したことが見えない。 |