東京P2M研究部会
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業務改革プログラムにおける関係性のモデリングの調査研究について

東京P2M研究会 デリア食品株式会社 藤澤 正則 [プロフィール] :2月号

1. はじめに
 事業環境の変化が早くなり、従来の運用モデルの継続や単独のプロジェクトでは、当初構想していたことが、結果として、達成できない事例が増えてきている。
 東京P2M研究会において、これまで、10年間に亘って、P2Mのミッションプロファイリングや 3Sモデルの基礎研究や実践での調査研究を行ってきた。これまでの内容を振り返り、①合意形成「縦の組織に、ヨコグシをさして、想いを共有化する」、②デザインする「あいまいなイメージを形にする」、③「3Sモデルを活用して、全体をプログラム化して、想いを実現する」を体系化し、業務改革プログラム「ミッション達成のフレームワーク」として活用できることの調査研究を進めている。

2. ミッションプロファイリングと価値基準
 ミッションプロファイリングは、P2Mの特徴の一つであり、これまでの取り組みから価値基準が同じ場合と違う場合、更に変化する場合があると考えられる。

図 1 ミッションプロファイリングと価値
 図 1 ミッションプロファイリングと価値
 図 1 の左図は、価値基準が同じ場合で、時間軸を横軸にとって、実現するための理解度を縦軸にとることにより、プロジェクトをつなぐことにより「あるべき姿」を実現することを表している。一方、右図は、価値基準が異なっている場合で、横軸は実現するための進め方の理解度をとり、縦軸に想いへの理解度をとることにより、人づくりの PJ、しくみづくりの PJを同時に進めるステップとして、スパイラルアップしていくと考えている。ありのままの姿からあるべき姿を実現する場合、赤丸で記した価値の関係性をどのように表し、実現できる形にするかが、重要であると考えられる。

3. 3Sモデル (スキーム・システム・サービス) と価値基準
 送り手から受け手に何らかの価値を提供することを、サービスモデル (しくみを使って価値を生む) と定義すると、スキームモデル (しくみを考え、創る)、システムモデル (しくみを作る、変える) となる。以前であれば、環境の変化がゆっくりであり、独立した事象であっても、変化に対応できていたが、変化が早くなり、変化に適用していくには、3つのモデルをつなぎ、スパイラルアップが必要となってきている。3Sモデルをつなぐには、軸となる価値基準があると、実現しやすいと考えられる。

図 2 3Sモデルと価値
 図 2 3Sモデルと価値

4. 役に立ちたいを行動に展開して、役に立っていることが実感できる
 上述のようにミッションプロファイリングや 3Sモデルにおいて、価値の関係性は重要な位置づけとなる。価値を理解するのは、人であり、価値を提供する側と価値を受ける側の関係性が成り立っていることが前提となる。価値を提供する側は、人で構成されている組織であり、組織を継続するには、ミッションやビジョンなどの想いがあり、それに基づいた行動があり、結果として、数値につながっている。

図 3 想いを展開する
 図 3 想いを展開する

5. 想いを展開し、関係性からプログラムにつなげる
 想いという言葉には、様々なことが含まれるため、今回の調査研究では、「役に立ちたい想いから行動に展開して、その結果、役に立っていることを実感できること」とし、それを実現するための価値基準を範囲とした。図 1 から 図 3 の赤色の太く記した丸い枠は、想いから展開して、関係を表す内容となる。関係性を表す手法が様々であり、一つの指標で課題を解決できることは少なく、事象に合わせたフレームが必要であり、プログラム化していく形が望ましいと考えている。
 人と組織、価値の関係性を基盤にする場合として、下記の様に内容をまとめている。
基本となる 3つの要素は、「喜ばれる*集まる*成長できる」
適用する範囲は、「マーケットと生活者」及び「提供する商品やサービス」の関係性で表し、設定する基準線や範囲は、固定した線ではなく、変化する線とする。
進め方は、まず、人と組織の関係性のあるなしから入り、「興味を持つ」「ゼロベースからのアプローチ」「分業から統合」「未来志向のアプローチ」のステップで考える。
活用するツールと評価は、「役に立ちたい思い」と「役に立っていることが実感できる」ことをわかるようにする。主たる項目は、「心 (想いの継承) *量 (経営数値) *質 (経営基盤・経営品質) 」として、想いの継承 (背景・方向性・将来性・ポジション)、経営数値 (KPI (売上・営業利益・BS・PL・CF・ROI・ROEなど) )、経営基盤・経営品質 : 人と組織、土地建物・設備・情報・物・金・CS・ES) とし、ありのままの姿、あるべき姿、成功するための実施課題をまとめ、時系列で評価できるようにする。

6. 今後の展開について
 業務改革プログラムでのP2Mの有効性と効率性は、これまでの取り組みで見えてきた。今後は、自社以外での検証を進めたいと考えている。興味を持っている方は、是非参加していただけると幸いである。

以上

参考資料
P2Mガイドブック : JMAM
2015年度 PMシンポジウム講演資料

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