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変革型PM(第8回) コーヒーブレイク


 前回まで小学校お受験プロジェクトにおける変革型PM体奮戦記を連載してきた。次の連載はどんなものにしようか現在構想中である。
今月は、コーヒーブレイク、連載ちょっと休憩ということで変革型PMにおすすめの本を2冊ご紹介したい。

★「価値組」未来企業へのシナリオ
 島田精一(監修)、甲斐英隆/池上孝一(共著)
 発行 日経BP企画
★「価値組」U 未来企業へのメッセージ
 池上孝一(著)
 発行 日経BP企画

 いずれの本も、日本の経済界や学界の実力者11名によって開催された「顧客価値創造経営アドバイザリー・コミッティ」で、企業経営の未来に向けて、より大きい付加価値を顧客に提供できる「価値組」企業へと革新するシナリオについて討議した際に導出された提言、未来企業経営への示唆・真髄などが記されている。

経済界/学会の実力者11名とは、次のような蒼々たるメンバーである。
◆東京大学院経済学研究科・経済学部教授 伊藤元重氏
◆ボストンコンサルティンググループ
  シニア・ヴァイス・プレジデント
内田和成氏
◆慶應義塾大学環境情報学部教授 國領二郎氏
◆イトーヨーカ堂/セブン−イレブン・ジャパン
  代表取締役会長兼CEO
鈴木敏文氏
◆NTTコミュニケーションズ代表取締役副社長 鈴木正誠氏
◆富士ゼロックス代表取締役副社長 高橋秀明氏
◆ジャーナリスト 野中ともよ氏
◆エアバス・ジャパン代表取締役社長 グレン・S・フクシマ氏
◆ハーバード大学経営大学院教授 F.ウォーレン・マクファーラン氏
◆トヨタ自動車専務取締役 松原彰雄氏
◆日本ユニシス代表取締役社長 島田精一氏
   (50音順)

 「顧客価値創造経営アドバイザリー・コミッティ」は、2003年から2005年にかけて、前述のメンバーの方々から、企業がより高い付加価値を顧客に継続的に提供し、社会の構造変革、様々な経営環境のパラダイムシフトの時代を生き抜いていく企業、すなわち"価値組 企業"へと変革する"シナリオ"について、企業経営者や日本社会への実践的な提案として、多様な示唆を頂戴する場であった。

 筆者も一度だけ、隣接会場でモニタを通して討議の生中継の模様を見たことがある。「顧客視点」とか「顧客価値創造」と簡単に言うけれど、それは日々の経営実践や業務活動の中で具体的にどのようなことを意味しているのかを識者達はわかりやすく述べていた。また、顧客志向で考えることの必然性や重要性についても、リアルビジネスでの生々しい体験をもとに紹介していた。

 本には非常に多くの示唆メッセージが紹介されているのだが、ここでは特に印象深かったものを2〜3紹介する。

"なくてはならない企業"とは、常に変化する「顧客の求める価値」を捉え、人のマネをせず、新しい価値提供をし続けることができる企業であり、業態にはよらない。
【by 鈴木敏文氏】
競争力の源泉はヒトであり、現場社員の人間力・提案力を最大発揮させる環境を創出することがラインマネージャーの仕事。
【by 松原氏】
現場力がある企業は、ミッション・ステートメントをしっかり浸透させた上でミクロの意思決定サイクルをタイムリーに回している。
【by 内田氏】

多 様な外部環境の変化を察知し、不測の事態を乗り越え、どんな状況にあっても全体使命を忘れることなく価値創造のためのプロジェクトマネジメントを実践する変革型PMにとって、プロファイリングマネジメント、戦略マネジメント、アーキテクチャマネジメントに役立つヒントがこの本には多く秘められていると言えよう。


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●白井久美子プロフィール
●変革型PMが企業の活性化を実現する
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