図書紹介
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人生とは長い時間をかけて自分を愛する旅である
――こころの資本と経済学

(樋口 耕太郎著、ダイヤモンド社、2026年1月15日発行、5刷、436ページ、2,200円+税)

デニマルさん : 7月号

今回紹介する本は、筆者が書籍購入の選択過程でいつも参考にしているWEBメルマガ(ビジネスブックマラソン)の2026年1月(vol.6906号)で紹介されたものです。このメルマガとの付き合いは長く20年以上で、主宰者の土井英司氏の著書『成功読書術』(2005年4月10日発行、ゴマブック社)を読んでからである。筆者がこの“話題の本”を書き始めるキッカケにもなった本でもあり、以来現在までお付き合いさせて貰っています。今回紹介の本は、先ずタイトルの驚くべき長さからどんな内容なのかと訝った事とサブタイトルの「こころの資本と経済学」に注目してご紹介したいと思います。

本書は400ページを超えるボリュームなのですが、冒頭の第1面「愛の経営」のストーリィに魅かれて後半がどう展開するのか等々を期待して読み始めた。この顛末が表題「自分を愛する旅」の始まりで、著者の「こころの資本を基本とする経済学」へと繋がっていく内容となるのです。経済学と言えば、過去に“人・もの・金”の流れの仕組みを学校や文献等で学んで来た。しかし本書では新たな切り口として「お金以上の成果を生む経済システム」の根幹が“愛”であると説いている。この著者の考えは、大学での講義以前に知る人ぞ知る「伝説的な講座」と噂されていたものを書籍化したと本書オビ文に紹介されている。もう一つ本書の表紙が赤と白地に大きな文字で表題と著者名が表示された目立つ装丁について触れて置きましょう。調べてみると水戸部功氏のデザインで、氏は出版業界では著名なデザイナーです。因みに『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル著、早川書房、2010/05発売)のデザインもされ、造本装幀コンクールや講談社出版文化賞等の授賞もされている。

それらの話題も含めて著者の経歴を調べると本書の理解の参考になるので、早速著者のプロフィールをご紹介しましょう。本名は樋口耕太郎、1965年生まれ、岩手県盛岡市出身。1989年筑波大学比較文化学類卒、野村証券入社。1993年米国野村証券。1997年ニューヨーク大学経営学修士課程修了。約8年間のウォール街での勤務後、共同経営した金融ベンチャー(JASDAQ上場)を業界最大手(当時)に導くなど、日本と米国の金融・商業不動産事業で大成功を収める。14年前に沖縄でリゾートホテルを取得・再生したことをきっかけに価値観を大きく転換。次世代の社会と経済を、人間中心・愛の経営で再生する経営受託会社トリニティを設立して代表取締役社長(現任)。以来、人と事業と地域の再生をライフワークとしている。日本トランスオーシャン航空(旧南西航空(株))の復活を目指して12年になる。 2012年沖縄大学人文学部国際コミュニケーション学科准教授(現任)。南西航空の再生をテーマにした「沖縄航空論」、人と社会の幸せを考える「幸福論」など担当。2018年人間中心の福祉と経営を学ぶ「命の学校」を沖縄県社会福祉事業団と共同で開校し学長に就任(現任)。 沖縄社会・経済・教育・福祉・貧困を統合的に分析した論考『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(沖縄タイムス電子版「樋口耕太郎のオキナワ・ニューメディア」)は、県内外で100万人以上に読まれた隠れたミリオンセラーとなる。沖縄経済同友会常任幹事(2009年度~現任)。沖縄に移住して14年。著書に『資本の論理と沖縄観光』(2010年、言論プラットフォームアゴラ)、『「変われない沖縄」が生まれ変わるために』(2015年、ポリタス)、『沖縄から貧困がなくらない本当の理由』(2020年、光文社新書)と今回紹介の本書がある。

愛の経営              サンマリーナホテルの再生
著者の経歴にもある通り証券マンとしてニューヨークで活躍された経験から、帰国後に金融・商業不動産で大成功している。その後、赤字続きだった沖縄のサンマリーナホテルの経営者となって再建に尽力するのだが、その過程で学び・実践した結果が「愛の経営」であると纏めている。ホテル経営に全くの素人が、250名の従業員(客室数約250室)と資本金30億円での悪戦苦闘のスタートである。著者の着眼点は、顧客とホテルの関係(経営者と従業員の宿泊サービス)だけでなく、旅行代理店とホテルの関係(宿泊サービス料と相互利益)と更に経営者と従業員の関係(企業利益と従業員の待遇)を含めた問題と改善の総点検を諮った。その過程で明確にされた問題点が「嘘のないサービス」と「愛を中心に据えた経営」とターゲットを絞った。その成功のプロセスが具体的に書かれてある。顧客サービスのあり方のポイントを指摘しているので、是非お読み頂きたい。2年後の決算結果では、総売上高は変わらないが営業利益は10倍となり、経常利益は赤字から1.2億円の大幅黒字に改善された。改善のポイントは客室単価を上げて顧客数が多少減少したが、サービス内容の向上で顧客リピートが増加した。その顧客評判が噂となってホテル評価も注目されたのである。

愛の経済学              経済成長と人間の幸せ
愛の経営の具体策は、「愛と人間関係を中心とした新人事考課基準」として旧来の売上成果主義を全廃し、人事考課の全面開示や経営内部データの公開を含めてホテル経営の透明化を図った。しかし、2005年11月にホテル売却の方針が決定され、社長である著者が突然解任される結果となった。そこに到る諸々の事情や、無職となって再起を図る第二の物語が始まる。著者がその過程で経験した人生が本書の表題となっている。我々の永遠の課題である「人は、どうしたら幸せに生きられるのか?」の著者の答えは「“愛”を軸にして、経済・社会の仕組みを問い直す。それが愛の経済学である」と纏めているのですが、非常に奥の深い話です。著者の波瀾万丈の人生から見出された「新しい経営のかたち」なのか「新しい資本主義のかたち」なのかの諸々の紹介です。ここで筆者が勝手に纏められる様な簡単な問題ではありません。是非、時間をかけてジックリお読み頂きたいと思います。色々な問題を提起してくれた本書でが、前半のサンマリーナホテル再生のストーリィはお勧めの内容です。

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