P2M研究会
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問題解決と価値創造について

梶原 定 [プロフィール] :6月号

現在、日本は、急速な高齢化、社会環境の大きな変化、地方経済の停滞、社会のグローバル化、急速な技術革新など、様々な複雑な問題を抱えている。これらの複雑な問題は、政治、社会、企業にますます増えてきている。そこで、問題解決と価値創造について考察します。

組織(企業)にとって、問題がまったく起こらない事業であることがベストであるが、実際のビジネスで問題が生じないビジネスなどは存在しない。問題は、問題が起こることが問題なのではなく、問題に対し、どのような姿勢で臨むのかが問われているのではないか。  問題は大きく二つに分けて考えることができる。
 1つは、あらかじめ想定される問題であり、熟慮すればするほど、たくさん見つけることができる。
 もう1つは、不測の事態、つまり、あらかじめ想定できなかった問題で、どんなに万全を期しても、必ずと言っていいほど予測し得なかった問題も、起こるものである。

第1のポイントは、どちらの問題に対しても、複雑な問題の本質を究明・理解し、全力を尽くして問題解決にあたることである。また問題が解決できるかできないかではなく、解決するまで叡智を出し続け、取り組み続ける姿勢を持ち続けることが重要であり、また、持たなければならない。「無理だ」、「不可能だ」また「あきらめる」という姿勢ではなく、解決のため、すべての問題を乗り越えていくことができると考える考え方が必要である。

第2のポイントは、より高い価値を創造し、大きな感動を提供することである。
今日、売れ筋の商品が明日も売れるとは限らないし、現在、成長している企業が、来年以降も成長するとは限らない。今日の価値が、明日の価値とは限らず、そして未来の価値は、現在創るものである。
価値のあり方を多面的、複合的に考えていくことで、いままでにない新たな価値を無限に生み出していくことができるようになると思われる。 あらゆる知恵を出して対応していくことが必要となる。 価値の追求においても、ここまでやれば十分というレベルはない。 顧客や社会は常により高い価値、大きな感動を求めてくるものである。ここで非常に大切なことは、TS(トータル・サティスファクション)という考え方である。つまり、TSとは、考え、行動し続けるという姿勢なのである。

企業活動が、社員とその家族、顧客およびその周囲の人々、さらに地域社会、日本、地球など、すべてに対して価値・感動を与えるものでなければならないという考え方で、企業が成長することによって、何らかの不利益を被る人が、現在のみならず将来的にもあってはならないという考え方である。
CS(カスタマーズ・サティスファクション、顧客満足)が、今、目の前にいる顧客に価値と感動を与えることを目的としているのに対して、TSはすべての人々を将来にわたって幸せにすることを目的にした考え方である。例えば、ある地域住民だけに価値を提供することができても、それによって不利益を被る地域住民がいたり、また、一部の大口顧客を優遇するために、それ以外の小口の顧客に不利益を与えたり、生活を便利にするモノをつくるために工場から環境に有害な物質をたれ流したりする。これらのように、いくらCSだからと言っても、一部の顧客の満足のためにその周りの人々や社会に迷惑をかけることがあるというのは好ましいことではない。 これらのような問題をトータルに解決するための考え方がTSである。TSは、あらかじめ事業の存在価値をあらゆる視点から検討して、すべての領域、すべての対象者にとって最善の事業を目指そうとするものである。

そのためには、資源として何が必要かつ重要か? 日本の中で最も重要な資源といえば、それは間違いなく「人材」に他ならない。 企業に於いても、やはり最も重要な経営資源といえば、それは間違いなく「人材」に他ならないでしょう。 それぞれの組織(企業)のビジョン・ポリシーの下、あるべき姿を達成する過程において、様々な困難な問題に直面するでしょう。 今、まさに東日本大震災という、未曾有の困難に直面しており、これを乗り越え、あるべき日本を実現していくためには明日に向けて「思考力」と「行動力」と「姿勢・考え方・倫理」の3つの要件を満たす実践力をもった人材育成が急務であると考える。

この考え方は、P2Mが目指している人材育成の人物像そのものである。
P2Mが目指している使命達成型職業人とはまさに、厳しいビジネス環境にあって、現代の問題や課題の解決に挑戦する、自立型人材であり、企業が、強い企業に成長するためには個人一人一人が、「体系的知識」、「実践経験」、「自立型姿勢・考え方・倫理感」の3つの要件に加えて継続的学習・投資を満たし、人材を育成していくことが真に強い企業になるためには不可欠ではないかと考えます。
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