PMプロの知恵コーナー
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「エンタテイメント論」(64)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] 
  Email : こちら :7月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

5 喜怒哀楽
●「笑い」と「涙」を生む「喜怒哀楽」
 過去約1年半、「笑い」と「涙」という両極端のテーマでエンタテイメント論を展開してきた。「涙」は、感涙もあるが、残酷な「悪夢」に遭遇し、悲嘆、憤慨、怒りの「涙」もある。この悪夢を惹き起こす「Bタイプの人間」、それに追従する「Cタイプ」の人間を対象として「悪夢工学」の概要を述べた。

 この「笑い」と「涙」は、人間の「喜怒哀楽」という感性の働きと「理解する、理解できない」という理性の働きが原因となって引き起こされた結果である。この結果である「笑い」と「涙」は、逆にエンタテイメントの効果を引き立たせる原因になっている。「笑い」と「涙」を研究することだけでも、奥の深いエンタテイメント論を展開することができる。

 しかし過去10か月間、「涙」という暗い話ばかりした。読者も嫌になり、飽きてきたかもしれない。今月号からは「笑い」と「涙」の原因となる「喜怒哀楽」をテーマにエンタテイメント論を展開する予定である。しかし暗い話が出てくる事もあり得る。ついては、今月号では、明るい、「夢」が描ける話題を臨時で取り上げ、「気分転換」したいと考えた。

●明るい、「夢」が描ける話題
 日本のエンタテイメント分野に限らず、政治、経済、社会など広い分野で、明るい、「夢」が描ける話題がないか? いろいろ調べた。

 最近、世界でも注目されている「アベノミックス」はどうか? これを日本の将来にとって明るい、「夢」が描ける話題として取り上げたかった。しかし自分にも、読者にもウソをつきたくない。残念ながら、その中身は、多くの学者、評論家、マスコミの評価と異なり、「スケスケ」である。「夢」など描けない。

 「日本は、明治維新と幾多の戦時を除き、多くの分野で現代史上初の「構造的危機」に直面した」と筆者は、20数年前から機会ある毎に主張してきた。当初、随分批判され、無視された。日本は、その後も、構造的危機から全く脱出できず、今日に到っている。しかもこの主張が正しい事を証明する事実が次から次に起こっている。

 もし日本が危機脱出のために「自己改革(一種の革命)」を断行せず、「今のまま(現状維持)」で推移すると、日本は間違いなく、国家凋落の道を歩むと予測している。従って国力がある内に、企業や国民に激しい痛みを強いるが、「自己改革」を一刻も早く断行せねばならない。太平洋戦争の末期、日本は「もうどうしようもない」という事態になってから無条件降伏を決定した。もっと早く決定しておれば、多くの都市空襲も、2つの原爆も、白い原爆(シベリア大量抑留)も回避できた。

 「アベノミックス」は、数多い政策が掲げられているが、肝心の「自己改革」に相当する政策は、殆ど先送りか、骨抜きにされている。しかし「もうどうしようない」という最悪の事態が年々刻々と迫ってくる。自民党も、既得権益集団も、多くの国民も、気付いていない。気付いている人がいても、何も言わない、何もしない。

 益々暗い話になってしまった。許して欲しい。いろいろ調べて考えた末、本稿で以前、何度か取り上げた話題で、それと関係があり、現在も話題になっている、明るい、「夢」が持てるプロ・スポーツ界のある話題を取り上げた。

●全米オープン・ゴルフ2013の開催
 2013年6月12日~16日、第113回「全米オープン・ゴルフ・トーナメント」がペンシルベニア州のメリオンGC(全長6996ヤード、パー70)で開催された。

 平均ストローク75という極めて過酷で難しいコースで、イングランドの「ジャスティン・ローズ」は、最終日に5バーディー5ボギーのイーブンパー「70」で回り、トータル1オーバーで悲願のメジャー初優勝を成し遂げた。地元アメリカの「フィル・ミケルソン(トータル3オーバー)」との熾烈な優勝争いを制して2打差の価値ある優勝であった。

