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「エンタテイメント論」(61)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] :4月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

4 涙
●「負のエンタテイメント」と現実の世界
 前号で述べた様に、日本、韓国などに限らず、世界中で「悪玉」による「陰謀」、「策謀」、「策略」などを描いた「負のエンタテイメント」のテレビ番組や映画は極めて人気が高い。視聴者や観客は、「善玉」の主人公の悲劇的運命に同情し、自己没入し、「涙」して憤る。主人公は、困難辛苦、紆余曲折の末、遂に悪事を暴き、「悪玉」を処刑する。彼等はその解決に安堵し、癒され、「めでたし、めでたし」となる。

 しかし極めて残念な事であるが、現実の世界では、上記の様なハッピーエンディングは稀にしか起こらない。何故なら「悪意、悪徳、悪人」の人物は、破壊工作が表面化してバレない様に、背後で巧みに動くからだ。彼等が会社背任などの「犯罪行為」をしても、犯罪者として暴かれる様なヘマをやらない。テレビ番組や映画の世界の「悪玉」は、余程の事態が起こらない限り、ボロを出さないが、現実の世界では猶更ボロを出さない。

●「悪意、悪徳、悪人」の人物がのさばる原因
 何故、この様な人物が好き勝手にそんな事が出来るのか?
 
 その原因の1つ目は、「悪意、悪徳、悪人」の人物は、多くの場合、極めて優秀な人物であることだ。悪夢工学で定義する「Bタイプの性格」を持った人物が典型例である。この人物は優れているだけなく、狡猾である。理論や規則など巧妙に、簡単に捻じ曲げる。そのため破壊工作を平然と実行し、成功させることができる。

 Bタイプの性格の人物とは何か? その説明もせずに、いきなり結論を示した。今しばらく我慢して欲しい。いずれ紹介する。「じらせて(Tease)、興奮を惹き起こすのがエンタテイメント成功の秘訣」であるからだ。

 その原因の2つ目は、理論や社内規則などは、既述の通り、もともと「善意、善徳、善人」の人物を対象とすることを「暗黙の前提」として構築されていることに在る。言い換えれば、「悪意、悪徳、悪人」の人物の存在を考慮に入れていないことに在る。従って「彼等の破壊工作を如何に防ぐか?」、「彼等の手が及ばぬ様に、如何に新しい挑戦的な経営戦略を守るか?」などは、議論の対象外になっている。

Bタイプの人物とは?誰がBタイプの人物か?破壊工作を如何に防ぎ、排除するか? Bタイプの人物とは?
誰がBタイプの人物か?
破壊工作を如何に防ぎ、
排除するか?

●Bタイプの人物の暗躍と負のエンタテイメントの「ネタ」
 「悪意、悪徳、悪人」の人物の存在を「明確な前提条件(Explicit Assumtion)」として構築された理論は、犯罪学の分野の理論や「悪夢工学」及び本稿で既に紹介した筆者の「夢と悪夢の経営戦略(出版:亜細亜大学購買部)」を除いて、筆者の知る限り、存在しない。

 Bタイプの人物は、帰属組織の人事組織制度や規則を、密かに、巧妙に操り、他者を押しのけ、より大きい権力を求めて出世街道を進むのである。Bタイプの中で「B1タイプ」は、最も優秀で最も狡猾である。しかもB1に盲従する「C1タイプ」の人物を手下にしてネットワークを作り、帰属組織を牛耳り、密かに、巧妙に破壊工作を成功させる。

出典・100%のBad Man(その人物とは、B1タイプの人間のことをいう) badman.storenvy.com 出典・100%のBad Man
(その人物とは、B1タイプの人間のことをいう)
badman.storenvy.com

 この破壊工作によって「善意、善徳、善人」の人物は、深刻な精神的&物的被害を被り、悪夢の様な日々を送るのである。しかし破壊工作が行われた帰属組織の人事部門も、他の部門もその存在に気付いていない。「確たる証拠」を握り、帰属組織のトップに提示しない限り、悪夢苦悩者が幾ら叫んでも、どうする事も出来ない。

 Bタイプの某人物による破壊工作が、Bタイプの他の某人物の利害を害する時、組織内で政治抗争、権力争い、勢力圏争いが必ず、密かに起こる。その争いがエスカレートすると、組織の混乱を招き、内部告発を契機に「不祥事」として表面化する。マスコミに知られると、問題は更に暴かれ、社会の批判と糾弾を受けることになる。その時点でやっとBタイプの存在が知られる。これは、マスコミの「ネタ」だけでなく、「負のエンタテイメント」の格好の「ネタ」にもなる。

●どの様な人物が破壊工作をするのか?
 「どの様な人物が破壊工作をするのか?」、この問いの答えを求めて筆者は、人事組織論、心理学など関係ありそうな分野の理論を読み漁った。ズバリ答えてくれた理論は見当たらなかった。また多くの日本人が好んで引用する「血液型性格評価法(A型、B型、O型、AB型)」の内容まで調べた。しかし何人かの日本の心理学者は、「この評価法は、根拠がなく、デタラメで信頼に値しない」と結論付けていた。更に「負のエンタテイメント」のテレビ番組や映画などの世界まで、その答えを求めた。しかしこれと言った答えは結局見付からなかった。

 結局、自分で考えるしかない事に気が付いた。どうしてよいか分からず悩んだ。悩んでいても仕方がないので、世の中に実在する「性格パターン」を列挙してみた。物凄い数になった。

いろいろな性格パターン

  もの凄い数の性格のパターンの中で、どの性格の人物が破壊工作をするのか?  答えが見付からず、悩んだ。

●悪夢工学の公開
 今では、「悪夢工学」を本稿で紹介しているが、その答えを見付けるには随分と苦労した。また答えが見付かっても、それを基にどの様な「考え方」や「方法論」を構築すればよいか全く分からなかった。「負のエンタテイメント」の主人公の様に困難辛苦の道を歩んだ。

 「悪夢工学」は、本稿で既に紹介した筆者の著書の他に、本稿の「エンタテイメント論」の連載のい前に、長年にわたり連載した「夢工学」の中で詳しく説明されている。更に(財)統計情報研究開発センターの専門誌「ESTERA」で連載した「夢工学」の中でも述べられている。

 さて筆者は、悪夢工学を構築したが、完成したとは思っていない。今もその改良に取り組んで悩んでいる。しかし現時点で構築された「悪夢工学」でも、多くの企業や役所の組織人事制度や組織規定に十分活用できると考えている。

 そのため「悪夢工学」の観点からの制度見直しや規定改定の重要性や必要性を機会ある毎に訴えてきた。しかし第三者の筆者に自社の組織人事の実態を知られたくないからか、どの会社も、どの役所も、誰も耳を貸そうとしなかった。その結果、Bad ManやBad Womanは、間違いなく、ほくそ笑んでいるだろう。

 マイケルの「Bad」を久方ぶりにYou Tubeで楽しんだ。Bad(ワル)の響きは、何故か、人の心を刺激する。

出典:マイケルジャクソン Bad http://latino777.wordpress.com/
出典:マイケルジャクソン Bad
http://latino777.wordpress.com/


つづく

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