東京P2M研究部会
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関係性マネジメント・スキル ~第6回P2Mクラブ朝食会での話題提供~

鎌賀 信吉: 1月号

10月23日に開催された第2回 GTL (Global Teamwork Lab) シンポジウム「複雑なグローバルエンジニアリングにおけるプロジェクトデザイン」に参加しました。いまや梶田教授のノーベル物理学賞受賞で持ちきりの柏の葉にあるカンファレンスセンターで行われたシンポジウムには、東京大学の新領域創成科学研究科のみならず、MITからも専門家が招聘され、システムエンジニアリング・システムアーキテクチャ・プロジェクト・マネジメントの統合に関する新研究や新手法が紹介されました。 MITでは 20年にわたり、エンジニアおよびマネージャーが行ってきた洞察が評価されています。そこで用いられているのは、デザイン・ストラクチャー・マトリクス (DSM) というモデリング技法で、日本語訳も 2014年に発表されており、我々も事例を含めた内容に触れることができます。 P2Mにおける関係性マネジメントの領域に相当する研究になると思いますが、単なる実践指針ではなく、利用可能なツールが解説されています。かねてより、本年度の P2M研究会では、関係性マネジメントの領域をテーマに研究していきたいと思っており、非常に刺激的な内容でした。

実際に、ミドルマネジメントがミッションプロファイリングを進めていく場合、テーマ・内容の精査だけでなく、どのように共有していくかも非常に大きな悩みです。成功したプロジェクトには、結果的に適切なステークホルダーが直接関与・間接関与・スポンサリングされ、魔の川 (基礎的な研究から製品化を目指す開発段階へと進めるか)、死の谷 (開発プロジェクトが事業化段階へ進めるか)、ダーウィンの海 (市場に出された製品やサービスが他企業との競争・真の顧客の受容という荒波にもまれる) という難所・関門を乗り越えていくのです。しかし、プログラムマネジメントの初期段階では、具体的な達成イメージ・定量的な目標が承認されていないため、社内ではミッションが公表されていない状態も多く、まずだれに話すべきか、どのような話し方をすべきなのかなど、非常に難しい判断に迫られます。また、全社を変革するような大きな達成目標が想定される場合、組織・部門のラインの責任者よりもモチベーション・素養に光をあててコンタクトする人を探す必要があります。これは、目的・目標がはっきりしているプロジェクトにおけるステークホルダーとは全く異なるものといえるでしょう。

社内に眠る知財を効率的に探し、有効活用しようとするアプローチとしてはナレッジマネジメントがあげられます。個人のもつ暗黙知を形式知に変換し、知識の共有化・明確化を図り、組織の知識である集合知としてまとめようとする手法で、生産管理、販売管理 (マーケティング)、財務管理、人的資源管理、情報管理に続く第 6 の管理領域というコンセプトも非常に刺激的なものでした。マイケル・ポランニー「暗黙知の次元」の衝撃は今でも記憶していますが、いまや単なる ITソフトウェアの 1つのカテゴリとなってしまった感があります。他にも、ソーシャルネットワーキングサービスの企業内導入やワークスタイル改革・タレントマネジメントなどがもてはやされました。これらは非常に画期的なツール群であり、先世代の成功体験に基づくマネジメント手法・人間関係のあり方を駆逐してしまいました。現在、プログラムマネージャーに求められているのは、過去の理論ではなく、新たな人間関係を志向している社内外の関係者とこれらツール群をつかって、個別の状態から関係性のある状態に飛躍させることとなります。
まず、利害関係のあるいくつかの部署から、ある程度の決定権者を召集して、初期検討推進プロジェクトチームを作ります。その後、参画メンバーを増やしていく方法のうち、最善のものを選択します。そこで、最初のスモールプロジェクトを立ち上げる。
このようなステップが必要になりますが、それぞれのポイントで選択しうるオプションやその判断基準といったものを過去の取り組みから整理し、P2M研究会の研究発表としてまとめられればと思っております。

ご興味のある方がいらっしゃいましたら、是非ご意見・コメントをいただけましたら幸いです。

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