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「エンタテイメント論」(63)

川勝 良昭 Yoshiaki Kawakatsu [プロフィール] 
  Email : こちら :6月号

エンタテイメント論


第2部 エンタテイメント論の本質

4 涙
●インタープレーと交流分析
 古今東西の人間は、自分と自分以外の人間、大げさに言えば、地球上のすべての人間の誰かと何らかの関わりを持って生きてきた。そしてこれからも生きていく。この自分と自分以外の人間との関わり方を「インタープレー」と定義することも出来るだろう。

 筆者は、インタープレーという「人と人との関わり方」に着目して人物の「性格」を捉えることを思い付いた。そして世の中に数多く存在する人間の「性格」に関する学説、研究理論、俗説(血液型性格評価)を調べ、どれが筆者の「問い」への「答え」になるかを探した。しかしなかなか見付からず悩んだ。やっと探し当てたと思って詳しく調べると、「答え」になっていなかった。悩みは益々深まった。幾ら探しても見つからないという絶望感が増し、半ば諦め、「答え」の探索を止めた。

 しかしある日、ある時、某テレビ番組を見た。その番組の中で精神分析医・故エリック・バーン博士(Dr. E. Berne 1910~1970 カナダ出身)が説く「交流分析(Transaction Analysis)」が簡単に紹介された。「ひょっとして何かあるかも?」 と感じて、交流分析の内容を調べることにした。

出典:エリック・バーン博士 Yahoo Wikipedia 出典:エリック・バーン博士
Yahoo Wikipedia

 その内容を調べ始めて直ぐに筆者が求めていた「答え」の有力なヒントが見付かった。信じられなかった。嬉しかった。この発見は、筆者の悩みを一挙に解消させ、長らく求めていた「答え」を結実させた。そして「(抗)悪夢工学」の構築に繋がった。

●交流分析の「人生の基本的姿勢」
 「交流分析」とは、同博士が精神分析の基本的考え方を応用して考案し、提唱したもので、パーソナル精神分析理論であり、心理療法でもある。また人物評価論、コミュニケーション理論、児童発達理論などとも深く関係している。

 「交流分析」は、7つのジャンルで構成されている。それは、①自我状態、②ストローク、③人生姿勢、④人生脚本、⑤人生ゲーム、⑥時間構造、⑦対話分析である。この内容を説明する紙面の余裕がないので専門書に委ねたい。

 筆者は、この内容のすべてがヒントになった訳ではない。その中の③の「人生姿勢」と言われる部分が「ヒント」になったのである。

 「人生姿勢」とは、人生に於ける所謂「インタープレー」の場で、自分(自者)と他者(自分以外の人間)に対しての「本人」の基本的生き方の姿勢を意味する。「Yes? No?」の生き方と云えば、知っている読者はいるだろう。この姿勢には、以下の通り、4つの種類がある。

人生姿勢の種類

 筆者は、この「姿勢」を「人生の生き方」とのみ捉えなかった。これは、本人の様々な特徴を有した「性格」の中で、最も本質的な「性格」に根差したものと考えた。言い換えれば、自分と他者との関わり方(インタープレー)に於ける「本性」と捉えた。

 もし同博士が存命なら筆者の「拡張解釈」について本人の同意を得たいと思った。しかし不可能である。そのため筆者は、間違いを覚悟し、自らの責任に於いて、この「姿勢」を性格の根底にある「本性」と結論付けた。と同時に「悪夢工学」は、交流分析に準拠した理論ではなく、それをヒントとして構築されたものと結論付けた。

 しかしこの本性という「性格」を保有した人物をどの様に類型化すればよいか? その性格の度合(レベル)の強さを如何に判断するか? 自分が自分の性格を理性的に意識しているのか? 感性的に意識しているのか? 意識と行動との関係は何か? そのギャップはどれくらいあるか? 様々な性格を持つ人物の内、どの人物が人の「夢」を平然と平気で破壊する人物か? 考えれば考えるほど、益々複雑な類型化の泥沼に入り込み、実用性から益々離れていった。そして益々悩んだ。

●悪夢工学式・性格分析評価法の考案
 筆者は、昔から「原理とは本来単純で美しい姿をしている」と考えてきた。間違っているかもしれないが、その実例が数多く存在することも事実である。その事を思い出し、新しい理論を構築する場合、「単純で美しい姿の原理」を考えるべきだと思い直した。勿論、複雑な原理は、当然あってしかるべきであるが。

