先月号 次号 松尾谷徹 :10月号
 
「チームビルディングの方法」

 先月号では、JPMFで開催した「チームビルディング」に関するセミナーを紹介しました。チームビルディング、チームを作るとは、いったいどんなことなのでしょうか。今回は、チームビルディングについてもう少し詳しく考えてみましょう。

 何のためにチームを作るのか、チームビルディングの目的は明らかです。人が集まって、何らかの目的に向かって協働作業を行うには、チームを形成した方が、しないより遥かに効率的であるからです。良いチームビルディングが行われれば、結果として、良いチームの状態が得られ、成功の確率が高まります。

 仕事を進める上で「コミュニケーションが大切だ」、「チームワークが大切だ」と日常的に使われ、一般常識化しています。そうすると、人々は、日々、チームビルディングに励んでいるのでしょうか? 頭の中では理解しているが、具体的な行動となると、どうすれば良いか、意外と解らないのではないでしょうか。IT系のプロジェクトマネジメントは、遂行段階においてチームリーダとしてチームで仕事を行いますが、ビルディングはほとんど実践されておりません。

 プロジェクトマネジメントの輸入元、米国ではどうでしょうか。米国では、ピーター・M ゼンゲの著書「最強組織の法則 新時代のチームワークとは何か」(徳間書店1995)を始め、チームビルディングの目的や方法について良く知られています。組織力の日本、個人力の欧米と思い込んでいる人が多いのですが、そうではないようです。

 この背景には、時代の変化が大きく作用しています。古い日本の組織文化は「終身雇用で家族関係を拡大した企業組織」です。大げさに言うと、上司部下の関係は一生続き、上司は親のように部下を育成します。チームビルディングも、家族の延長として与えられた枠の中で作られます。部長、課長、係長、平社員と言った役割を演じながら、長い時間をかけてチームビルディングが行われていました。それでもチームビルディングは不足がちであり、忘年会、送歓迎会、社員旅行、運動会、野球大会、冠婚葬祭などチームビルディングの強化が頻繁に行われておりました。

 このような日本式チームビルディングを行っている企業は、現代でも沢山あり、成功を収めています。しかし、大企業をはじめ多くの企業では伝統な日本式チームビルディングが失われてしまいました。主な原因は、組織の基盤となる事業がどんどん変化し、何年も同じチームを維持することができないからです。 

 現代のビジネス環境下では、日本式チームビルディングが機能しないことは明らかですが、それに代わる方法を知らないことが問題です。日本式チームビルディングは、文化として摺りこまれているため、他のチームビルディング手法を考えたことも無く、過去の栄光を嘆き悲しむ「迷える子羊型リーダ」が増えています。

 家庭において親として、最低でも10年はかかる「子育て」「親子関係の構築」でもなかなかうまく行かないのに、それをモデルとした、日本式チームビルディングを、数ヶ月のプロジェクトに適用しようとするのは無謀です。別のチームビルディングイの方法が必要です。では、いったいどのような方法があるのでしょうか。

 チームビルディングについて、様々なセミナーが開かれており、様々な方法が提案されております。大別すると2つに別れます。

   体験型:良いチームの状態を体験して学ぶ

   知識型:チームビルディング理論を学ぶ

 他の分野と違って、知識型だけでは実践するのが難しいようです。頭でわかっていても、メンバーを誉める行動となると、難しいのではないでしょうか。やはり、体験型を含めてチームビルディング学ぶ必要があります。

 体験型にも、色々な流れがあり、代表的なものを示します。

冒険教育

小さな冒険をチームでクリアーすることにより、チームビルディングを体験し習得する手法です。古くはボーイスカウト活動や、教育キャンプとして青少年に対して行われてきました。最近では、冒険のための設備を設置し、専門的に冒険教育を行う方法が盛んに行われています。

  幾つか、関連するリンクを示します。

  NPO 国際自然大学校 http://www.nots.gr.jp/ の日野春校 http://www.nots.gr.jp/modules/tinyd4/

  リコーヒューマンクリエイツ株式会社 のリーダシップアドベンチャ http://www.rhc.co.jp/h-resource/leadership.html

自己開示、ロールプレイング

チームの仲間としてのコミュニケーションは、お互いを知り打ち解けあうことにある。それには自分の過去や夢や感情を他者に語る自己開示と、他者の自己開示を傾聴することが必要です。これらを演習として組み入れた研修です。様々な局面でコミュニケーションスキルを高める為、プロジェクトの局面を想定したロールプレイングなども用いられる。
前回紹介した、JPMFのチームビルディング研修はこちらです。

 次回は、あまり知れれていない冒険教育について、紹介します。

松尾谷 徹