P2Mを活用した価値創造の広がり(8)
―― 部門レベルでの活用(経営構造・理論・人財の各機能) ―
PMAJ P2M普及・推進部会 藤澤 正則 : 7月号
2025年12月より、実践されている方々の実践内容から、「P2Mを活用した価値創造の広がり」として、「活動領域・適用したP2Mの分野・執筆者(または実践者)の視点」、「価値の視点」、「構造の視点」、「人の視点」について、事例分析を行い、連載を進めてきました。
これまでの調査研究を通じて見えてきた結論は明確です。
P2Mは、特別な人のための専門技法ではなく、日々の仕事の中で“守りながら変える”ことに悩む多くの実務者のための実践知であるということです。
P2Mと会社の業務の関係性を下記のように定義します。
会社の定常業務のマネジメントは、現在の価値を生み続ける基盤となっています。
一方、変化(改革・改善・DX・新規事業など)を実現する仕事は、プロジェクトとして実行され、将来の定常業務へと移行・定着していきます。このように、日常業務を止めることなく、複数のプロジェクトを連携させ、価値実現まで回し続け、情報を循環・再生産を行うことで、持続的な価値創造を実現していきます。
7月号では、これまで分析してきました部門レベルにおけるP2M活用の構造を、以下の3つの機能(役割)から整理します。
- 『構造・理論機能』 (部門内仕組み・共通言語の構築)
- 『価値創出・実践機能』 (現場での具体的な価値創造)
- 『人財・変革推進機能』 (スタッフによる支援、自律的組織化)
今回は、3階層アプローチの第1弾として、部門レベルにおけるこれら3つの機能の全体像を示した上で、特に『構造・理論機能』に焦点を当て、その構造を掘り下げます。
- 1. 部門レベルにおける「3つの機能」の定義と全体構造
部門レベルにおいて、P2Mは単なるプロジェクト管理の枠を超え、「部門戦略を確実に実行し、企業価値・社会価値を創造するための実践知」として位置付けられています。
- ① 定常業務と変革の循環
部門レベルの定常業務(現在の価値創出基盤)を維持しつつ、組織構造・プロセス改革などの変革をプロジェクトとして実行し、それを将来の定常業務へと定着させることで、持続的な価値創造を実現します。
- ② 3つの機能によるアプローチ
部門レベルの活動は、その役割に応じて以下の3つの層で整理されます。今回の主役となる「構造・理論機能」は、複雑な課題を解きほぐし、現場の実践と人財の変革を支える中核プラットフォームの役割を担います。
| 層(分類) |
部門レベルでの具体的な活動例
(または実践内容) |
期待される成果 |
「構造・理論機能」 今回の着目点 |
業務モデル・方法論の研究・スキームモデル・ミッションプロファイリング |
複雑な課題を構造的に理解し、活動に理論的な裏付けと共通言語を与える |
| 「価値創出・実践機能」 |
部門横断プロジェクト管理、IT導入、工場建設、医薬品開発、複数PJの整合とリスク低減 |
組織の「底力」を上げ、戦略実行の確実性を高めて具体的な価値を提供する |
「人財・ 変革推進機能」 |
組織変革の推進、新規事業創出、業務プロセス改革に伴うマインド・スキルチェンジ、自律的組織化 |
持続可能な成長に向けたスタッフの成長、および変革に柔軟適応できる組織風土の醸成 |
- 2. 『構造・理論機能』を中心とした実践事例
「P2M活用事例集」における、部門レベルの主要な実践事例(Voice 8~15)の分析結果は以下の通りです。これらの事例は、構造や仕組みの変革がいかに現場の価値創出や人財育成に結びついているかを示しています。
Voice 8:構造改革と500人規模のスキルチェンジ(共通言語としてのP2M)
Voice 9:人財育成事業のスキーム改革
Voice 10:新規事業立ち上げをプログラムで推進
Voice 11:製品企画におけるミッションプロファイリング
Voice 12:サービスモデル起点の事業モデル構築
Voice 13:アカデミア研究の実用化にP2M
Voice 14:医薬品等開発のスループット向上
Voice 15:PoCを起点とした価値創造と全体最適
- 3. 調査分析から見える変遷と特徴
部門レベルでのP2M活用には、従来の部分最適型管理から、以下の3つの特徴への進化が見られます。
「直列の管理」から「並列の統合」へ: 個々のプロジェクトを順番に終わらせるのではなく、複数の改善テーマ(DX、人材育成、プロセス改革)を並列で走らせ、それらを「部門価値」という軸で統合する動きが強まっています(Voice 10のプログラム推進や、Voice 14のスループット向上など)。
「手段の目的化」の打破: Voice 12や15に見られるように、既存の仕組み(定常)に縛られず、サービスモデルやPoCを用いて「何のためにやるのか」という本質的な価値から逆算して構造(仕組み)を組み直しています。
「サイロ化」の是正と共通言語: 部門間の壁(サイロ)を越えるために、P2Mのフレームワーク(Voice 11のミッションプロファイリング等)が、異なる職能(経営・営業・技術・事務)を繋ぐコミュニケーション・ツールとして機能しています。
- 4. まとめ
部門レベルにおけるP2Mは、現場の「実行の泥臭さ」を、全社の「戦略の美しさ」へとつなげるトランスレーター(翻訳者)の役割を果たしています。
次号(8月号)では、この構造を動かす最小単位である「個人レベル」での価値創造について深掘りしていきます。
【ひと言募集】
実務者からの声を募集します
本稿で紹介した内容は、あくまで一例です。本稿を読んで感じたことや、現場での違和感、「ここが腑に落ちた」といった感想を、200字程度でお寄せください。
【メンバー募集】
P2Mについて「もっと知ってみたい」「自分の仕事にも活かしてみたい」と感じていただけた方は、ぜひP2M普及・推進部会の活動にもご関心をお寄せください。
現場に根ざした実践知を共有し合う場として、皆様のご参加をお待ちしております。
活動形式や頻度:月1回、WEBでの開催(1時間程度)
参加方法:P2M普及・推進部会に関するお申し込み
お問い合わせ先:代表 藤澤 正則 こちらのQRコードからご連絡ください。
参加方法は様々な形での対応も問題ありません。
以下の3つのスタイルでご参加いただけます
- ① 毎月フル参加する(アクティブ・メンバー)
月1回のWEBミーティングに定例参加し、その場のリアルタイムな議論を通じて、実務の悩みを共有・解決したい方向け。
- ② 時々参加 + 査読・感想(フレキシブル・メンバー)
都合がついた時だけWEBミーティングに顔を出し、欠席した時はオンラインジャーナルや資料のたたき台に対してメール等でフィードバックを送る形。
- ③ 査読・感想のみ(バーチャル・サポーター)
ミーティングへの参加は難しいが、専門知識を活かして資料の誤字脱字チェックや「わかりやすさ」の感想を非同期で提供する形。
【備考】
本稿で取り上げた内容は、統計的な検証や理論実証を目的としたものではなく、現場で実践してきた個々人の経験に基づく知見を整理したものです。
(出典:PMAJ 「P2Mを仕事に活かしている方々の声」(2025年))
以上
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