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変革型PM(10) 変革型PM人づくり

白井 久美子:2月号

★国際P2M学会で講演
 先日、国際P2M学会(http://www.iap2m.jp/)の新春セミナーで、「P2Mプロファイリングマネジメントの実践〜.NET(ドットネット)事業立ち上げと企業改革〜」を講演した。筆者のプロファイリングマネジメントの実体験談を率直にお話したのだが・・・おもしろかった!ためになった!と、いろいろな方から感想を頂戴し、人様のお役に立てたことをとても喜ばしく思っている。

★変革型PMに求められるスキル
 変革型PMに求められるスキルは、「PMスキル」「コンセプチュアルスキル」「ヒューマンスキル」の3つのカテゴリに大別される、と前回書いたがそれらがどんなものであるかについては、下記URLを参照されたい。


変革型プロジェクトマネジャーの育成 ―必要なスキルは何か?―
http://www.unisys.co.jp/club/pm/no17.html

★プロファイリングマネジメントとは
 “プロファイリング”とは、ビジネス構想の初期過程で現状の複雑現象から洞察力によって見抜いた問題をミッションとして明確に規定するプロセスである。プロファイリングマネジメントは、「ありのままの姿」から洞察した全体使命の意図を多元的に解釈し、幅広い価値体系に表現し、「あるべき姿」を追求してミッションを実現可能なシナリオ形式にまで展開する実践力である。

 P2Mの監修者である国際P2M学会副会長/日本工業大学技術経営大学院の小原教授(http://www.nit.ac.jp/senmon/contents/03course/pm.html)は、プロファイリングについて「平成16年度プロファイル委員会報告書」の中で次のように説いている。

 『プロファイル(profile)とは、人物の横顔、シルエット、全体の輪郭や外形、歴史など実際描写や建築の側面図などを意味する。
 プロファイリング(profiling)は、入手した情報を手がかりにまだ「明らかでない」対象の「全体を探る」能力である。我々は、社会生活のなかで無意識おうちにプロファイリング、つまり「全体を探る」能力を使っている。

 例えば、政治家は、選挙の季節になれば、「あるべき社会」に熱弁を奮い、その是非で当選、落選が決まる。経営者は新しいビジネスチャンスを情報やアイディアを手がかりにして発展する自社の姿を描き、株主や社員から経営能力の信頼を得ている。
 プロファイリングは、犯罪捜査の手法を意味する用語であり、現場や観察者の情報、物証分析による断片的現象や情報を手がかりに、犯人候補の中から証拠を根拠として発言や説明にある矛盾や対立を突き、犯人像を究明する。つまり、科学と直感を融合させ、全体を探り的確な本質を見抜く問題解決型の思考と行動である。
 プロファイリングは、行政、産業、企業などあらゆる分野で基礎的な必須知識となってきた。プロファイリングとは、特異現象や断片情報を手がかりに、その背後に潜む全体像を追求して、課題発見と課題解決に糸口をつける知的作業である。』

 つまり、プロファイリングマネジメントは、与えられた全体使命を達成すべく、事業全体のあるべき姿を描き、事業全体像の形成と方針とを直結し、ビジョンとミッションから事業スキームのグランドデザイン、事業創造を描き実現シナリオを作るマネジメントフレームと言える。

★プロファイリングマネジメントでは何をするのか?
 プロファイリングマネジメントでは、全体使命を実現するために、ありのままの姿からあるべき姿にむかうシナリオを明らかにする。プロファイリングマネジメントの実践は、使命形成、使命展開、使命記述の3つのプロセスから構成される。

★使命形成
 最初のプロセスである使命形成では、プログラムのミッションをわかりやすく表現する。使命形成はさらに、1)ミッション記述、2)コンテキスト分析、3)目的・目標の連鎖という3つの要素で構成される。
 1)ミッション記述・・・“ありのままの姿”から“あるべき姿”へと変革する際のプログラムの全体使命を記述する。
 2)コンテキスト分析・・・コンテキスト分析では、ミッションの全体を理解するために解釈を掘り下げていく。ミッションを掘り下げて解釈し、そのミッション成し遂げたその先に、将来に、いかなる“ありたい姿”や“あるべき姿”があるのかを描く。実現したいイメージを具体的なコンテキストとして表現する。
 事業成功の可能性を、仮説がうまく成り立つことを考えながら“あるべき姿”として文章化する。プログラムで創造し得る価値は複数存在する。“ありたい姿”や“あるべき姿”となったときに生じ得る価値項目を具体的に列記する。
 3)目的・目標の連鎖・・・コンテキスト分析で示した価値項目から、ロジックツリー分解して目的、目標、方針に纏め上げる。

★使命展開
 使命展開では、与えられた使命を全うするために現実的(具体的)には何をしたらよいのかを決めていく。使命をさらに深く解読し、使命実現のために必要と思われる仮説をゼロベースで打ち出したり、問題解決策を提示したりする打ち手や対応策の緊急性や優先度、効果などについても検討する。

★使命記述
 使命記述では、事業を意図してありのままの姿からあるべき姿に向かうシナリオを作成する。事業具現化にむけたストーリーを描く。

 と、ここまで書いてすでに2000字あまり。
 プロファイリングマネジメント実践の過程で筆者が遭遇した衝撃?!のエピソードや、そこで試練を積むことになったコンセプチュアルスキル、ヒューマンスキルについては、また次回ご紹介することにしたい。

 変革型PMは、最大使命を自ら定義し、ありのままの姿からあるべきス姿へとシナリオを描き、戦略をたて、実現にむけその戦略を着実に実行する。変革に向けたしくみ作り、価値作り、人作りをドライブする。誰よりも元気で明るく、強靭なリーダーシップを発揮し、周囲をリードする。そんな変革型PM人を創りたいと思った場合、PMスキルの習得以外にいったいどんな修業?や試練?を乗り越えてコンセプチュアルスキル、ヒューマンスキルを習得していくとよいのだろうか?

   

・・・つづく
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●白井久美子プロフィール
http://learning.unisys.co.jp/company/message.html
●変革型PMが企業の活性化を実現する
http://premium.nikkeibp.co.jp/bits/bits_interview/interview06_01.shtml
●がんばれ!ワーキングマザー
http://www.unisys.co.jp/club/working/no12.html
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