図書紹介
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メイク・ア・ウイッシュの大野さん
(大野寿子著、メディアファクトリー発行、2006年02月28日、1刷、253ページ、1,200円+税)

デニマルさん:9月号

この本は、あるボランティア団体の方に紹介されたものだ。読んでいくうちにその活動に感動して目に涙が溢れてしまった。題名にもある「メイク・ア・ウイッシュ」(願いごとを実現する)とは、難病の子どもたちの夢を叶えて、生きる力と病気とたたかう勇気を与える世界規模のNPO団体で、1992年に日本支部が設立された。大野さんは、その団体の事務局長で、その活動を紹介している。どれも感動的でそれぞれにドラマがある。夢を叶えるには、お子さんや保護者からの申し入れで、主治医とNPOとで内容の実現方法を模索する。病人を搬送する場合の可能性、相手の受け入れ、費用等の問題を検討して実現させる。時には、相手がOKしなかったり、当人の体力が持たなかったり等で実現しない事例もある。人の命を守り、難病を克服させたい多くの方々のヒューマンドキュメンタリーでもある。

夢をかなえる   ―― メイク・ア・ウイッシュの活動 ――
この活動は、アメリカで始まった。白血病とたたかう7歳の子は、警察官になるのが夢だった。しかし、学校に行けなくなった少年の話を聞いた警察官たちは、彼の制服とヘルメット等を用意し、名誉警察官に任命した。そして駐車違反の取り締まりやヘリコプターで空からの監視もしたが、5日後に帰らぬ人となった。警察では彼のために葬儀を行い夢を叶えた。こうした難病とたたかい、夢を実現できない子どもの為に設立された団体である。

一人ひとりの夢  ―― 夢は当人もまわりの人にも勇気を与える ――
日本での活動は、昨年までに852人の夢を叶えたという。夢が実現されれば、病気とたたかう力となり、家族やそれを見守る人たちに勇気を与えてくれる。その夢は、単に実現させるだけでなく、多くの人が応援し自分もその夢に向かって努力していることを分かってもらう工夫もしている。メイク・ア・ウイッシュは夢の実現のお手伝いであるという精神が貫かれている。夢の実現は、当人だけなくまわりの人も一緒に感動を共有しているのだ。

夢からはじまる  ―― 夢の実現は、次の夢に発展する ――
巻末に「しあわせのたまねぎ」の本の紹介をしている。これは本当に幸せでどこを剥いても幸せで、涙がでるほど幸せという意味である。著者は川野陽子さん。メイク・ア・ウイッシュで「憧れのJリーガーに会いたい」という夢を実現した。「こんな凄いことが出来たのだから、もう何だって出来る感じ」と言って、現在車椅子で仕事や講演活動をしている。その本に、「オイシイことをありがとう。私の病気も捨てたもんじゃない」と書いている。

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