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「日本の宇宙開発ベンチャーを巡るいくつかの動き」(その13)
~ 超小型衛星のアークエッジスペース ~

長谷川 義幸 [プロフィール] :8月号

 今回は、超小型人工衛星の開発や運用を手がける東京大発の宇宙開発ベンチャー企業、(株)アークエッジ・スペース(東京・江東)について紹介します。 (*1) (*2) (*3)
 同社は、2024年11月に宇宙戦略基金の「月測位システム技術」の実施機関に採択されました。月面ではエネルギー開発や建設といったさまざまな活動を行うため、月面車の自動走行が必要になるので、地球のGPSのような位置情報を測位する衛星インフラが必要になります。
 月測位システムは月探査計画を支えるインフラの構築としてNASA、ESA、JAXAが進めているもので、「月測位ペイロードシステム開発」「月測位システム実証衛星の開発・運用システムの検討」などの課題に100kg級の超小型衛星を開発して取り組むことになります。

SPHERE-1 EYE  創業者兼CEO福代氏(Forbes JAPAN2026年1月号の「日本の起業家ランキング2026」で1位に輝く)は、東京大学大学院修了後、JICA専門家として南米で自然資源管理に従事、外務省を経て、内閣府にて宇宙分野のアジア、アフリカ、中東、南米における国際協力を推進。その後、東京大学特任准教授を経て、東大の中須賀・船瀬研究室で超小型衛星のキューブサット(注)を開発していたメンバーと共に、2018年に超小型・軽量の衛星を武器に、宇宙開発のインテグレーターとして会社を設立しました。

 政府からの補助金をもらい、多様なミッションへの対応が可能なキューブサット6U衛星(10㎝x20cmx30cm/10kg級)/12U(20㎝x20cmx30cm/20kg級)の汎用バスシステム、量産システム、および複数衛星の自動運用システムの構築に取り組み、2024年12月から2025年11月の1年間に9機を軌道投入し運用しています。地上を観測する6U衛星としては世界最高レベルである2.5~3mの地上分解能をもっています。

 大型衛星と比べて100分の1の重さ、低価格のキューブサットを大量に打ち上げることで、以下のような温暖化ガス観測や船舶向け衛星通信などの需要の開拓を目指している。

  • 船舶向け衛星通信の分野: 2023年3月に新エネルギー・産業技術総合開発機構が実施する「経済安全保障重要技術育成プログラム/船舶向け通信衛星コンステレーションによる海洋状況把握技術の開発・実証(147億円)」に採択され、基本的な衛星システムの設計や重要要素技術の開発等へ取り組んでいる。
  • 商業衛星: 2024年11月には、JAXAが実施する宇宙戦略基金の公募事業「商業衛星コンステレーション構築加速化」にも採択された。
  • 地球観測: 2023年10月「中小企業イノベーション創出推進事業(35億円)に採択され、農林業の環境モニタリングや温室効果ガス等の大気観測を目的とした多波長リモートセンシング衛星システムの開発へ取り組んでいる。
  • 海外展開: 2024年6月にブラジルやパラグアイ政府とMOUを締結、地球観測データとAIを組み合わせて水位や大豆生産などを観測するもので、スマホでネットフリックスを見るくらいに簡単にした衛星データプラットフォームを提供している。

 事業展開の考え方について、福代CEOはインタビューの中で次のように述べている。 (*3)
「米国のプラネットやイーロン・マスクのスターリンクは同じ衛星を数百~千機規模でつくってコストを下げるが、アークエッジは多品種で30~100機くらいの少量生産。コンポーネントやソフトウェアを標準化すると同時にオープンソースにすることでコストを下げる。
 宇宙産業は単価の高いビジネスなので、衛星の打ち上げで100億円単位のお金がかかる。小さなミスが原因で大金が瞬時に塵と化すこともある。世界ではアメリカのプラネット・ラボのように、衛星を高性能化するではなくコンステレーションにして展開していく方法でビジネスを展開している。衛星インフラ構築は大きな成長エンジンになる。
 普通は失敗が怖いから数億円かけて入念に準備するところを、例えば、イーロン・マスクだったら1000万円ぐらいですぐ挑戦するでしょう。当然失敗もしますが、最小限のコストでできることがわかり、次は2000万円で、とまた挑戦する。このチキンレースを恐れていると世界で勝てません。」


 筆者が「はやぶさ2」開発プロジェクトに関わっていたとき、JAXAの開発エンジニアたち大学生の時に超小型衛星を製作し打ち上げを経験いるメンバーが10人位いました。当時は電子装置や機構制御などのサブシステムの機能テスト用や教育用でした。ところが、現在では電子装置や機構が超小型化、高性能化の技術進歩のおかげで“短期間開発”と“コストが安く汎用性”ができ、100kgの衛星でも、世界中の民間企業で超小型衛星の地球観測や通信プラットフォームとしての活用が急速に進む時代になっています。
 キューブサットは、重量は10~100kg程度と大型衛星の500kg~数トンと比べて格段に軽く、1機が数千万~数億円程度で、単価は大型衛星の100分の1以下、開発期間は大型衛星5~10年に対して1~3年程度で済む利点があり、1999年にスタンフォード大学らが開発して以来、大学や教育機関に広がりました。2003年には東京大学、東京工業大学(当時)などのキューブサットが軌道投入されています。

キューブサットの基幹ユニット  キューブサットの基幹ユニットは、手の平サイズの一辺10cmの立方体(1U(ユニット))を3~6個(3U~6U)組み合わせたものです。1U/3Uでは光学口径・電力・推進系容量が不足するので、商業用には6U以上を使用していているものが多いです。
 筆者が担当した「きぼう」日本実験棟にもロボットアームと小型衛星放出機構を使って沢山のキューブサットを宇宙に放出することができるシステムを用意しました。無人宇宙補給機で国際宇宙ステーションに搬入して右図のように、宇宙飛行士の作業により世界の国々の超小型衛星を放出しています。2025年9月には油井宇宙飛行士が滞在中に5機が地球周回軌道に放出しました。
小型衛星放出機構  安価なキューブサットを星座のように多数配置 (コンステレーション化)して、高頻度に地上を撮影することで、商業用地球観測ネットワークの構築やイーロン・マスクのスターリンクのように地球のどこにいても通信ができる衛星通信ネットワークを構築することができます。さらに、地球軌道を脱出し宇宙探査も可能ですので、急速に発展している。ちなみに2022年11月にJAXAは、月面着陸実証機として6Uサイズのキューブサットを打ち上げています。
 宇宙ベンチャーがビジネスで成功するのは、非常に大変ですが、キューブサットを商業機として衛星インフラを構築するのは非常にユニークですので、世界にまけないよううまくビジネス展開してほしいと願います。

参考資料
(*1) リンクはこちら
(*2) リンクはこちら
(*3) リンクはこちら

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