P2M普及・推進部会コーナー
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P2Mを活用した価値創造の広がり(5)
―“人” が価値と構造を動かすプログラムマネジメントとこれから―

PMAJ P2M普及・推進部会 藤澤 正則 : 4月号

「P2Mを仕事に活かしている方々の声」

 2025年12月より、実践されている方々の内容から、「P2Mを活用した価値創造の広がり」として、「活動領域・適用したP2Mの分野・執筆者(または実践者)の視点」、「価値の視点」、「構造の視点」、「人の視点」について、事例分析を行い、連載を進めてきました。
 12月号から3月号までの事例分析を通じて見えてきたのは、価値・構造・人を同時に動かす思考と行動こそが、変化の時代に求められるマネジメントとなることです。4月号は、今までのまとめと次回以降進めていくことを論じます。

1. 3月号までの総まとめ ― P2Mの「価値・構造・人」から見えてきたもの
2025年12月から2026年3月にかけて、P2Mを実践する方々の事例と、価値・構造・人という3つの視点から、P2Mの特徴と実践構造を整理してきました。
これらの整理を通じて明らかになったのは、P2Mの実践とは、価値・構造・人を個別に扱うことではなく、三位一体で“同時に回し続ける”営みであるという点です。

(1)価値の視点
  • P2Mは価値そのものを起点に、事業や組織の進化を考える体系であることを確認しました。
  • 価値の定義が曖昧なままプロジェクトを実施しても、本質的な成果は生まれない。
    まず“なぜその変化が必要か”を問う姿勢が実践者に共通していました。
→ 成果の量ではなく、関係者にとって意味のある変化を見立て続ける視点である。

(2)構造の視点
  • 変化は単発のプロジェクトではなく、複数の取り組みが並列で絡み合う「構造」で進みます。
  • 価値①・価値②・価値③・・を実現する複数の要素を束ね、全体を統率する力が求められます。つまりプログラムとは「価値を実現するための並列構造」であり、
    各プロジェクトは“価値のための部品”として位置づけられることが明確になりました。
→ 価値を実現するために、複数の取り組みを並列で回し続ける設計である

(3)人の視点
  • 変化は仕組みだけでは進みません。
  • 関係性づくり、合意形成、現場の気づき、ミドル層の橋渡し、
  • 心理的安全性、学習する姿勢など、行動・関係・対話が変化の原動力となります。
    価値・構造・人の3つは、どれか一つではなく“三位一体で回す”必要があり、実践者が成功している背景には必ずこの三つの視点が存在していることが明らかになりました。
→ 価値と構造を現場で“動かす”ための関係性と行動のまとまりである


2. これからの実践提言
― 会社・部門・個人の3階層でP2Mを活かす―

5月号以降では、ここまでの議論を踏まえ、「価値・構造・人」を“組織階層”に落とし込み、実践の道筋として整理する」ことを目的とします。
P2Mは経営企画だけの視点でもなく、現場改善だけの視点でもありません。
変化は組織全体に影響し、役割や立場によって見える世界が異なるため、「会社」「部門」「個人」の3つに分けて捉えると、実践が行いやすくなります。

ここで、「会社」「部門」「個人」が関わる組織で活用するプロジェクトマネジメントとP2Mのプログラムマネジメントについて再確認しておきます。
プロジェクトマネジメントは、前提条件が整った上で理を用いて、実施から引き渡しまでを進めます。それに対応するために変化を実行するために大規模な組織では、「変えることを専門に請け負う人の技法」として発展しており、変えることに特化したものです。
プログラムマネジメントは、前提条件の設定も含め、情と理を組み合わせて企画・実施・運用を行い、持続的な価値創造を実現します。しかし、多くの職場では、日々の価値を守りながら、同時に必要な変化も進めなければなりません。その両方を扱える人材が求められています。
P2Mのプログラムマネジメントは、“守る” と “変える” を同時に回し、新しい定常をつくり続ける人のための実践知です。

(1)会社レベルのアプローチ(経営・事業構造)
  • 価値の定義と方向性を示す(新しい定常のビジョン)
  • 事業環境の変化を踏まえ、複数領域を並列で動かすプログラムを設計する
  • 既存事業(定常)と新たな変化(非定常)をどのように組み合わせるか判断する
  • 方針とミッションを“現場に翻訳されやすい形”で示す
  • 経営・企画部門の役割は「変化の構造づくり」であり、専門性よりも俯瞰力が重要

