今月のひとこと
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 トイレの男女格差 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :3月号

 卒業シーズンです。卒業式の日に何をしていたのか、自身のことだとあまりよく覚えていません。下宿先を引き払わなければなりませんでしたが、大した荷物は持っていなかったのであわただしくしていたわけでもなく、特別な日だったという印象がありませんでした。大学の卒業式で女性が袴を着るようになった頃から、卒業式の季節だと意識するようになったような気がします。大正時代の女子学生を主人公にした漫画&映画のヒットが袴ブームのきっかけだそうですから、1980年代からということでしょうか。1月の成人式に続き、3月の卒業式で街中に和装の女性を見かけるようになるというのが、春を迎える一連の儀式としてすっかり定着したといった感じです。
 4月の末からのゴールデンウィークになると、高速道路上のサービスエリアに女性の行列が出現します。気の毒だとは思いつつも、見過ごしてきました。

 2月20日、21日の朝日新聞朝刊に「トイレの男女格差」という記事が掲載されていました。ある女性が、2年半をかけて公共的な施設706か所のトイレの便器数を調べ、エクセル表に集計したそうです。誰もが予測してはいたと思いますが、9割以上の施設で男性用の便器数が多かったそうです。具体的な数値はともかく、誰もが分かっていたことなのに数十年間も放置されていました。今更ながらですが、男の特権(?)に胡坐をかいていたのではなかったかと恥ずかしく思います。
 かつて、勤務先のコンピュータセンター新設プロジェクトにユーザー部署代表の一人として参加したことがあります。1千人程が入居することから、机の配置、会議スペース、休憩スペース、仮眠設備、食堂などとともにトイレについても検討対象となりました。設計案では、トイレスペースの面積は男女で違いがないものの便器数では女性の方が少ないということでした。当時は女性の比率が2~3割だったので問題ないだろうといったやり取りがあったと記憶しています。
 サービスエリアのトイレはどうなのでしょう。物販や食事を行うエリアとは別区画に、外見上は男性用と女性用とを左右対称に建てられているところが多いように思います。映画館や美術館といった大勢の人が集まる施設でも、男性用と女性用のトイレの配置は対称的に造られているところが多いように思います。デザイン重視ということで、機能的なことは考慮の外だということだったのでしょうか。設計する時に、建物の造詣だけを考えて、実際にヒトが使う時にどのような状況になるかを考えなかったということなのでしょうか。サービスエリアの長い行列は今に始まったことではないので、想定できなかったとはいえないはずなのですが・・
 記事によると、海外では女性用の便器数の基準を男性用の3倍としているところもあるそうです。日本では、大変遅くなりましたが、漸く改善の動きが出始めたとのことです。設備の更新には費用が掛かるので直ぐには難しいというところがあるかもしれませんが、行列が多発しているような施設では、手始めに、男性用トイレの半分を女性用に振り向けるといったことから始めてはいかがでしょうか。
以上

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