関西P2M研究会コーナー
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本物商材を創る
~地方からの挑戦~

海藏 三郎 [プロフィール] :6月号

 中小ITソフト業界を取り巻く経営環境は、厳しい状況が続いている。生き残りをかけて、どうにかして、この苦境から浮上したいと喘いでいる会社が多い。その浮上策のための的確な処方箋はないが、オリジナル性の高い商材やビジネスモデルを地道に継続的に追及していく取組こそが、“急がば回れ”の模範回答ではないかと筆者は思う。今回は地方で健闘している会社について紹介したい。
 (株)ポスコは宮崎に本拠を構えるIT系企業である。会社設立17年で社員数は15名ほどの小さな会社であるが、会社名の由来ともなっている「POS販売管理システム」では、アパレル系の販売店やグッズ・雑貨商店舗等、全国770店ほどに納入実績を誇る“化け物”商材を担いでいる。その商材名も、ずばり『うれっこ』であり、現在は『うれっこⅣ』にまでバージョンアップしている。
 代表取締役である小泉社長が、当『うれっこ』販売管理システムを開発販売したのは、平成2年のことである。当会社を設立する5年ほど前に、当時在籍していた会社のオーナーや知人であるアパレル店舗経営者の協力を得て開発した代物である。衣料品店の商品傾向や売れ筋傾向及び在庫管理、値札の付け方や発注の仕方等々のまさに現場を知り尽くしたシステムで店舗運営のノウハウの固まりとも言えるシステム商材である。
 現在のバージョン『うれっこⅣ』では、POSレジの多機能化や混雑時は2本のスキャナーを取り付けるなどの工夫はもちろんのこと、値札発行から仕入・売上・在庫管理、店舗間移動・棚卸処理までをフルカバーし、商品に応じて単品管理、セット商品管理、部門管理等が選択できる等のハイブリッドな多様な機能を持たせている。
 ただ(株)ポスコのビジネスモデルは『うれっこ』というシステム商材を販売することだけが主眼ではない。受注が決まると、顧客の商材や店舗現場を鑑みた最適な値札設定方法を提言し、商品発注や在庫管理手法についても指導助言し、顧客ごとのカストマイズ納入を基本にしている。値札用のバーコード設定方法も、自社で考案した独自のコンセプトを貫いている。
 顧客店舗の、顧客層を鑑みて、商品の仕入から販売、回収、在庫管理に至る全てのフローを熟知し、その上で地域一番店を目指すためには、どのような販売管理手法が大事かを適切にアドバイスし、運用ノウハウまで指導して納入する。まさに現場に精通した至れり尽くせりのモデルである。
 小泉社長は長年の経験で培った発想豊かな方で、独自のアイディア機能を遂次システムの中に組み込んできた。それが会社のノウハウにもなっている。しかしながら、昨今は事業承継のことを懸念されている。また『うれっこ』に続く新たな商材が生まれてきてないことも気になる。そして、何よりも今までの『うれっこ』シリーズの最大のターゲット市場であったアパレル業界の不振が、小泉社長の悩みを深くしている。
 (株)ポスコのDNAを絶やさない戦略(人材育成や新商品策定)が今後の最重要課題であろう。
 さて、上記(株)ポスコの事例についてP2M的解釈を試みると、「うれっこ」商材作りの過程はプロジェクトマネジメントのプロセスである。ただ「うれっこ」商材のコンセプト創りに至る過程は、プログラムマネジメント的発想である。アパレル業界の特徴や動向を吟味し、自社のミッションや目標達成に至るシナリオストーリーを構築する。さらにオリジナル性を追求するために、コアとすべき機能要因を組み合わせて「うれっこ」商材としてのコンセプトを固めていった。
 (株)ポスコの経常利益率は10数%とのこと。その柱になっているのが「うれっこ」商材である。小泉社長ご自身はP2M手法についてはご存じないが、経験的に実践されてきた手法は、P2M的アプローチで説明できる。中小企業活性化のために、今後P2Mの実践手法を、中小企業の経営戦略に適用していく必要性を痛感する昨今である。
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