P2M研究会
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2012年度 東京P2M研究会活動報告 -水ビジネスの研究-(その2)

水ing株式会社 内田 淳二 [プロフィール] :6月号

前回のおさらい
膨張拡大する人口と都市化する社会を抱えて多くの地域国家では、利用可能な水が不足している為に、国際的規模で水不足を解消するための活動が活性化している。それらの活動は、水ビジネスと称され今世紀の主要産業として期待されていることをご紹介した。今回は、わが国日本に目を転じ、日本の水道事業の現状と今後の課題につき、東洋経済新報社より2011年に刊行された「日本の水戦略」を参考にまとめてみた。

日本の状況
水道事業を例にとり事業所の整備状況を調査した結果を図1~図3にまとめた。

図 1 事業所種別事業所数割合
水道統計の経年分析(H22年度)(水道協会雑誌)より作成
2010年度における全事業所数:16178箇所
図 1 事業所種別事業所数割合
(図 1)
図 2 給水人口別上水道事業所数割合
(同上)
2010年度における全事業所数:1440箇所
図 2 給水人口別上水道事業所数割合
(図 2)
図 3 事業所種別給水人口の推移(出典:同上)
(図 3) 事業所種別給水人口の推移(出典:同上)
日本においては、戦後の急速な水需要の増大に応えて建設された多くの水道諸設備が老朽化しており耐震化対策も含めた補修更新工事が停滞している。一刻も早い安心・安全なインフラの整備の必要性が高まっているが、少子高齢化する人口構成と20年にわたる低成長経済に起因する水道料金収入の落ち込み等、人材難・財政難が理由でどの事業体も事業の存続自体が危ぶまれる状況である。

課題と現状
施設の耐震化や優れた水道技術の継承など安心・安全な水インフラの維持・構築のためには事業運営基盤の強化が必要であり、「水道の広域化」と「公民連携」の推進が課題となっている。
以下、主要課題毎にすでに明らかになっている現在の状況を俯瞰してみた。
●水道の広域化
中小規模の事業体を統合化する「水道の広域化」については、地域の実情に応じこれまでも多くの事業体が取り組み、実現している事例もあるが、構想にとどまっている例注が多い。つまり、水道事業体自身が広域化検討のキッカケを掴むことができない状況にあり、また推進に向けた動機付けが弱いことが広域化を阻む大きな要因となっているようである。
注:リーダーの不在、料金・サービスの事業体間格差などが障害となっている。
⇒「日本の水戦略」P.96
●公民連携
また財政難への対策である「公民連携」についても、多くの事業体が取り組み、実現している例もあるが、「業務受託者」を水道事業体の事業運営を補完する担い手とするためには、
委託方式による業務運営そのものへの不安、
業務委託先への不安、
契約方式についての不安など
の課題が挙げられ、同様に構想に留まっている例注が多い。
注:民間事業者の活性化を念頭においた業務発注が求められている。
⇒「日本の水戦略」P.97
●地域の特性に合わせた水道行政
また、ガバナンスの問題からは.現在国が一律に定めている「水道法」に対し、各地域の自治体が安全、安心、価格等の義務を行い、管理責任のもとに、自律的に地域の水道法を定め、地域主権による新しい仕組みの検討がなされているが、既存の縦割り行政の壁に阻まれている。
⇒「日本の水戦略」P.122

これらの報告からもわかるように日本の水道事業は高度経済成長下の需要を前提にして設備投資が行われ事業運営がなされて来たが、人口減少が明らかになり大量生産大量消費型経済から省エネ環境重視型経済への転換が定着しつつある現在、水資源大国日本の水道事業も新しい取組みが求められている。

次回は、「日本の水ビジネスの進むべき方向」と題し、持続可能な水資源循環についての考え方を取り上げたいと思います。

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