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僕には鳥の言葉がわかる
(鈴木俊貴著、(株)小学館、2025年11月10日発行、15刷、262ページ、1,700円+税)
デニマルさん : 3月号
今回紹介する本は、ユニークな表題と内容と専門家の評価以上に大きな話題となっている。先ず発売して2週間で5万部を突破し、筆者が購入した昨年11月の時点で15刷もの増版が成されている。こうした科学エッセイ分野では極めて珍しい現象であると専門家は評している。それと幾つかの大賞を受賞している。一つは第24回新潮ドキュメント賞である。この賞は新潮文芸振興会が主催し、ノンフィクションを対象とした文学賞で2002年(平成14年)に創設されている。本書は昨年1月に発売され、8月には受賞が発表され副賞の100万円が授与されている。もう一つは、第13回河合隼雄学芸賞の受賞である。この賞は河合隼雄氏(臨床心理学者、京都大学名誉教授、元文化庁長官)の財団が主催し2013年(平成25年)の創設である。「鳥のおしゃべりに注目し新しい実験方法を駆使して明るく一点突破した作品」が授賞理由とされ、記念品と副賞の百万円が昨年7月に授与された。もう一つが「SNS推し本大賞2025」(読者の声が本の未来をつくる、SNS時代の新たな賞)第1回目の大賞に輝いている。(2025年10月24日、授賞式)この賞は7部門あり、小説部門:「禁忌の子」(山口未桜著)の他に、「世界の見え方、変わるで賞」の大賞に選ばれている。今回紹介の本の宣伝帯文には「読めばきっとあなたにも鳥の言葉がわかる!」と書かれ、巻末の特別付録にシジュウカラの鳴き声がQRコードから情況に応じた録音(「警戒しろ」という声、「集まれ」という声、「蛇だ」という声や「縄張り」宣言など)が聞けるようになっている。著者は大学の准教授でもあり、世界的な鳥の研究家でもある。本書は学術的に多くの研究成果が纏められているが、身近な語り口調でカット絵が分かり易く楽しく読める。お子さんにもお勧めできる良書で、本書から鳥類等の愛好家になれるかもしれません。それでは著者をご紹介しましょう。1983年東京都練馬区生まれ。東京大学准教授(東京大学卓越研究員)、動物言語学者。日本学術振興会特別研究員SPD、京都大学白眉センター特定助教などを経て現職。野鳥の一種のシジュウカラの言語能力を発見。鳥たちの鳴き声やしぐさの意味や文法構造を研究する新しい学問から『動物言語学』を創出。文部科学大臣表彰若手科学者賞、Tinbergen Lecturer Awardなど受賞多数。2025年、自身の研究の過程を綴った『僕には鳥の言葉がわかる』(小学館)が初の著書。本作にて、書店員が選ぶノンフィクション大賞、新潮ドキュメント賞、河合隼雄学芸賞などを受賞している。愛犬の名前はクーちゃんとある。
鳥の言葉とは(その1) 鳥とはシジュウカラ
著者は幼い頃から昆虫や動物の観察を続けていた。その中で何故に鳥のシジュウカラを選んだのかの理由について、鳥は人間が飼育する限られた環境でなく自然の中で自由に生きている状況が見られる。それにシジュウカラは昼行性で山や林で簡単に観察できるから選んだという。更に、著者は鳴き声を聞くだけで、どの鳥かを判別できる耳がある様に感じていると書いている。特に、シジュカラだけは、鳴き声の種類が多いと気が付いたので研究対象としたと述べている。因みに、『シジュカラ(四十雀)は、スズメ目シジュウカラ科の鳥。小形で頭部・のどは黒。背は緑黄、頬と胸腹とは白。胸腹の中央に縦の黒色帯が一本ある。日本の林地の鳥の代表。ユーラシア大陸に広く分布』(広辞苑)と書かれてあるが、文章で小鳥を詳しく説明するのは難しい。イメージ的にはスズメを考えると分かり易いかもしれません。本書に著者のイラストでオスとメスの違いがキチンと書かれてある。そこに「①ほっぺたの下の線と②胸のネクタイ模様で、太いのがオスで細いのがメス」、更に「慣れると頭のテカリ具合で、“テカテカしているのがオス”と区別出来る」と書いている。20年以上観察し続けているとオス・メスの区別だけなく、その場の鳥の特徴も把握できる様である。
鳥の言葉とは(その2) シジュウカラの言語
著者がシジュウカラの研究を始めたのは、大学に入ってからである。卒業論文のテーマ探しに軽井沢を訪れ、シジュウカラの多様な言葉に出合った時からだという。以来200近い鳴き声パターンから単語と語句を突き止めている。その研究課程を本書に細かに分かり易く書いている。その研究プロセスがドラマ風に描写されている。鳥の動きと鳴き声を観察して、それを録画する。それらのデータから鳴き声と状況を調査・分析し、何回も繰り返して確認している。長期間寝食を忘れた観察研究に没頭した結果20パターンを論文に纏めている。例えば“ヂヂヂヂ”という鳴き声は「集まれ」の意味で、“ピーツピ”は「警戒せよ」を意味する。更に、天敵の「ヘビがいる」を示す特別な鳴き声もあるという。実験では、「ヘビだ」という録音を聞かせた後に細長い木の枝を動かすと、シジュウカラがその枝に強く注意を向ける確認もしている。これはシジュウカラの鳴き声が単なる感情の表れだけでなく、ヘビのイメージを思い浮かべている言葉だと確証したので論文に纏め上げたと結んでいる。
鳥の言葉研究から 動物言語学に向けて
シジュカラの言葉の観察・研究から幾つかの面白い実験を書いている。「天敵、ヘビがいる」の声を流すとシジュウカラだけでなくコガラの仲間も同様に警戒態勢の動作をする。言葉の共通性もあると書いている。それとシジュウカラの動作から親鳥が巣箱に入る時、オスとメスが同じタイミングとなった場合、どちらかが巣箱の近くの枝で待っていて羽尾をパタパタ動かして先に巣箱に入ることを促している。この羽のジェスチャーを含めて論文に纏めて専門機関に投稿して、見事に審査合格して受理されたとある。以来、世界中の鳥類学者やバードウォッチャーから注目さる様になったと書いている。今まで人類だけが言葉があり、お互いの言語で意思疎通を図り、他の動物の言葉や動作のことは全く語られていなかった。本書で初めてシジュウカラに言葉があり、種々の動作と鳴き声を確認したことを纏めている。それとシジュウカラの鳴き声と行動研究から他の動物の鳴き声や行動についても幅広く『動物言語学』として活動を広げるという。今まで我々人間だけの言語が、動物たちを含めた言語の世界が見えれば、従来とは異なる動物との交流が期待されるかも知れません。
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