(2)部門レベルのアプローチ(現場・ミドル層)
  • 現場と経営をつなぎ、価値の方向性を実装に落とす
  • AS-IS → TO-BE を描き、ロードマップを作成する
  • 直列の課題解決ではなく、複数テーマを並列で進める“橋渡し”が求められる
  • 部門サイロを越えて連携し、「価値の全体像」を共有する
  • ミドル層は、プロジェクト管理者ではなく“価値をつなぐ推進者”

(3)個人レベルのアプローチ(担当者)
  • 自分の業務の中にある価値の源泉に気づく
  • 変化を“自分ごと”として捉え、気づき→行動→内省を繰り返す
  • やらされ仕事ではなく“価値を生む仕事”への意識転換
  • 小さな改善や新しい提案が、並列で動く全体の価値創造に寄与する
  • 重要なのはスキルよりも「考える力」や「学ぶ姿勢」

3. 事例の分析から得られたこととPMAJの役割の進化
定常業務や非定常業務においても、言われた通りに行動すれば成長できた時代は終わり、丸投げに慣れた人と組織は、「自ら考える」ことへモデルチェンジする必要が生じている。つまり、指示や依存に頼るのではなく、自ら考え、行動し、持続的な成長を実現することが求められている。
そのための考え方の一つが、P2Mである。P2Mは、自ら考え、行動するための実践的な思考と行動の枠組みである。リアル中心の環境において、PMAJはこれまで、P2Mを「知る」ための場を提供し、自己研鑽を通じて、時間をかけて人と組織を育ててきた。これからの、リアルとバーチャルが融合し、AIが前提となる環境においては、「活用する」ことに重きを置き、現場で使える知識の提供と、互いに学び合い、高め合う相互研鑽の場を通じて、P2Mの普及・推進を進めていく。
PMAJは今後、P2Mを「理解するための知識」ではなく、「現場で試し、語り、磨き合う実践知」として育てていく。そのための場づくりこそが、普及・推進部会の役割である。

4. 次号(5~7月)へのつながり
本連載を通じて見えてきた結論は明確です。P2Mは、特別な人のための専門技法ではなく、日々の仕事の中で“守りながら変える”ことに悩む多くの実務者のための実践知であるということです。
P2Mと会社の業務の関係性を下記のように定義する。
会社の定常業務のマネジメントは、現在の価値を生み続ける基盤である。一方、変化(改革・改善・DX・新規事業など)を実現する仕事は、プロジェクトとして実行され、将来の定常業務へと移行・定着していく。
日常業務を止めることなく、複数のプロジェクトを連携させ、価値実現まで回し続けることで、持続的な価値創造を実現する。これがP2Mにおけるプログラムマネジメントである。
次号からは、今回整理した「会社・部門・個人」の3階層を、それぞれ どのように価値を生み、どのように変化を進めるのか に焦点を当てて掘り下げます。

 5月:実践事例*
 6月:会社レベル(経営・事業構造)
 7月:部門レベル(ミドル層・現場)
 8月:個人レベル(担当者の価値創造)
5~7月号では、それぞれの立場で「自分はどこから価値創造に関われるのか」を具体的に描けることを目指す。中小企業でも実行できる、“持続的な価値創造のための具体的アプローチ” として整理していきます。

【ひと言募集】 実務者からの声を募集します
本稿で紹介した内容は、あくまで一例です。本稿を読んで感じたことや、現場での違和感、「ここが腑に落ちた」といった感想を、200字程度でお寄せください。正解はありません。皆様の実践知をぜひ共有してください。頂いた声は、P2M普及・推進部会の活動に反映させていきたいと考えております。

【メンバー】
P2Mについて「もっと知ってみたい」「自分の仕事にも活かしてみたい」と感じていただけた方は、ぜひP2M普及・推進部会の活動にもご関心をお寄せください。
現場に根ざした実践知を共有し合う場として、皆様のご参加をお待ちしております。

活動形式や頻度
参加方法
月1回:WEBでの開催(1時間程度)
  • P2M普及・推進部会 に関するお申し込み
  • お問い合わせ先:代表: 藤澤 正則
    こちらQRコードからご連絡ください→

【備考】
本稿で取り上げた内容は、統計的な検証や理論実証を目的としたものではなく、現場で実践してきた個々人の経験に基づく知見を整理したものです。
(出典:PMAJ「P2Mを仕事に活かしている方々の声」2025年9月改訂版)
以上

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