図書紹介
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「知の衰退」からいかに脱出するか?
(大前研一著、光文社発行、2009年2月20日、第4刷、440ページ、1,600円+税)

デニマルさん:5月号

この本の話題性は、何といっても日本の現状問題の指摘と国の将来のあり方に関して真剣に考えて提言している点にある。著者は、経営コンサルタントとしての経験から問題の把握と原因の鋭い究明、そしてその解決方法等を多くの本で書いている。その中心テーマは「ボーダレス経済学と地域国家論」である。それも日本だけでなく、アジアをはじめとする世界中の国々に視点を拡げている。そんな関係から著者は、世界的大企業やシンガポールや韓国等の国家レベルのアドバイザーをし、アメリカ、オースラリア、中国等の大学の経営顧問としても活躍している。そんな忙しい中で、スキューバダイビングやバイク、クラリネット演奏等の趣味も楽しんでいるという。著者の本を最初に読んだのは、「企業参謀」(1985年)であるから、20年以上の付き合いである、と言っても面識がある訳ではない。筆者が勝手に著書を追っかけて、現在でもブログ(ニュースの視点)を毎週愛読している。

知の衰退の現状(その1)   ―― 学力の低下(考えない子どもたち) ――
従来の詰め込み教育が良くないから「ゆとり教育」を導入した。その結果、日本の子どもたちの学力は国際レベルで大幅に低下した。そこで潔く方針を変更し、授業時間を1割程度増やした。これで問題の本質が本当に解決するのか、学力低下を論ずる前に「どんな学力が子どもたちに必要なのか」を問題にすべきであると著者はいう。そのためには「学ぶ楽しさ」「自分で考える力」「考えたことを実行する勇気」を養う必要があると書いている。

知の衰退の現状(その2)  ―― 低IQ社会(危機を感じない国民) ――
現在の多くの日本人は、生活環境、社会・政治・経済等について関心はあるが何の疑問も持たないだけでなく、「ほんの少し考えること」さえしなくなった。それはテレビのクイズやお笑い番組、携帯電話に振り回される大人や学生たちからも伺えると指摘している。考えないのは、子どもたちだけでなく、大人も同じである。その結果、危機を危機として感じない国民となってしまった。時代に流され自分を失ったのは国家レベルの問題でもある。

知の衰退からの脱出  ―― 集団IQの向上(21世紀の日本) ――
こうした「知の衰退」をどうしらた解決出来るのかというのが、この本のねらいである。著者は、「日本人の一人ひとりが集団IQを高め、経済的繁栄を持続すること」と書いている。そのためには、教育改革が必要であると提言している。そして、これからの時代を生き抜く手段として、「英語」「ファイナンス」「ITを駆使した論理思考と問題解決」が必須である。そして『身近なナゼを考え、自分らしくユニークに生きる』必要性を提唱している。

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