 その結果、複雑な分析や類型化の作業を止め、枝葉末節を切り捨て、幹の部分のみを残す極めて大胆な作業に切り替えた。そして正常な精神活動ができる人間を4つの「性格タイプ(実態は本性)」とそれぞれのタイプに3つのサブ性格タイプに類型化し、単純で美しい姿の原理を構築した。その方が実用性にも耐えると確信した。

 4つの「性格タイプ」とは、インタープレーという人との関わりの場で、自分と他者を如何に肯定するか、否定するかで分け、それぞれの性格パターンに名前を付けた(ABCD)。次に肯定と否定の度合いを「超」で意識しているか、「普通」で意識しているか、そして「超」や「普通」の度合いに関係なく、自分自身がその事に 「無意識」であるかに分けた。これを「サブ性格タイプ」として名前を付けた(1、2、3)。

自分の性格は? 自分の性格は?

●性格タイプ
Aタイプ= 自分(自者)を肯定し、他者も肯定するタイプ。覚え方~Ace(素晴らしい)のA
Bタイプ= 自分を肯定し、他者を否定するタイプ。覚え方~Bad(悪)のB
Cタイプ= 自分を否定し、他者を肯定するタイプ。覚え方~Inferiority Complex(劣等感)のC
Dタイプ= 自分を否定し、他者も否定するタイプ。覚え方~Die(死・自殺)のD

●サブ性格タイプ
サブ性格タイプ 1 = 肯定又は否定の度合いが極端に強く、「超」と云えるタイプ。
そしてその意識が本人にあるタイプ。
サブ性格タイプ 2 = 肯定又は否定の度合いが「普通」と云えるタイプ。
そしてその意識が本人にあるタイプ。
サブ性格タイプ 3 = 肯定又は否定の度合いに問わず、その意識が本人に全くないタイプ。

この単純化した類型化に成功した結果、「悪夢工学」を構築することが出来た。

夢工学式・性格分析評価法夢工学式・性格分析評価法

●悪夢工学の内容説明
 悪夢工学は、様々なことに活用できることが分かっている。また様々な性格タイプを如何に識別するか? 識別した結果、彼等の破壊工作を如何に防ぐか? など現実の社会で極めて重要な「問い」に悪夢工学は「答え」ている。

 従って読者は、悪夢工学についてもっと詳しく知りたいであろう。しかし紙面の制約がある。またその要望に応えることは、本稿の連載目的から外れてしまう。誠に申し訳ないが、本号をもって一旦この説明を終わりとさせて欲しい。しかし筆者の「夢と悪夢の経営戦略(出版:亜細亜大学購買部=直接販売)」を参照すれば、この要望は直ちに満たされる。ついては、以下の性格タイプに関する概要を述べるに留めたい。

Aタイプは最も信頼の置ける人物でリーダーとして組織を動かし、大きい実績を実現できる人物である。しかし気を付けないとBタイプの犠牲になる。
Bタイプこそ平然と平気で人の「夢」を破壊する人物である。Bタイプの中で最強の夢破壊者は、B1タイプである。B1タイプは、最も早く、最も高く人事評価され、組織の中で最も早く昇進する。B1タイプの手に掛かれば、如何なる経営学も、人事組織論も、苦も無く無力化される。なおB1タイプの最強の敵は、同一組織内の他のB1タイプである。この両者の戦いが社内を混乱させ、最終的には組織を崩壊させる。しかし崩壊前にB1タイプは所属組織を脱出する。
Cタイプは、Aタイプにも、Bタイプにも盲従する。B1タイプは、最も早く、確実にC1タイプを子分にし、組織内に最強の裏ネットワークを形成する。社内不祥事や違法行為などが起こっても、B1タイプが捕まることは殆どない。
Dタイプは、自殺タイプ。人の夢など簡単に破壊する自爆テロタイプでもある。

●地球上の人類の類型化
 国連の2011年版「世界人口白書」によると、2011年の人口は70億人と推計されている。

 この全人類は、①精神活動が正常な成人、②精神活動が未発達又は発達過程の幼児や少年、③精神活動に異常のある幼児、少年、成人に分けられる。

 悪夢工学は、②と③ではなく、①を対象としたものである。その事は、人の「夢」を平然と平気で破壊し、悪夢を与える人物は、正常な精神活動が出来る成人であることを意味する。筆者は、この様な人物によって多くの「夢」のある事業プロジェクトを破壊され、多くの「悔し涙」を流した。多くの読者も同じ目に遭っているだろう。

現在の70億人の人類の性格全体図
現在の70億人の人類の性格全体図

つづく

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