PMプロの知恵コーナー
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ゼネラルなプロ (139) (課題解決と問題解決)

向後 忠明 [プロフィール] :5月号

前月号においてKT法の4つの思考の相関図を下記のように示しました。
4つの思考領域の関係図

 ここで示す使命(テーマ)とはトップマネジメントや顧客からの要求が多義的で曖昧なもので、行動するための手段や条件が明確でないものを対象とする。
 すなわち、考えるべき論点、議題、課題、検討事項等を言います。

 これまで問題または課題解決の話をしてきましたが、ここに示す使命(テーマ)は前月号で説明の「③可能性の範囲が見える将来(新規技術による既存業務のイノベーション)」を対象とはしていません。③は起業家、経営者、学者、コンサルタント等々の新規事業にかかわる企業経営にかかわる人達やその分野のプロの知恵が必要な案件であり、また金融コストのかかるものとなり、いわゆる「死の谷」に陥るような事業内容となるでしょう。
 むしろ、③の結果が我々プロジェクトマネジメントを実際に現場感覚で処理できる使命(テーマ)となるものと考えます。

  1. ①確実に見通せるソリューション (技術革新などの方向の見えるトレンド)
  2. ②ほかの可能性のあるソリューション (現状からの脱皮、多様性への対応)
 上記の①②に示す項目は現状病んでいる状況の問題を対象としたもので現状の見極めから始める項目であり、現場により近い課題または問題解決の対象であり、今回の使命(テーマ)となります。
 以上の前提で相関図をさらに具体的に論理思考でやるべき手順を次図に示しながら、そこで必要な考え方及び手順を説明していきたいと思います。

多義的で曖昧なコンセプトを含む使命(テーマ)を具体的な施策や行動のできる課題設定までの手順
 上図が多義的で曖昧なコンセプトを含む使命(テーマ)を具体的な施策や行動のできる課題設定までの手順です。しかし、④までの課題はあくまでも仮説であり、解決策としてはまだ多くの検討が必要となります。すなわち、どのように対応すべきか、適切な手段を選び行動するための仮設設定を意味します。
 ここまでの手順について具体的にどのような作業をするかを①から④までの項目について話をしていきます。

① 使命(テーマ)のレビューと関心事の発見
 情報収集はまずは使命(テーマ)提出者の本音を確かめるため、提案側へのインタビューを通してレビューを行うまでの関心事の発見からの作業となります。
 関心事とは、業務上何らかの対処や解決しなければならない状況や事柄を言います。
この関心事の列挙とは責任上「何とかしなければならないこと」「気になっていること」おかしいと感ずること」「手を打たなければならないこと」等、直面する状況を列挙することです。これをKJ法で言われているブレーンストーミングで自由な発想でグループディスカッションしながらまとめていく方法もあります。
 一般的に関心事の列挙では以下に示す項目を順守する必要があります。
状況分析する業務やプロジェクトの範囲を決めておく。
要点を素早く箇条書きにする。
関心事の列挙に際して各々の事項の評価はしない。議論もしない。
記述は簡潔にし、不必要な付帯説明は付けない。
生情報からも関心事を展開する。
 なお、使命(テーマ)が与えられ、作業を行うに際しては、まずは対応するトップマネジメント側の関係者(指名された組織代表者)は直観的に使命(テーマ)に含まれる要件を模索し、相手が何を求めているか等の概要をつかみ、把握する必要があります。
 すなわち、使命(テーマ)に含まれる業務の範囲及び専門性を受け側として趣向・デザイン・感性の分野(クリエイティブ思考)等を駆使し、その範囲内で、関心事「何とかしなければならないこと」「気になっていること」「おかしいと感ずること」「手を打たなければならないこと」等、を思いつくまま列挙し、整理し、その結果を重要度及び緊急度に従って仕分けします。
 例えばその一例をあげると:
  1. ✫ 重要度
  • プロジェクト内容の把握、難度、規模、範囲、条件
  • 会社への影響度(対応可能性)
  • 要件への対応方針
  1. ✫ 緊急度
  • 対策等を至急要すること(問題の把握とその解決案)
  • 差し迫っていること(例えば対応責任者の選任と要件内容の把握)
 等々の多くの問題や疑問をまとめ、使命(テーマ)に内在する「やらなければならないこと」等をまとめ本案件への対応を模索します。
 なお、この時点での重要度及び緊急度は早急に手を打つ必要があるもので、ここに挙げた項目を整理し、行動しないと次のステップに進めないものです。
 この作業は相手の考えを知るということが重要であり、自社または自分たちの能力でできるかどうかの判断材料となるための重要なステップとなります。
 本案件を進めるにあたって整理した結果を使命(テーマ)発出者であるトップマネジメントに相談し、重要度及び優先事項を自分なりに纏め整理し確認を行う必要があります。
 その結果をもって、本件の責任者として整理を進めていき、会社を取り巻く環境条件や使命(テーマ)に求められる要件を考慮し、将来のグループ長となるプロマネを本案件の重要度を考え、適切に指名をすることになります。
 そして、プロマネは会社全体の問題として手を打たなければならないことを初期において列挙した重要でかつ緊急度の高い関心事に示す事項の更なる深堀を情報収集、インタビュー、関連資料の分析を通して行います。
 すなわち、社内トップマネジメントとのコミュニケーションによって得られた情報を整理し、プロマネ個人の趣向・デザイン・感性の分野(クリエイティブ思考)を最大限発揮し、さらに足りない関心事の列挙を更なる情報収集によって得る必要があります。
 この場合は、関心事の列挙で重要、緊急と思われる事項を精査し、この結果をプロジェクトあるいは事業の具体的行動に必要と思われる対処や解決に必要と思われる項目(ニーズ)を具体化し、次の②の状況分析に入ります。

次月号は状況分析から話をしていきます。

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