PMシンポ便りコーナー
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「PMシンポジウムの企画に関わって」

畑 秀明 [プロフィール] :8月号

 私がPMシンポジウムの企画に携わったきっかけは、2014年のPMシンポジウムにCFPとして応募・採用されて講演の機会をいただいたことになります。
 仕事柄プロジェクトマネジメントに関する業務に永年関わっていることもあり、いくつかのプロジェクトマネジメント関連の団体を知っているのですが、その中で特にこのPMAJに関わろうとした理由はいくつかあります。現在の業務におけるお客様が多数いらっしゃるという業務上での欲を出してしまっている点、シンポジウムが国内最大規模である点、P2Mという日本版のプロジェクトマネジメントナレッジを発行している団体である点などいくつか挙げられるでしょう。ただ、今回企画委員に参加して感じたのは、何よりも参加委員の方々や参加くださる企業様の積極的な貢献姿勢が素晴らしい、ということです。参加している皆でこの協会を作って動かしている、ということです。
 私は企画委員としては一年目であり、未だ企画したシンポジウムの開催を目にしていませんが (執筆段階で)、基調講演ならびに全トラックが揃い、パンフレットも出来上がり、本当に当日が楽しみになってきました。
 私のキャリアのバックグランドとして、社会人一年から18年ほどIT領域にいたため、プロジェクトといってもITプロジェクトでした。数多くのウォーターフォールのプロジェクトを実行したり、今はだいぶ市民権を得てきたアジャイルスタイルのプロジェクト手法の立ち上げ支援をしたりしてきましたが、4 年前に一念発起してITからものづくりのプロジェクトへと鞍替えをし、今は様々なものづくりのお客様にお世話になっています。そういう意味ではITとものづくりのプロジェクトマネジメントの両方を知っている珍しいタイプの人間とも言えます。PMAJにおいてもそういったところで貢献していきたいと思っています。
 プロジェクトマネジメントの知識体系としての側面からいえば、ITプロジェクトもものづくりのプロジェクトも共通的なプラクティスが基底にあると言えますが、そもそものプロジェクトに求められる要件が異なるため、必然的にマネジメントへの要件も異なります。あくまで相対的な比較で特徴となりうる箇所を、批判を恐れずに記述してみるとするなら、以下のようになるでしょう。
 ITプロジェクトは極論をすると「仕様が不明瞭 (不明瞭な部分が残ってしまう) ものを作る」という絶対的な条件があります。そういったものを有限の時間とコストの下、高品質のものを作るにはどうすればよいか、というマネジメントが求められます。ものづくりでは多くの構成要素を扱うため、作業の順番や時間の長さ、必要なスキルと要員を都合つけるといった「規律」にマネジメントの重点が置かれます。さらに様々な調整に多くの労力が求められるため、プロジェクトコントローラのような専門の役割が設けられ、そのためのプロセスやシステムさらには育成なども確立されるため、IT側に比べると体系的にプロジェクトマネジメントを捉える文化がある、という印象があります。
 毎年のシンポジウムは、これらITプロジェクトマネジメントとものづくりのプロジェクトマネジメントが相互に交わり、相乗効果を上げる絶好の機会だと言えます。ITプロジェクトのみに携わっているシステムエンジニアが、ロケットやスカイツリーのようなものを作るプロジェクトマネジメントのストーリーに触れるなんて、何と素晴らしいことでしょう。PMAJシンポジウムはこのように国内において非常に稀有な機会を数多くの参加企業の方々に提供できる貴重なイベントです。これからも参加企業の皆様と一緒に永く続けて欲しいですし、これからも微力ながら貢献していきたいと思っています。

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