ルポ 超高級老人ホーム
(甚野 博則著、ダイヤモンド社、2024年8月27日発行、第2刷、252ページ、
1,600円+税)
<プラス・追加資料)――老人ホームと介護保険――>
デニマルさん : 5月号
今回紹介の本を購入したのは、昨年の8月末である。筆者も傘寿を過ぎ、いずれ老人ホームのお世話になるかも知れない気持ちと、ボランティア仲間に話題提供する積りで読んでみた。読後の率直な感想は、本書の超高級老人ホームが筆者には無縁なもので、一般的に身近な老人ホームとは対比できない存在であると分かったのです。そこでタイトルの超高級老人ホームと、普通の老人ホームの実態を調べてキチンと相違点を理解する必要があると痛感したので、ここに敢えて取り上げて何らかのご参考にして頂ければと纏めた次第です。
本書の超高級老人ホームとは 限られた人の「終の棲家」
著者は、本書の狙いが「人間の“超高級”という言葉の魔力に惑わされる真意」を探るべく取材して纏めたと書いている。その背景には、メディアで描かれた超高級老人ホームは高齢者のユートピアなのかを見極めるためであったのか。読者である我々高齢者には非常に興味ある視点である。そこで取り上げた超高級老人ホームの代表的な物件を紹介しましょう。
<「サクラビア成城」(東京都世田谷区、1988年開業、入居数150室(1階~9階)の例>
入居費1億4千~1億7千万円、サービス一時金770万円、月額管理費36.5万円、食事代・月額約12万円、分譲タイプ平均68㎡、看護師・介護スタッフ常駐、入居者70歳以上。
(本書から):開業が1988年で日本がバブル景気の頃、当時「シルバー億ション」と騒がれ発売価格と設備の豪華さでメディアが注目した。著名な財界人も入居され、品格と資力が最低条件と言われた。世田谷区成城は都内でも高級住宅地として知られているが、その地元でもサクラビア成城は「丘の上の飛鳥(豪華客船)」と称されていたと言う。ホームページで紹介の「選ばれし人生にふさわしい住まい」には、多少違和感を覚えるとコメントしている。
<「ライフケア熱海第三伊豆山」(静岡県熱海市、1992年開業、入居数165室(地上16階)
入居費6,150万円、運営保証金153万円、月額管理費13.6万円、分譲タイプ111㎡、入居者55歳以上、看護師24時間常駐、常時利用可能な天然温泉、快適施設と宣伝されている。
(本書から):この施設は、相模湾を臨む熱海伊豆山中腹にある超高級老人ホームである。更に、分譲形式のシルバーマンション。居住者をメンバーと称し、豪華施設のスタッフからは「メンバー様」と呼ばれている。本書では、居住者が構成する管理組合の積極的な日頃の活動を紹介している。現役時代の輝かしい功績と地位を誇った方々の集まりで、その延長線上に理事会での組織運営が成されている。その基本には「カネも出すが、口も出す」と、富裕層たちが作り上げたカースト制の中で支配的な地位を占めた特殊環境が特異な集団を形成している。一般的には想像できない理事会と「メンバー様」のパワーを紹介している。
【本書の概要】本書では上記以外に「聖路加レジデンス」(東京都中央区)等の超高級老人ホームを紹介している。いずれも素晴らしい豪華な施設と体制を整えた物件が、一般の老人ホームとの諸々の格差をより際立たせてしまった。外見上の超高級老人ホームは、まるで熱帯魚の水槽のように見える。しかし、そこに居住する高齢者は、一般的な価格の老人ホームに入居する人と余り変わらない様に見える。共に自己のアイデンティティーを再確認しながら、残りの人生をどう生きるべきか問いかけている様だ。そして最後に、著者は「超高級老人ホームは決してユートピアではない」と結んでいる。そこで筆者は、身近な一般の老人ホームを調査した上で、その相違点をご理解頂く判断材料の資料を整理してみました。
一般的な老人ホーム(その1) 老人ホームも色々ある
現在一般的な老人ホームと言われているものは、正確には高齢者住宅と呼ばれている。この高齢者住宅は、民間企業が運営する施設と公的機関(地方自治体や社会福祉法人等)が運営する施設に大別される。先ず・民間運営の有料老人ホームは、(P1)「介護付き有料老人ホーム」と(P2)「住宅型有料老人ホーム」<先に紹介した超高級老人ホームが含まれる>で介護の状況で2区分される。(P3)サービス付き高齢者向け住宅:60歳以上で自立した人を対象。現在、最も一般的な物件で、長い名称を略して“サ高住”と称される。賃貸借契約による建物はバリアフリーで、原則部屋は25㎡以上。(P4)グループホーム:65歳以上、要支援2以上で認知症と診断された方で、専門的ケアを受けながら生活。5~9人のグループを組み、スタッフからサポートを受け家庭的な雰囲気で共同生活するのが特徴。次に・公的機関が運営する老人ホームは、(O1)「ケアハウス」:自立した生活に不安があり家族の援助が難しく、65歳以上で要介護1以上の方や認知症の方や寝たきりの要介護者も入居可能。(O2)「特別養護老人ホーム」:寝たきりや認知症等で要介護3以上の介護度の重い方が入居対象。費用が安い為希望者が多く、入居待ちのケースが多い。看取りの対応や終身利用も可能である。(O3)「介護医療院」:「介護サービス」と「医療的サービス」が提供される。医療的ケアには、終末期医療(ターミナルケア)も含まれる。以上、概略7種の老人ホームがある。
一般的な老人ホーム(その2) 介護保険で老人ホームへ
国は高齢者の福祉・介護体制を維持する為に、介護保険制度を実施している。その介護保険の利用から、先の老人ホームを如何に選定するかを理解する必要がある。その為に、全国各地の市町村地区に「相談センター」を設けている。そこで各種サービスの利用等々が確認出来ます。その手順は、先ず❶ 「おとしより相談センター」(地域包括支援センターとも言われている)を訪ねて下さい。❷ 「現在の問題を含めて相談」する。次に❸ 「身体の状態を知る」(支援・介護の状態を確認する)。そして❹ 「利用可能なサービス」を決める。この決定に際して、相談者とご家族に加えて“ケアマネジャー”(介護サービスの相談窓口で介護の専門家)や市役所や医療機関や介護サービス提供者等が相談して決められる。ここに至るまでには、色々な方々の援助が必要である。筆者がこの資料を纏める為に使用したものは、市役所窓口にある「介護保険のしおり」です。最後に「老人ホーム一覧表」を添付します。
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