PMRクラブコーナー
先号   次号

「プロジェクト」との出会いで豊かな人生を!

「PMRクラブ」顧問 西尾 清光 [プロフィール] :9月号

 私が千代田化工建設に入社したのが今から55年も前のことで、当時化学工学課程の学卒は例外なく化工部という部に配属されていました。所が、私が入社した年はそれまで化工部長であった方が「プロジェクト部」を新設し、私はその部に配属されたのです。学校でプロジェクトという言葉すら聞いた記憶が有りませんから何をするのかさえ分からなかったのが、社会人となって初めてのスタートがプロジェクトとの付き合いでした。
以来10年間は一年一作の国内プロジェクトをこなし、突然の巡りあわせから以後10年余りは海外プロジェクトで、そのほとんどは国際ジョイントベンチャー形態での海外プロジェクトに従事しました。
同窓会の仲間と会う度、工学部出身で私ほど広く世界での様々な想い出を経験出来た幸せ者はいないなと思いを新たにしています。
プロジェクトの良い所は「目的の達成を味わうことが出来る」ということではないでしょうか。時には苦い味わいも有るでしょうが、美味しく楽しい味わいもあります。苦い味も時間の経過と共に良い思い出となります。プロジェクトを数多く経験すればそれに比例して良い思い出が残り、人生の充実感を深く感じるのではないでしょうか。
昔コンバットと云うテレビ番組でサンダースという部隊長が少人数の部隊を率いて任務を遂行し、次の任務では全く別人の仲間を与えられて任務を遂行するというのが有りましたが、正に次々とプロジェクトをこなしていく遂行形態です。
プロジェクトは人の集団がP2Mのプロジェクトマネジメントの第1章から第11章までの道具を活用して目的を達成することだと思います。
人の集団を統率するのがプロジェクトマネジャーでしょう。人の集団は、人種も違えば、専門分野も違い、年齢・性別・性格も違います。その集団を数々の制約の中でベクトルを一致させ効果的に動かせる人、それがPMR有資格者のPMなのです。
1976年4月3日、PMの私は初めてカタール国の工事現場を訪問しました。その日はPMの私が来たのだからと言って、現場工事を早仕舞いにして所員全員と現場から一時間程離れたキャンプで会食をしている時でした。現場の既設設備で当時世界最大級と言われたガス爆発が起きたのです。翌日現場を見て唖然としました。既設設備が全くの瓦礫と化していたのです。客先の方々は数名無くなりましたが、我が社の所員は全員無事でした。爆発一時間前に全員現場を離れていたのでした。正に「Escaped by a hair」でした。
復旧工事の契約交渉では現地で即決・即断しなければならない羽目に何度か遇いました。PMは独語のEinsamkeit(孤独)が宿命として背負わされていますし、トルーマン大統領の座右の銘として引用される「The buck stops here.」、その場での決断が必要なのです。
昔の映画で「大空港」というのが有りました。機長が機内爆発で操縦出来なくなりスチュワーデスが管制官の指示で操縦するのですが、一つの管制区から次の管制区に移動する時管制官が「Good luck!」と激励するのです。私は部下の赴任時肩を叩き「Good luck!」をつかいました。これからご活躍をされる皆さんに「Good luck!」を送り、筆を置きます。

ページトップに戻る