図書紹介
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ガウディの伝言
(外尾 悦郎著、(株)光文社、2025年6月30日発行、13刷、313ページ、950円+税)

デニマルさん : 1月号

今回紹介する本は、今年の2026年に深く関係し世界で活躍中の日本人の一人で、日本の誇りとも言える著者が書いている。書名にあるガウディとは、世界遺産のサグラダ・ファミリアの設計者であるアントニオ・ガウディです。そして著者の外尾悦郎氏は、サグラダ・ファミリアの専任彫刻家として現在も活動されている。本書は、歴史的建造物であるサグラダ・ファミリアの歴史の紹介から設計者アントニオ・ガウディの生い立ちと伝言(遺言)を探っている。著者の外尾氏は、現在に至るサグラダ・ファミリアの修復と増建築から完成を目指す自らの考えも含めて多面的な内容を書いている。先に紹介した諸々は歴史的に深い内容なので、前半をサグラダ・ファミリアの紹介とし、後半をアント二オ・ガウディの功績と著者の外尾氏の活動内容やサグラダ・ファミリアとの関係を可能な範囲でご紹介致したい。

サグラダ・ファミリアと言えば?         未完の大聖堂(世界遺産)
スペイン・バルセロナにあるサグラダ・ファミリアは、ご存知の方も多いと思う。世界遺産であり「未完の大聖堂」としても知られた有名な観光スポットでもある。その歴史を辿ると1882年の着工である。当時の日本は、明治15年であり渋沢栄一が第一銀行を設立した頃である。それから140年が経った現在でも、サグラダ・ファミリアの建築は続けられている。この教会は、キリスト教における聖家族(イエス・キリスト、聖母マリア、聖ヨセフ)を讃える目的で建てられ、その名の通り「聖家族教会」と呼ばれている。ガウディの宗教的な情熱と自然への深い観察が建築全体に反映されており、その構造や装飾の一つひとつが信仰の表現となっている。具体的には、ファサード(正面や側面)、塔、窓、柱などには有機的な曲線が多用されており、設計者のガウディはこの聖堂を「森の中の礼拝堂」のような空間として構想した。自然を模倣するのではなく、幾何学的な構造を通じて全体を俯瞰すると建築としての“森”を形づくっていると言われる。このサグラダ・ファミリアは、ガウディの生前に完成したのは、地下聖堂と東側の「キリスト降誕のファサード」のみである。これはガウディが当初構想した18塔の内の一部であり、全体の25%にしか相当しないと言われている。その後、ガウディの遺志を継いだ建築家がサグラダ・ファミリアの建築を継承された。その間にスペイン内戦(1936年~1939年、フランコ政権体制の転換)では、サグラダ・ファミリアの内部破壊の被害を受け、更に貴重な設計資料等々を損失していた。内戦終了後に建築が再開されて、1984年にはユネスコの世界遺産に登録された。2005年になって、聖堂の生誕の正面と地下の納骨堂が追加登録された。2025年には聖母被昇天の礼拝堂が完成した。そして今年の2026年はガウディの没後100年にあたり、サグラダ・ファミリアのメインタワーとなる「イエス・キリストの塔」(高さ172.5㍍)が完成する予定であると公表されている。因みに、これからの計画では、残りのファサードの最後となる「栄光のファサード」等が建築され、それらの完成が10年後の2034年頃になると見込まれているという。

アントニオ・ガウディと言えば?         神に仕える建築家
本書は「ガウディの伝言」とある通り、ガウディがサグラダ・ファミリアを構築するに到る歴史的な流れと技術的な点も含めて丁寧に書いてある。ガウディは、1852年にスペインのカタルーニア地方に生まれた。バルセロナ建築学校を卒業後、建築助手を経て建築家となる。サグラダ・ファミリアの建築に携わったのは1883年である。当時のガウディの想いを著者が本書に綴っている。ご紹介すると『教会の本来の目的は神の家であるが、サグラダ・ファミリアは信者たちにとって“石の聖書”です。「生誕の門」がイエスの降誕から青年期までの物語を、「受難の門」がエルサレム入城からイエスの磔刑にされるまでの物語を、「栄光の門」が最後の審判と天地創造などの物語をそれぞれ表現するために捧げられています』とある。この内容は、著者がサグラダ・ファミリア建築の歴史的な流れを忠実にガウディの構想に沿って蘇らせたからでしょうか。さて、ガウディはサグラダ・ファミリア建築以外にも有名な建造物を残している。グエル別邸(1885年、ドラゴンの鉄門扉)、サンタテレサ学院(1890年、放物線の回廊)、グエル公園(1914、代表作)、カサ・バトリョ(1906、屋上の煙突)等を本書にカラー写真で紹介されている。1926年6月、教会に向かう途中で市電の事故で他界された。(享年74歳)そしてサグラダ・ファミリアの地下礼拝堂に埋葬された。2025年バチカンで列福候補(加冠者)に認定された。加冠者とは「神のしもべ」の敬称とあった。

外尾 悦郎と言えば?            サグラダ・ファミリアの専任彫刻家
本書の著者・外尾悦郎氏は、サグラダ・ファミリアの専任彫刻家(現在は、芸術工房監督)なのであるが、「世界で活躍し“日本”を発信する日本人」(2012年、内閣府発表)としても知られている。本書に書かれた内容は、ガウディの功績やサグラダ・ファミリアの歴史的・建築的ポイントだけでなく、著者の生き方や仕事に対する信念等も、詳細に紹介している。先ず生い立ちは1953年福岡県生まれで、京都市立芸術大学彫刻科卒業。中学校・高校定時制非常勤教師として勤務した後、1978年にバルセロナへ渡り、サグラダ・ファミリア教会の彫刻に携わる。時にガウディが亡くなられて52年、サグラダ・ファミリアの建築後96年が経っていた。最初の仕事は、1976年完成の受難の門と階段室のベランダ彫刻。1982年~1983年にロザリオ礼拝堂の修復。1984年~1990年に生誕の門にある天使と子供像の彫刻。1991年に生誕の門、生命の樹の下にあるペリカン像の彫刻。2000年に福音書記の塔の建築等々です。それと本書には、著者がサグラダ・ファミリアの完成についての想いを綴っている。『明日のために今日を生きるのではなく、今日をできる最大限のことをしようとする。その上に、明日という日がやってくる。それを、コツコツと積み重ね、またそれによって自分たちも満たされていく、サグラダ・ファミリアは、そういう風につくり続けられるものであってほしいと思います』という。今年2026年「イエス・キリストの塔」が完成する。これからも完成を目指す未完の世界遺産、機会があったらサグラダ・ファミリアを訪れたい。

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