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「DICグループのグローバルITガバナンスに貢献するPMOに向けて」

DIC株式会社 高橋 啓志: [プロフィール] :7月号

 DIC (旧大日本インキ化学工業) は、世界60以上の国と地域において印刷インキや有機顔料、合成樹脂をはじめとする幅広い事業をグローバルに展開しています。
 現在、当社では、日本を含むアジア・大洋州のグループ会社に、新基幹システムであるERPを順次導入する全社的プロジェクトを推進しており、このプロジェクトが完了すると、先行してERPを導入した欧米を含む全世界の基幹業務システムが同一のERPテンプレートのもとで稼動し、業務プロセスやデータのグローバルな連携・統合が大きく進展することになります。
 そして、海外子会社との更なる連携強化やグローバル最適化を推し進めるDICの経営戦略に、私が所属する情報システム部門がITで貢献していくためには、基幹業務システムの統合にとどまらず、経営判断や意思決定に様々な気づきを与える情報系システム、あるいはグローバルなコミュニケーション基盤や情報セキュリティ確保を実現するITインフラなど、ICTの全ての分野においてグローバルITガバナンスを発揮し、DICグループのあるべき姿を具現化するITを、グループ全体最適の視点で導入・利活用していくことが求められています。
 このような背景のもと、当社では、2012年7月に情報システム子会社を簡易吸収合併し、本体にあった情報システム部と一体化した新たな情報システム本部を構築して、グローバルITガバナンスの実現に向けて大きく舵を切りました。
 私自身はDICに入社以来、一貫して情報システム子会社に所属し、DIC本体統合までの数年間は、人財育成や開発生産性向上、そして組織変革などを主要ミッションとした子会社内PMOの役割を担っていました。しかし、今回の統合を契機に、DICグループのグローバルITガバナンスを実践する戦略的なコーポレートPMOへと、立場が大きく変わりました。今、私に求められているのは、ITプロジェクトマネジメントのグローバルな共通基盤を整備し、全てのITプロジェクトをDICグループ全体最適の観点で統合的にマネジメントしていくことです。
 ITプロジェクトのグローバル化に加え、パッケージソフトの活用やクラウドサービスの本格的普及に伴う「持たざるIT」への流れが着実に進展する中で、当社におけるITプロジェクトマネジメントのあり方も大きく変わりつつあります。個々のプロジェクトのQCDを維持向上させることは当然ながら、1つ1つのプロジェクトを、上位の経営戦略やIT戦略といかに整合させていくかといった視点が益々重要になってきています。そういった意味で、プログラムマネジメントをコアに据えたP2Mに期待するところは非常に大きく、この機会に改めてP2Mを徹底的に学び直してみようと思っております。
 最後になりましたが、PMAJには、普段の仕事の中ではお会いできないような様々な業界の皆様と交流できる大変有意義な場があります。IT業界やITユーザ企業という枠を超えて、エンジニアリングや建設業界の皆様など、プロジェクト&プログラムマネジメントに関して長い歴史と豊富な知見を有する方々との交流を深めさせていただき、その中で貴重なヒント・気づきを得ていくとともに、自らも積極的な提言・提案を心掛け、微力ながらもPMAJの活動に貢献してまいりたいと考えている次第です。

以上

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