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「私たちのP2M」とは何か、考えてみませんか (3)
−世界はどのように変わっているのかー

PMAJ理事 東京P2M研究会代表 渡辺 貢成 PMS:6月号

皆さん、「私たちのP2M」とは何か、考えてみませんか(2)では読者のご質問に回答しました。そして本題に入りました。要点を列記します。
日本の製品は日本の技術で開発し、開発当初は100%に近いシェアを誇りましたが、マーケットがグローバルに展開するとシェアが20%以下になってしまう。この現象の要因は何でしょうか?
1990年国際競争力1位の日本はバブル崩壊後なすすべもなく、競争力が低下しているが、それに対する何らかの手が打てないでいる。これはなぜだろう?
この解き明かしが6月号の課題です。

1.マルコム・ボルトリッジ賞以降の世界
1.1 日本はどうだったか?
日本は製造業で世界制覇しましたが、これは「日本=ものづくり:技術、巧みの業」という日本の戦略によるものでした。日本の競争力世界一もバブルがはじけて、従来の戦略が通用しなくなったのでが、新しい戦略を探し当てることができず、10年が経過しました。それでも日本製造業は新しい製品開発を進めてきましたが、自動車を除いて、なかなか収益を上げることができなくなってきました。

それは時代が変わってきたからです。アナログの時代からデジタルの時代へと社会は変わってきました。このデジタル時代を完全に活用したのは米国社会です。デジタル化時代の戦略を確立したことによって米国社会は再浮上しました。残念ながら日本社会はデジタル化時代の戦略を活用すること怠りました。相変わらず「ものづくり=技術、カンバン方式、なぜなぜ5回」がもてはやされていました。
でも、米国の動きがきになりますね。

1.2 米国はどうなったのでしょうか?
 マルコム・ボルトリッジ賞で経営者の頭脳の品質改善を行いました。経営者の品質の最高は良き戦略です。米国が強いのは軍事と金融ですが、ここでは製造業、サービス業に絞って考えてみます。
 米国の素晴らしいところは、なぜ、日本に負けたかを学者が研究しました。そして日本式の経営の良いところをベストプラクティスとしてどんどん取り入れて行きました。更に素晴らしいことはデジタル時代の戦略とは何かを考え、実施したことです。
デジタル・ビジネスデザイン(DBD)マトリックス図

図はDBD(デジタル・ビジネスデザイン)マトリックス図です。まず、DBDの定義をします。
デジタル技術を用いて、企業の選択肢を拡大させるための設計である
DBDはテクノロジーそのものを指すのではなく、デジタル技術を活用して下記のビジネスデザインをする
新たな顧客の創出:DBDは地理的に離れた、あるいはこれまでとは規模もタイプも違う新たな顧客の獲得する
顧客に対する新たなバリュープロポジション創出:DBDによってより効率的な市場、より幅の広い製品サービスを提供する。また、顧客の問題を解決する際の精度やタイミングを向上させることで顧客満足度を高める
社員に対する新たなバリュープロポジションの考察:社員が行なっていた低価値の仕事を減らし、彼らに創造的問題解決や、質の高い技術や知識を活用した業務に専念してもらう
新たな利益モデルの創出:DBDは新しい収入や収益性の源泉を生み出す。それによってシステム内の情報の価値を最大限に活用するとともに、資本コストや操業コストを削減できる
新たな形の戦略活動:DBDは顧客と供給者のネットワークの構築を促進し、関係を幅広く奥深いものにし、新しい価値提供で顧客を引き付け保持するのに役立てる

さて、お題目はさておき、マトリックス図をみると、4つの象限に区分されています。
横軸は組織のDBDの質(経営改革等を含んだ質の高さ)、縦軸は組織のデジタル化活用度を表します。
・ 北東象限:高いデジタル化、優れたBD(ビジネスデザイン)
・ 南東象限:低いデジタル化、優れたBD
・ 北西象限:高いデジタル化、劣ったBD
・ 南西象限:低いデジタル化、劣ったBD

米国企業は北東象限をねらった戦略を採用し、新しいBM(ビジネスモデル)や生産性の向上に貢献しました。ここに米国社会の活力が見られます。

1.3 日本のDBDはどうなっているのだろうか
ではこの間日本企業はどのようにしてIT化に取り組んだのでしょうか。私はIT業を行ったことはありませんが、長年日本のIT化ビジネス(除く金融関連)には疑問を感じていました。
なぜ、IT産業は3K化したのか
なぜ、ITプロジェクトは変更が多いのか
なぜ、発注者は構想計画を行わずに、自社の要件定義をベンダーに書かせてきたのか
なぜ、発注者は社内のコンセンサスを得ないで、プロジェクトを実行するのか。
なぜ、ITベンダーは使命・目的・目標がきちんと書けないのに、PMBOKでコントロールしていますといっているのだろうか
実は長年私が感じてきた疑問でした。私がプロジェクトマネジメントとはこのようにするものだという感覚と離れていたからです。
 いろいろな方々から質問に答えていただきましたが、2006年にはIPAが超上流でのビジネス要求をまとめることとの指針がだされ(超上流から攻めるIT化の勘どころ)、2008年にはIT化を進める前に業務の見える化を行い、然る後に、ITの見える化をしなさい(ITロードマップ2008年)というように変わりました。この変化を見て私なりに理解したことは、多くのIT化はDBDマトリックス図の「北西象限:高いデジタル化、劣ったBD」ではなかったかということです。日米の生産性の差を見てもこのことが理解できます。
 実はバブル崩壊後、日本の多くの企業はアナログ思考戦略からデジタル化戦略を検討し、発想を転換するべきだったのではないかということです。製造業は未だにアナログ時代の戦略から抜け出していないようです。
 この問題の解決にはP2Mが実施するにふさわしい手法だと考えていますが、P2M活用の話は先にお話しします。
 次回は米国における製造業のデジタル化戦略を説明し、日本方式との差を説明します。
以上
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