東京P2M研究部会
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政府のIT経営
- IT for money -

イーストタスク株式会社 渡部 寿春 [プロフィール] :1月号

 当研究部会では現在、平成26年度の活動報告書発行に向けて執筆を行っています。4月から3月までの年度毎に活動報告書をまとめ毎年6月頃に発行します。今年は、5つのテーマで執筆することを予定していますが、P2M研究部会としては、1つ趣の変わったテーマに取組もうと考えており、今回紹介させて頂きます。

 今年度掲載予定のテーマ
1. PMシンポジウム2014発表事例 PMRクラブのパネルと中期経営計画のワークショップ
2. プログラムマネジメントの実務 「総論賛成各論反対を制すP2Mの技」3事例を用いた説明
3. 政府のIT経営 - IT for money - 財政を持続するための条件
4. 情報セキュリティとプロジェクト運営
5. 契約管理 - 請負と派遣、業務適正化の現状 - 36協定など雇用形態を巡る対応の課題

上記5つのテーマの内、3番目の政府のIT経営は直接プロジェクトに関連するものではありません。The Economist Pocket World in figures 2015 ed. に掲載されたGDPに対する政府債務率ランキングで日本は財政危機にある2位 (186%) のギリシャを引き離し世界で1位 (227%) となっています。日本でも多くの人が後世に負担をかけないようにと財政再建の必要性を説きます。しかし、日本はギリシャの様な財政危機ではありません。11月に日本国債の格付けが少し下がったもの十分に市場価値を維持しています。この財政状況はいつまで持続可能なものか?この素朴な疑問から始まりバランススコアカード(BSC)の着想を得て財政を構成する4つの主体のバランスが維持される状況において持続可能であることを、モデルを使って説明する試みです。
 4つの財政主体 : 政府、市場、銀行、市民

4つの財政主体:政府、市場、銀行、市民

 経営指標のマネジメントとして広く利用されているBSCは、顧客の視点、財務の視点、業務プロセスの視点、成長の視点の4つのバランスを計ることで戦略マップに展開し利益の拡大を狙いますが、政府の財政は持続を狙います。GDPに対する債務が200%を超えることは世界的には異常なことであり、ギリシャは180%で危機となっています。経済学では、国債残高の異常値という考え方はありません。財政危機とは、金利や債務が不履行となるデフォルトに陥る危機のことです。金利や債務が償還出来れば、債務が増えても問題は起きないのです。安部政権は、2015年10月に予定していた消費税増税の延期を2014年11月に決定しました。租税収入により歳入を増やすことは確かに財政再建の1つの方法ですが、債券の市場価値が下落すれば多少の歳入増加は簡単に帳消しとなります。又、市民である個人や法人の資産と負債のバランスが極端に崩れれば銀行や市場に影響を与えます。継続的に日銀が行っている金融緩和によりドル円と株高が進行していますが、どこまで継続出来るかは銀行との資金調整や日本企業の国際価値と関連します。

 2015年10月「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」によりマイナンバー制度が始まります。E-Tax、EL-Taxの普及も政府が勧めています。今後、マネーの電子化が公平な税負担や社会保障の実現に貢献し、見える化により財政維持のためのバランス調整が可能となるのではないか。その日のために今年度の活動報告書にIT for moneyを掲載したいと思います。

データ : 財務省ホームページより
平成26年9月 政府国債残高:8,678,240億円
平成26年度 政府歳入:958,823億円、内租税収入:500,010億円、内公債金収入:412,500億円
平成25年度 国内総生産:4,898,000億円

以上

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