例会部会
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第159回例会報告

斎藤 雅敏:4月号

【データ】
開催日: 2012年2月24日(金) 19:00~20:30
テーマ: チームワークとカイゼン - 承認力~信じて任せるから人が動く~
講師: 長 直子 氏/商社系研修会社 室長

今回は長 直子様をお迎えして、ご自身の体験に基づく承認力(アクノリッジメント)についてご講演を頂きました。「承認力とは何か」期待に満ちた中、数多くの事例と“想い”をご紹介頂き、ご講演の最中でも質問が飛び交う大変な熱気に包まれた会合となりました。
その内容をまとめてご紹介いたします。

○ はじめに
大手航空会社に長年勤務していた長さん。
ある時転職し、新しい職場にて働いているうちに“何か”が足りていない事に気が付いた。
それは「認められる」と言う事だった。

ウィリアム・ジェームズ曰く
「人間の持つ性情のうちで最も強いものは、他人に認められることを渇望する気持ちである」

○ 「厳しい環境が、チームを育てる」
厳しい外部環境はメンバーが同じベクトルを向きチームワークを醸成するきっかけとなる
厳しく暖かいお客様によって鍛えられ、応援されてきた。
トップシェアの“ライバル会社”に勝つ!と言うハングリー(追いつけ追い越せ)精神。

○ 「理念を掲げ、DNAを浸透させること」
理念・DNAは、分かりやすく共感できるとメンバーに浸透しやすい
理念・DNA・チームワークは研修やプロジェクトなどの教育機会があるとメンバーに浸透しやすい
先人、先輩の思いを含めた伝承はメンバーの理念・DNAの浸透につながる

☆「乗務後、必ず行われるブリーフィングの必要性」
失敗を隠さない。受け止める。どんな事が起きたか、どう対処したか。
失敗は責めない。事実は伝える…そこから本人がどう学ぶのか。
ブリーフィングでの口伝。後に“後輩達”がどのようにすればいいか
考えるキッカケ」になる。皆で検討する。

☆「口伝は”想い”も伝わる」…会社の歴史を伝える。
”伝説の先輩”を伝える。その時、どう感じたのか。
先輩たちから受け継がれる熱い想いは、紙に書いてあることだけでは伝わらない。

☆「理念・DNAを浸透させるためには」
単純なメッセージ…理念・DNAの自覚をしやすい
ブリーフィング…理念・DNAをかみ砕いて、浸透するまで何回も繰り返す。


○ 「承認する…話を聴く、相手を認める」
挨拶を含めた日々一言の承認は、メンバーの自己肯定感につながり、モチベーション向上と所属意識醸成を図る。
承認する体制や制度は、継続的にメンバーのモチベーションや所属意識を高め、ひいては規律向上にもつながる。
話を聴き、信じて任せることは、更なるメンバーのチャレンジ精神を生む。
失敗を責めず組織としてカイゼンすることは、メンバーの自主性チャレンジ精神につながり、更なるカイゼンを生み出す。
危機時であっても、承認してくれる組織や先輩が存在すれば、メンバーは無理なカイゼンでも協力しようとする。

☆「コップのカタチを変える」
 コップのカタチを変えたいと思っても、単純にカタチを変えるだけでは済まなくて、載せるトレイの形状から重量の事、マニュアルの改訂等、色々な事が関係してくる。そして客室乗務員だけでなく色々な部門に関わってくる出来事になる。 色々関わると「面倒な事」として敬遠されがちだが、事例では「どうしたら実現出来るか」を念頭に色々な検討をした結果実現につながる事、しかもそれが色々な現場で行われることが紹介された。

☆「“聴く文化”…傾聴」
 「子供の絵をジャンボに乗せたい」一人の社員のアイデアから、それは始まった。
ペイントの総重量は1t…それだけ重量が増したら、その分積載重量が減る…当然乗せられるお客様も減る。
通常考えると、営業面も考えると、答えとしては「出来ない。やらない」
だけど「どうすれば実現するのか」からスタートすると・・・?
そうして実現したのがマリンジャンボだった。結果として“ファン”を増やすきっかけとなり、同様のサービスは今でも続いている。

☆「社内とは戦わない…ライバルと戦う」
 社内の各部門とは争う事は無い。互いに互いの仕事を”認め合う”。
 お互いを知るために客室乗務員からの提案で「1日整備士体験」が行われた。
 整備士の視点から、乗機を確認する事で、より深い愛着、責任感を覚える。
※現場からの声を真摯に“聴く事”により、様々な提案がしやすい文化が作られる。
その中から珠のようなアイデアが産まれてくる。


☆「家族の意識」
見られること、気にかけられている事を意識することで自然と規律正しくなる。見守るココロと、それに恥じない気持ちから、自然と規律が生まれてくる。
お客様の生命を預かる…その為には、自分の仕事だけでなく、全社が一丸となる、という”想い”。
何故部下を見守れるのか…自分も上司に見守られている、と感じるから…それが一番上まで続く。 ⇒”いざ!”と言うときの安心感

☆「挨拶の効果」
1 ) 「いる」と認める事…承認、の第一歩
手軽である。誰でもいつでも簡単に、出来る。
2 ) お客様からほめられる・・・さらに嬉しい事が起きる
「いつみても明るく挨拶される。気持ちがいい」とのお礼状を頂く。
3 ) お礼状が社内で貼り出され“みんなに”ほめられる・・・さらにさらに嬉しい事が起きる
 ※結果…さらに頑張ろう、良い事をしようという気持ちに繋がる。
  良いスパイラルが生まれる原動力となっている


○ 感想
「承認力」というタイトルから、何が始まるのだろうか、どんな事が承認力なのか、と興味を惹かれました。
日々のあいさつ、そこから始まるコミュニケーション。
そしてブリーフィング。すべての“事実”を伝える。どのように対処したか、どんな問題があったのか。
部下が話す事は、まず“聴く“。
たとえ部下が“失敗”しても、責めない。但し事実は伝える。そして自分で考える。周囲は見守る。部下は理解し、真剣に“そして安心して”取り組む。
このことすべてが“承認力”と言うものに含まれている。

シンプルな目標、日々の”小さな承認”の積み重ねによる信頼感の構築、失敗を恐れないチャレンジ。その”積み重ねのロジック”の一端を垣間見た気がしました。

そしてそれは素晴らしい結果につながっていると感じ、ひいては今の日本に欠けるロジックだと感じた講演でした。
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