P2M普及・推進部会コーナー
先号   次号

P2Mを活用した価値創造の広がり(9)
―― 個人レベルでの活用(自己の成長・キャリア・実践知) ―

PMAJ P2M普及・推進部会 藤澤 正則 : 8月号

「P2Mを仕事に活かしている方々の声」

 2025年12月からスタートした本連載も、今回で最終回を迎えます。「価値」「構造」「人」の視点でP2Mを解剖し、全社レベル、部門レベルと階層を下げて分析してきましたが、そのすべての基盤となるのが「個人レベル」での実践です。
 これまでの調査研究を通じて見えてきた結論は明確です。P2Mは、特定のプロジェクトマネジャーやリーダーのためだけの専門技法ではありません。日々の仕事の中で“守りながら変える”ことに悩む、多くの実務者のための「実践知」です。
 個人や組織の業務におけるP2Mの関係性を紐解くと、日々の「定常業務」のマネジメントは、現在の価値を生み続ける基盤となっています。 一方、変化(改革・改善・DX・新規事業など)を実現する仕事は「プロジェクト」として実行され、将来の定常業務へと移行・定着していきます。 このように、日常業務を止めることなく複数のプロジェクトを連携させ、価値実現まで回し続け、情報を循環・再生産していくことで、持続的な価値創造を実現していくことができます。

1. 個人レベルにおける「3つの機能」の定義と構造

① 定常業務と変革の循環
個人レベルの定常業務(現在の価値創出基盤)を維持しつつ、社会や自己のキャリアといった変革をプロジェクトとして実行し、それを将来の定常業務へと定着させることで、持続的な価値創造を実現します。
定常と非定常を繋ぐ「橋渡し役」の思考
② 3つの階層によるアプローチ
個人レベルの活動は、その役割に応じて以下の3つの層(機能)で整理されます。


(分類)
個人レベルでの具体的な行動・意識 期待される成果
「価値創出・
実践機能」
現場での判断力向上・迷った時の判断基準・リスクの事前洗い出し 個々の「底力」を上げ、戦略実行の確実性を高める
「構造・
理論機能」
自己省察・理論化・経験の言語化・実践知の体系化 複雑な課題を構造的に理解し、理論的な裏付けを持つ
「人財・
変革推進機能」
キャリア・人生への活用・自律的成長・「任される人」になる 持続可能な成長と、社会に対する具体的な価値提供

2. 各機能における実践事例(個人レベルの計画・戦略)

「P2M活用事例集」における個人レベルの主要な実践事例(Voice 16~31)では、以下のようにビジネスからプライベートにいたるまで、極めて多岐にわたるテーマが扱われています。
  • 事例集に含まれる主なテーマ:
    • 大規模システム開発 / 投資判断、リスク評価
    • 国際プロジェクト、地域創生
    • 大学教育、人材育成
    • 個人のキャリア形成・自己成長
これらの事例からは、P2Mを「自分自身のOS」として使いこなしている方々の多様な姿(1.で定義した3つの機能の実践)が見えてきます。
  • 「思考の型」としての活用
    【構造・理論機能】 自身の存在を未来へ投げかける「投企(Project)」の型として、あるいは学術分野での思考の補助線としてP2Mを活用しています。
  • 身近なプロジェクト管理
    【価値創出・実践機能】 持ち家の購入や旅行、さらには「セルフウェディング」といった極めて個人的な活動にP2Mを適用し、ステークホルダー管理やリスク管理を実践しています。
  • 人生を好転させる「マイプログラム」
    【価値創出・実践機能】 挫折を乗り越えるためにP2Mの概念を人生に適用し、ダイエットから仕事の成果までを構造的に管理することで、自己肯定感を高めた事例です。
  • 「こなす人」から「任される人」へ
    【人財・変革推進機能】 P2Mを学ぶことで「仕事を完了させる力」と「価値を創出する力」の違いを認識し、キャリアのステージを一段引き上げています。

3. 調査分析から見える変遷と特徴

個人レベルでの活用分析から、以下の3つの特徴が浮かび上がりました。
  • 「管理」から「自律」へ :
    P2Mは「他者を管理する道具」ではなく、「自分自身の思考を律し、自走するためのフレームワーク」へと進化しています。
  • 「専門知」から「教養」へ :
    特定のプロジェクトマネジャーだけでなく、大学生や若手社員が社会を生き抜くための「共通言語(リテラシー)」として浸透し始めています。
  • 「オン」と「オフ」の融合 :
    仕事(オン)でのプロジェクト管理能力が、私生活やキャリア形成(オフ)に還元され、その相乗効果が「ダブルループ学習」を促進しています。

4. まとめ

 本連載を通じて見てきたように、P2Mは「全社・部門・個人」の3つの階層を貫く価値創造の共通言語です。 「会社が変わらない」「部門が動かない」と嘆く前に、まず個人がP2Mという思考の型を身につけ、目の前の小さなプロジェクトから価値を創出し始めること。 その積み重ねこそが、不確実な時代において組織、そして社会を「守りながら変える」唯一かつ確実な道であると確信します。

【ひと言募集】
実務者からの声を募集します
本稿で紹介した内容は、あくまで一例です。本稿を読んで感じたことや、現場での違和感、「ここが腑に落ちた」といった感想を、200字程度でお寄せください。

【メンバー募集】
P2Mについて「もっと知ってみたい」「自分の仕事にも活かしてみたい」と感じていただけた方は、ぜひP2M普及・推進部会の活動にもご関心をお寄せください。
現場に根ざした実践知を共有し合う場として、皆様のご参加をお待ちしております。
活動形式や頻度:月1回、WEBでの開催(1時間程度)
参加方法:P2M普及・推進部会に関するお申し込み
お問い合わせ先:代表 藤澤 正則 こちらのQRコードからご連絡ください。
P2M普及・推進部会に関するお申し込み お問い合わせ先

 参加方法は以下の3つのスタイルでご参加いただけます

  1. ① 毎月フル参加する(アクティブ・メンバー)
    月1回のWEBミーティングに定例参加し、その場のリアルタイムな議論を通じて、実務の悩みを共有・解決したい方向け。
  2. ② 時々参加 + 査読・感想(フレキシブル・メンバー)
    都合がついた時だけWEBミーティングに顔を出し、欠席した時はオンラインジャーナルや資料のたたき台に対してメール等でフィードバックを送る形。
  3. ③ 査読・感想のみ(バーチャル・サポーター)
    ミーティングへの参加は難しいが、専門知識を活かして資料の誤字脱字チェックや「わかりやすさ」の感想を非同期で提供する形。

【備考】
本稿で取り上げた内容は、統計的な検証や理論実証を目的としたものではなく、現場で実践してきた個々人の経験に基づく知見を整理したものです。
(出典:PMAJ 「P2Mを仕事に活かしている方々の声」(2025年))
以上

ページトップに戻る