図書紹介
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「重力とは何か」  アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る
(大栗博司著、幻冬社新書、2012年6月15日発行、第二刷、289ページ、880円+税)

デニマルさん: 8月号

2012年7月5日の新聞に「ヒッグス粒子か発見」の記事が掲載され、インターネットでも同様のニュースが配信された。科学者でない人でも、この記事の細かな内容から40年間以上に亘り世界中の科学者が研究し続けて、やっとその素粒子が発見されたかも知れない事実に驚き、学問の深さや重さを感じたのではなかろうか。ヒッグス素粒子は、物質を構成する最小単位の素粒子で質量をもたらすもので、「万物の重さの源」であるという。この話は、137億年前の「ビックバン」による宇宙誕生までさかのぼって考える必要がある。宇宙誕生の問題を追及していくことは、物質誕生の本質に迫ることである。宇宙誕生の話は、先に「宇宙は何でできているのか」(2011年09月号)で紹介した。実は、この本も素粒子物理学の入門書であったが、素粒子の重さ(物質の構成要素)には触れていなかった。先の新聞記事が「重さの源」を探し出したとの発表で、重さと重力が一躍話題となった。今回の本も素粒子の入門書であるが、それでも難しい部分があり未知への挑戦が必要である。

重力と言えば?   ―― アイザック・ニュートン ――
重力の起源は宇宙誕生なのだが、そこから入ると難しいので普通の人が分かるように「重力の七不思議」から話をひも解いている。矢張り重力といえば、ニュートンのりんごである。物の落下は地球と物体間の力で、それを『万有引力』といった。万有だから地球だけなく、巨大な宇宙から極微の素粒子までに及ぶ四次元時空の研究である。縦・横・高さに時間(速さの概念も含め)を入れた場合、重力はどう働くか。力とはエネルギーである。

相対性理論と言えば?  ―― アルベルト・アインシュタイン ――
ニュートン力学は、時間と空間が変わらない前提で成り立っている。しかし特殊条件で時間と空間は伸縮することが判明している。この特殊条件とは、巨大な宇宙空間と極小の素粒子のミクロな世界である。科学の法則は、いかなる条件でも不変で例外を認めていない。このニュートン力学を補完したのが、アインシュタインの特殊相対論である。ポイントは、光速が一定なら時間と空間は変化することを理論的公式化した。それが[E=mc2]である。

宇宙を語る人と言えば?  ―― スティーブン・ホーキング ――
アインシュタインの[E=mc2]は、「エネルギー(E)は、質量(m)に光速(c)を2回掛けたものに等しい」ので、エネルギーが質量・光速と正比例の関係にある。しかし、それが何を意味するのかは本書を読んでのお楽しみである。この公式発表から100年後の現在、宇宙誕生時のブラックホールでは、アインシュタイン方程式が成立しないと言った人がホーキングである。このホーキング放射も本書に解説してあり、科学の奥深さを読み取れる本である。

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