PMシンポジウム2026に向けて
― 実行委員のひとりとして、いま考えていること ―
PMシンポジウム2026 実行委員会 運営リーダー 木村 勝 : 8月号
準備を進めていると、ふと手が止まる瞬間があります。「今年のシンポジウム、参加された方の目には、どんなふうに映るのだろうか」。頭の中でそんな想像をしている自分に、時折気づきます。
今年の大会テーマは、「AI時代を切り拓くプログラム&プロジェクトマネジメント ~人が動かす、未来へつなぐ社会を創る~」です。実行委員会でテーマを考える際に「AI時代」というワードは多くあがったのですが、運営メンバーの熱い想いが込められたものが多く、白熱した議論が繰り広げられました。今回、「人が動かす」とありますが、私はこの一言があってこそ今年のテーマだと思っていますし、準備を続けるほどに、その思いは強くなっています。
生成AIやAIエージェントの話題は、正直、少し食傷気味の方もいらっしゃるかもしれません。私自身も、日々の業務の中で「これはAIに任せられるな」と感じる場面が着実に増えています。ただ、任せられるからこそ、では自分は何をしているのだろう、と立ち止まる瞬間も同じくらい増えました。効率だけの話ではなく、その先に何を作りたいのか、という問いのほうが、なぜか重く残ります。今年のシンポジウムは、そうした問いを持ち寄れる場にしたいと考えて準備してきました。
営業に携わる方の目線でプログラムを眺めていただくと、意外に関心を引く講演が多いかもしれません。AI時代の企業戦略、顧客価値の最大化、事業成長、社会実装といったテーマが並んでいます。私自身、お客様との会話がこの一、二年で確実に変わってきたことを実感しています。「AIをどう使えばいいのか」から、「AIを使って、うちの事業をどう変えられるか」へ。踏み込みが一段深くなった、という感覚です。そうなると、営業に求められるのは、もう製品の説明ではなくなっている気がします。相手の事情を汲み、社内外の関係者を巻き込み、プロジェクトとして形にしていく。その筋道を一緒に描けるかどうかが問われている。今年のシンポジウムには、その道筋を考えるための材料が、思っていた以上に用意できたのではないかと感じています。
マーケティングや企画に携わる方には、プログラム一覧そのものを、ひとつの資料として眺めてみてはいかがでしょうか、とお伝えしたい気がします。AIエージェント、AI倫理、P2M、PMBOK、アジャイル、PMDX、人材育成、心理的安全性、組織文化、ステークホルダー・マネジメント。並んでいる言葉を追っていくと、いま、どこに関心が集まっているかがうっすら見えてきます。実行委員会でも、講演の選定にあたって、「AI一色にしすぎ」にならないように意識しました。現場の関心は、AIそのものよりもむしろ、それをどう組織に根づかせるか、どう事業の成果に結びつけるかにある、というのが私の実感でした。今のラインナップは、その議論の跡でもあります。
広報の観点でこのテーマを見直すと、少し違った意味合いが浮かんできます。「人が動かす、未来へつなぐ社会を創る」。書きながら、少し照れくさい気持ちがなかったといえば嘘になります。ただ、企画を詰めていく過程で、この言葉に落ち着いたのには理由がありました。AIがどれだけ賢くなっても、社会を変えるプロジェクトを構想し、人を集め、意思決定を重ね、実行に移していくのは、結局のところ人だからです。今年は、企業、大学、公共、製造、建設、宇宙、医療、教育と、幅広い領域の講演がそろっています。プロジェクトマネジメントがいかに多くの現場を裏側で支えてきたか、あらためて感じていただける機会になればと思います。
人材育成に携わる方の目線で見ると、悩ましいテーマが多く並んでいる、というのが正直な印象かもしれません。AIによって、資料作成、情報整理、進捗把握といった、これまで若手が担ってきた領域が急速に変わりつつあります。私の職場でも、「では、若手にどう経験を積んでもらえばいいのか」「ベテランは、何を伝え、何を手放すのか」という話題が、繰り返し出ました。答えは、正直、私たちもまだ探している最中です。だからこそ、PMリスキリング、次世代リーダー育成、AI時代のPM教育に関わる講演を、複数用意しました。若手やこれからのキャリアを考える方には自分自身のために、育成や組織開発に携わる方には自組織の議論のために、それぞれ使っていただければと思います。
もうひとつ、個人的にこだわった視点があります。AIを、いかに組織の成果につなげるか、という点です。AIを導入したのに、業務プロセスが変わらない。部門間の壁が残ったまま、データも知見も、どこかで止まっている。現場が納得しないまま、ツールばかりが増えていく。こうした光景に、心当たりのある方は少なくないと思います。技術の話だけでは、この壁は越えられません。人を動かす力、文化を変える力、関係者を橋渡しする力。地味に見えても、結局はそこが成果を左右します。今年は、組織文化、心理的安全性、ステークホルダー・マネジメント、事業変革といったテーマもプログラムに組み込みました。技術と現場のあいだで悩んでおられる方には、きっと響く講演があるはずです。
そして、長くこの仕事に携わってこられた方には、少し立ち止まって、「自分にとってのPMとは何だったか」を思い返す時間にしていただけたら、と勝手に願っています。AIの登場で、情報整理や見える化、定型的な管理業務は、これからさらに変わっていくはずです。それでも、プロジェクトの目的を定め、人を集め、不確実さの中で判断を重ね、価値を実現する、という営みそのものは、そう簡単には変わらないと私は思っています。むしろ、道具が進化するほど、人の判断や対話の重みが、じわじわと増していく気がします。P2M、PMBOK、アジャイル、PMDX、人材育成、組織変革、社会課題解決。並んだテーマを行き来しながら、ご自身のPM観を、もう一度眺めてみていただければうれしいです。
準備をしながら、今年のシンポジウムを、AIを学ぶ場であると同時に、人と組織と社会を考える場にしたい、と思ってきました。営業の方には、提案を成果に近づけるヒントとして。マーケティングや企画の方には、これからの市場を読み解く手がかりとして。広報の方には、PMの社会的な意義を語る材料として。人材育成の方には、これからのPM人材像を考える時間として。組織を動かす立場の方には、AI導入を成果に結ぶ視点として。そして、PMに携わってきた方には、ご自身の仕事を振り返るきっかけとして。見る角度によって、違う顔を見せてくれる大会になったのではないか、と感じています。
AIをどう使うのか。人はどこを担うのか。組織はどう変わるのか。プロジェクトを、どう事業の価値や社会の価値につなげていくのか。正直にいえば、私自身、これという答えはまだ持っていません。ただ、答えのない問いを、答えのない者同士で持ち寄る2日間には、それなりの意味があると信じています。会場でも、オンラインでも、オンデマンドでも、参加の形は問いません。どこかの講演のあとで、あるいは廊下で、皆さまと少しでも言葉を交わせる時間があれば、うれしく思います。
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