出典:ジャスティン・ローズ(英)優勝USオープン2013 Yahoo News 出典:ジャスティン・ローズ
(英)優勝USオープン2013
 Yahoo News

 本稿で何度も紹介している「マスターズ・トーナメント」は、世界ゴルフ競技では別格の評価を受け、全世界にTV中継される最高のエンタテイメント性も持つ競技である。この別格を除くと、世界中のプロ・ゴルファーとアマチャー・ゴルファーが命がけで挑戦し、迎え撃つ競技主催者は、最も過酷なコース設定をする、世界最高位のゴルフ・トーナメントは、「全米オープン」である。優勝者が1オーバであることを見ても、如何に難しいコースかが誰にも分かるだろう。「全英オープン」は歴史と伝統を誇るが、「全米オープン」には敵わない。

●松山英樹がプロ転向した今年の活躍
 全米オープンの超難コースで最終日、多くの選手はスコア―を崩した。しかし東北福祉大学4年生の松山英樹(21)は、正確且つ安定したスイング、曲がらないショット、素晴らしパットで今大会ベスト・スコア―「67」という驚異的な結果を出し、39位から一挙に10位に駆け上がった。そして同トーナメントへの来年の出場資格を得た。

出典:左:松山英樹 USオープン2013 10位 Yahoo News 出典:左:松山英樹
USオープン2013
10位 Yahoo News

 彼は、世界最高位の「全米オープン」に初出場し、10位に入り、優勝者も出していないベスト・スコア―をマークし、来年の出場権も得た。快挙であり、明るい、「夢」を描ける話題を提供してくれたと思う。この「夢」とは、日本の戦前から現在に至る長いゴルフの歴史に於いて、日本人ゴルフ・プレーヤー(プロ、アマ問わず)が世界の3大競技のマスターズ、全米オープン、全英オ-プンで優勝することである。彼は、その「夢」を叶えてくれるかもしれない。

 彼は、今年の2013年のプロ競技開幕前にプロに転向し、本格的に国内ツアーに参戦した。国内5戦で優勝2回、2位2回という驚異的実績である。しかし筆者は、彼のアマチャー時代の活躍を見れば、また日本の男子プロ選手で彼に匹敵する選手があまりいないことを考えれば、当然の結果である。彼は世界の強豪選手と戦うべき選手である。国際的な舞台で戦っている世界の選手が殆ど参加せず、さしたる強剛の日本選手がいない現在の日本のゴルフ競技で幾ら勝っても、金にはなるが、さしたる価値はない様に思う。

●松山英樹のアマチャー時代の活躍
 筆者は、本稿の(45)、112511(2011年11月25日)で松山選手(当時19歳)が2011年のマスターズで「ベスト・アマチャー優勝」したことを書いた。是非、バックナンバーで読んで欲しい。

 彼(写真左席・左端)は、マスターズ優勝者が招かれる特別応接室に、2011年優勝者「チャール・シュワルツェル(南アフリカ)」(左席中央)と2010年優勝者「フィル・ミケルソン(米国)」(左席右端)と肩を並べて着席し、マスターズ主催者から歓迎された。同席のフィル・ミケルソン(米国)は、2013年の今回の全米オープンでジャスティン・ローズに2打差で2位になった人物である。

 写真の中央の暖炉の上に「ボビー・ジョーンズ」の肖像画が飾られている。筆者は、「彼がボビージョーンズの様に終生アマチャーで活躍して欲しい」と内心思った。また「彼が将来、優勝のグリーン・ジャケットを着てこの部屋に招かれる日が待ち遠しい」と本稿で書いた。

出典:松山英樹 2011年・マスターズ・アマチャー優勝。TBS 出典:松山英樹
2011年・マスターズ・アマチャー優勝。TBS

 松山選手は、2011年11月13日、静岡県太平洋クラブ御殿場(7246ヤード、パー72)で行われた「三井住友VISA太平洋マスターズ・男子ゴルフ選手権」で最終日、首位と2打差の2位から4アンダーで回り、通算13アンダーで並みいる強豪プロ選手を尻目に初優勝を飾った。アマチャー選手のメジャー競技優勝は、1973年ツアー制度施行後、倉本昌弘選手と石川遼選手に次いで3人目となった。

