PMプロの知恵コーナー
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AI時代のPMは「飛行機型人間」になれるか
―『思考の整理学』とPMBOK第8版が示すPMの進化―

竹腰 重徳 [プロフィール] :7月号

 近年、生成AIの急速な普及により、プロジェクトマネジャー(PM)を取り巻く環境は大きく変化しています。情報はあふれ、知識を得ること自体は容易になりました。しかし一方で、「何を考えるべきか」「どのように判断するか」という“思考力”の重要性は、以前にも増して高まっています。そのような時代に、改めて注目されているのが、外山滋比古氏の著書『思考の整理学』です。1980年代に出版された本でありながら、現在も多くの学生やビジネスパーソンに読み継がれています。その理由は、本書が単なる勉強法ではなく、「自分の頭で考える力」を育てる本だからでしょう。本稿では、『思考の整理学』で語られる「グライダー型人間」と「飛行機型人間」という考え方を通して、AI時代にPMがどのような思考を身につけるべきか、さらにPMBOK第8版との関連も交えながら考察してみたいと思います。

1.グライダー型人間と飛行機型人間
 外山氏は、人間の思考を「グライダー型」と「飛行機型」に分けて説明しています。グライダーは、自力では飛べません。誰かに引っ張ってもらうことで初めて空を飛びます。つまり、与えられた知識や指示に従って動く受信型タイプです。学校教育では、どうしてもこのグライダー型が育ちやすいと外山氏は述べています。一方、飛行機は自らエンジンを持ち、自力で飛び立つことができます。自ら考え、仮説を立て、新しい視点を生み出しながら飛ぶ存在です。この考え方は、現代のPMに非常に示唆的です。プロジェクト現場では、手順書通りに進めるだけでは対応できない問題が次々に発生します。特にAI時代は変化が速く、過去の成功パターンが通用しない場面も増えています。つまり、PMには受信型ではなく発信型思考をする人が求められています。

2.PMの仕事は「考えること」である
 PMの仕事は、単なる進捗管理ではありません。
  • 何を優先するのか
  • どのリスクを受け入れるのか
  • 誰と対話すべきか
  • どこで方向転換するのか
こうした意思決定の連続がPMの本質です。しかし実際には、多くのPMが会議、メール、調整業務に追われ、「考える時間」を失っています。忙しいほど、目の前の対応に追われ、思考が浅くなってしまいます。テンプレート、ノウハウ、AIツールはもちろん重要です。しかし、それだけでは本質的な問題には対応できません。むしろ、AIが情報整理や資料作成を代替する時代だからこそ、人間には「深く考える力」が必要になるのです。

3.PMBOK第8版との共通点
 PMBOK第8版では、従来の「プロセス中心」から、「価値提供中心」へと大きく方向転換しました。特に注目すべきなのは、「マインドセット(心のあり方)」の重視です。PMBOK第8版では、PMに必要な姿勢として、以下のようなマインドセットが強調されています。
  • プロアクティブ(先見性)
  • オーナーシップ(当事者意識)
  • バリュードリブン(価値駆動)
これらはすべて、「飛行機型思考」と深くつながっています。たとえば「先見性」とは、将来を見据えて先に行動する姿勢です。これは、決められた手順をそのまま適用するグライダー型では実行できません。自ら思考を働かせる必要があります。「当事者意識」は、責任あるリーダーシップと自律的なチームづくりを意味します。これは、グライダー型の受け身ではなく、飛行機型の自ら責任を持って行動することを表しています。「価値駆動」は、プロジェクトは成果物ではなく価値に焦点を当てる考え方です。その成果が本当に意味のある価値につながっているかどうかは、人間自らが判断しなければなりません。プロジェクトが組織の戦略や社会にどのような価値をもたらすのかを問い続けて主体的に行動することが、重要となります。PMBOK第8版では、あらかじめ決められた手法を機械的に適用するのではなく、状況に応じて考え、選択し、適応することを重視しています。これはまさに飛行機型人間の思考そのものです。

4.AI時代に必要なPMの条件
 生成AIの進化によって、知識を持つことの価値は相対的に下がっていくでしょう。しかし逆に、以下のような能力はより重要になります。
  • 本質を見抜く力
  • 答えを知る力ではなく問いを立てる力
  • 人間関係を調整する力
  • 不確実性の中で判断する力
  • 自分の思考を深める力
 これらはすべて、飛行機型人間に共通する特徴です。AIは強力な補助エンジンにはなります。しかし、どこへ飛ぶのかを決めるのはPM自身です。だからこそ、これからのPMには発信型思考をする飛行機型人間が求められているのではないでしょうか。私自身、多くのPM育成に携わる中で、優秀なPMほど正解を求めるよりも、自ら問いを立てて考える習慣を持っていることを実感しています。

参考文献
1. 外山滋比古『思考の整理学』筑摩書房
2. PMI、PMBOK-V8、PMI、2025

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