P2M研究会
先号   次号

東京P2M研究会報告

渡辺 貢成:9月号

1. 2010年度 東京P2M研究会報告書作成の報告
毎年研究会の報告を行っている。本年は大震災の影響もあり、報告書の発行が遅れたが、PMシンポジウムには間に合わせることができた。

東京P2M研究会はこれまでミッション・プロファイリングを主に、できるだけ実践事例を提供することを心がけてきた。
研究会ではできるだけ国際P2M学会との交流を深めたいとの主旨で、学会への論文提出を奨励している。しかし実務家の論文はそのオリジナリティーより、実践的に使えることに主眼をおくため、発表の機会は多いものの、学術論文としての評価が得られないでいた。今回は学術論文として採用されるように工夫した結果その目的を達成した。

報告書は3つの分類で構成されている。
Ⅰ. 研究成果の国際P2M学会への提出論文
  1. 学会誌への正式採用論文
  2. 韓国製造業の台頭へのOWモデル的評価とOWモデルの再考
Ⅱ. 研究成果のジャーナル41号への投稿
  1. 東日本災害復興プロジェクト開発におけるP2Mの活用
    1.1 「P2Mを活用した大震災語の復興構想提案」のテーマの選定と基本概念
    1.2 中食産業と農業復興ベンチャー育成プログラム
    1.3 復興の仕事(起因ン文書からプログラム構想計画への展開)
    1.4 シュアティに満ちた社会への復興プログラム&プロジェクトマネジメント
  2. 事業者のためのPM-その成功と失敗防止のメカニズム―
Ⅲ. ミッション・プロファイリングの基本研究 ―洞察力と俯瞰力―
  1. プログラムにおける洞察力モデル(IOW-Kモデル)の改良検討
  2. 経営の俯瞰力(OWモデル)の展開
    1.1 OWモデルの解説(ノート付きスライド資料)
    1.2 プログラム価値創出のOWモデル辞典

2. 研究の方向
  (1) 「経営とITの融合」研究(P2Mからの視点で)
日本企業はIT化に多くの投資をしている。しかし、目だった投資効果が出されていないと、発注者の経営者からクレームが出されている。現在はそのような根本的な問題の本質は何なのかを調査するための研究である。

「経営とITの融合」研究会は国際P2M学会で行われている。筆者はP2M学会員としてこれに参加しているが、この問題は筆者にとって長年の懸案でもあった。理由はJPMFの初代事務局長になったとき、会員の過半数がIT関係者であったからである。事務局長としての業務の一つに会員サービスがある。そのためにはその業界の内容を理解しなければならない。理解とは頭で理解することではなく、体で理解することである。これは実際に現場を踏んだ経験のないものには困難であった。

最近になって筆者なりに問題点を掴むことができた。詳細は別途報告するが、日本のIT業界の問題点は基本的に経営からITを見るのではなく、ITから経営をみていることで、基本的にデジタル技術の持つ大きな能力を経営に活用していないことである。これは経営情報学会が出版した「ITと経営の融合」の内容と、学会が実施した発表会から得た実感と、経済産業省が指導したIT経営ロードマップ2008の内容と、それに関連するCIO委員会の報告から理解したものである。経営者の多くが、ビジネス要求をIT担当部門に伝えていない。従って多くのIT投資はITと現場ユーザーからの要請で行われている。ITから経営を見ても部分的にしか経営を改善できない。経営にデジタル技術を活かすことでグローバルでの競争力を発揮させる気構えを経営者が持たない限り、日本の経営はアナログ思考のままで推移することになる。

  (2) 洞察力とBM(ビジネス・モデル)の研究(P2Mの視点で)
2011年の研究の中心となる。東日本大震災以降日本人の志向が「アメリカ頼み」から、「自分志向」に変わり始めている。この変化を考えている。

以上
ページトップに戻る