出典:松山英樹(当時19歳)三井住友VISA太平洋マスターズ2011年に優勝。MSN。 出典:松山英樹(当時19歳)三井住友VISA太平洋マスターズ2011年に優勝。MSN。

 松山選手はアマチャーのため賞金を受理できず、2位の「谷口 徹」選手が優勝カップを除き、優勝賞金をすべて獲得した。

 谷口選手は松山選手について「いつでも(プロの世界に)来い」と笑ってコメントした。彼は、先輩の目線で若造と松山選手を見下した。アマチャーでも賞金やスポンサー支援を受けてよい時代である。いくら規則で決まっていても、優勝も出来ず、2位の彼が多額の優勝賞金を貰うのである。松山選手に「優勝賞金を貰って申し訳ない」の一言ぐらい記者やTV視聴者の前でコメントすべきであった。彼は、また2位で恥ずかしいという気持ちもなく、日本ゴルフ競技の歴史で初のマスターズ・アマチャー優勝者となった松山選手への尊敬の念も持っていなかった様だ。

 真の実力が問われ、真のスポーツマンシップを要求された世界中のプロ・ゴルファー達は、目の色を変えてメジャー競技に挑戦している。一方日本では、先輩、後輩の「掟」という風習が残り、国際性を欠く古い体質を持つ日本のプロ選手とその集団である日本プロ・ゴルフ業界は、世界で生き残れるのだろうか。

 石川 遼選手の活躍をつぶさに見れば分かるだろう。最近、海外のメジャー競技で殆ど予選落ちしている。しかし不思議なことに、石川支援者が多く、日本のTV、新聞、プロ・スポーツ業界などの関係者は彼の事を記事にする。最近は、彼と松山選手を比較したりする。しかし石川フアンの読者には悪いが、松山選手は、石川選手の手の届かいところに既にいる。

 筆者は、本稿で何度も石川選手に日本を脱出し、米国に移住し、強剛のいる場で戦うことを主張してきた。今のままでは、彼の将来は無いだろう。どうすればよいか。情けない先輩男子プロに頼らず、英語を全く話せなかったが、単身で米国に移住し、一人戦って「全米女子優勝賞金1位」を獲得した元・女子プロの「岡本綾子」に教えを乞うべきである。

 しかし以上の事は、松山選手に対しても言いたいことである。韓国の男子や女子選手を見習うべきである。彼等は祖国を離れ、日本や海外に移住して戦っている。

 本稿で以前、書いたことの繰り返しになるが、日本のゴルフ選手の問題やゴルフ業界に関する問題は、そのまま、日本の経済界、産業界、事業界、そしてエンタテイメント業界に当てはまるということである。

 世界は激変している。従って「現状維持の経営」は最も危険な選択となる。「革新の経営」が遥かに安全、安心の選択である。日本の大企業だけでなく、日本の企業の99%を占める中小企業は、日本だけでなく、世界に通用する、新しい商品、製品、技術、特に新しい事業を、「発想」し、発想した結果を計画し、建設し、運営し、成功させることである。アベノミックスは、99%の中小企業のための成長戦略を欠落させている。日本は大丈夫だろうか。最後に暗い話になった。許して欲しい。

つづく

追記

●謝罪
 エンタテイメント論の連載(41)から「第2部 エンタテイメント論の本質」を始めた。その1、「原点に戻って」、その2、「明るい話題」とした。にも拘わらず、次のテーマである「左脳的思考と右脳的思考」を、その3、とせず、その2、とした。筆者の単純ミスである。謝罪したい。
 しかし「左脳的思考と右脳的思考」を、その2、と訂正せず、その代わり、「明るい話題」、その2を無視し、「特集号」と考えて欲しい。

以上

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