関西P2M研究会コーナー
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P2Mとの出会いとP2M研究会での活動

関西P2M研究会 太田 隼人:6月号

 大学で経営工学を専攻したこともあり、卒業後はソフトウエア会社へ入社し、企業の基幹システムの企画・設計・開発業務を行ってきた。業務内容もSE業務からプロジェクトマネジメント、教育、PMOへと変わっていく中で、従来のプロジェクトマネジメントの領域を超えたマネジメントとしてP2Mの存在を知った。P2Mは「スキーム・システム・サービス」の領域をカバーしており、価値創造のプロセスをもち、広い視野と高い視点と洞察力を持った人材育成を目指すということで新たな可能性を感じた。なぜなら、受注した請負業務の「立ち上げ〜計画〜実行〜監視コントロール〜終結」だけなら従来のプロジェクトマネジメントで十分であるが、新しいサービスを創造しビジネスとして立ち上げ継続して収益に結びつけていくためにはP2Mの領域まで拡大する必要があると感じたからである。それがきっかけである。ただ、そのときはP2Mの適用概念を自分自身の中で具体化できていなかった。それがわかってきたのはP2M研究会で活動してからである。
 PMS(プロジェクトマネジメント・スペシャリスト)の資格取得後、P2M研究会へ入会した。当時、名古屋で2年程業務を行っていたので、P2M中部研究会へ入会し、「P2MでのEAの位置付けを検証」、「個別事例研究」、「テキスト研究」を経て、翌年5月に名古屋P2Mセミナーにて事例研究「IT投資効果測定をP2Mで検証」を発表した。このセミナーでの資料作り・発表の中でP2Mの価値連鎖の視点、統合マネジメントの視点が理解でき、この機会を与えてくださったPMAJ(日本プロジェクトマネジメント協会)、P2M中部研究会の皆様には感謝している。その後、大阪へ戻り関西P2M実践事例研究会の発足と同時に入会し、「P2M企業競争力型アーキテクチャ研究」の分科会は敷居が高く躊躇したが、P2Mにおいてプロファイリング〜アーキテクチャは核となる部分であるため思い切って扉をたたいた。秋の合宿でいきなり「新規ITビジネスの立ち上げ」という難解なテーマをいただき、最初はどうなるかと思っていたが、懇親会の席で「請負業務をプロジェクト呼べるだろうか」という素朴な疑問を話したことがきっかけとなって、「請負業務へのP2M適用概念」を描き、「ITサービスの創造」をまとめることができた。翌年度は輪読会にて東京P2M研究会の報告書をもとに「小原教授の洞察力モデル」を議論したことがきっかけとなって、昨年度の「ITサービスの創造」を輪読会の結果へマッピングすることでビジネスモデル創出プロセスが確認でき、そのために必要な組織能力についても少しずつではあるがわかりかけてきた。
 研究会は、異業種の有識者が集まっての議論と個人での執筆が中心となるが、P2Mという共通言語を持ったコミュニティである。このような場を通じて、毎年少しずつではあるがスキルアップしていることを実感している。この3年間を振り返って感じることは、名古屋P2Mセミナーでの事例発表は社外での初めての経験であり、自分自身にひとつの目標を与えていただいたと思っている。また、EA、IT投資、プロファイリングの基本的な思考、洞察力モデル、OWモデル、異業種のアーキテクチャ事例(製造、プラント、建設、医薬品)、自業種のアーキテクチャ再認識等、P2Mガイドブックから得られないことの多く学ぶことが出来ました。もし、P2M研究会に属していなかったら、PMSの資格取得だけで、自分の仕事以上に知識や経験の幅が広がらず、従来のプロジェクトマネジメントの認識から脱皮できなかったと思われる。年度末になると発表会・報告書のまとめに苦痛を感じることもあるが、毎年何らかのまとめを行うことによって、知識を点から線にそして面にすることができると感じている。
 P2Mはひとつのガイドラインである。特にプロファイリング〜アーキテクチャを核とする統合マネジメントは経営学の分野まで踏み込む必要があると考えている。ITの基本はデジタル化であり、すべての産業の生産性を向上させる触媒であること。そして、その部分へのアプローチが重要である。このような点を勘案すると、顧客の顧客を考慮にしたソリューションを提供し続けるためのマネジメントとしてP2Mの必要性は増すと考えている。「P2M企業競争力型アーキテクチャ研究」を2年継続したが、P2Mにとって核となる部分であり、一番面白い部分でもある。マイペースではあるが、今後も同様のテーマを継続して行きたいと考えている。
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