図書紹介
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くまとやまねこ
(湯本香樹実・ぶん、酒井駒子・え、河出書房新社発行、2008年4月30日初版、2009年01月22日、22刷、1,300円+税)

デニマルさん:3月号

今回紹介の本の話題性は、何と言っても「第1回MOE絵本屋さん大賞」で三冠(総合部門、美術賞、文学賞)を達成したことである。このMOEとは、絵本を応援する月刊誌(白泉社発行)のことで、2008年のベスト絵本を全国の本屋さんが選びMOE大賞として表彰した。各賞には、絵本だから素晴らしい絵を描いた作品に美術賞、ストーリーや言葉全般に優れた作品に文学賞、それらを総合して総合部門賞が授与された。今回は第1回目の受賞だから過去の作品と対比できないが、2008年の新刊以外で売れた絵本も紹介している。「いないないばあ」(松谷みよ子・文)、「ぐりとぐら」(中川梨枝子・文)、「はらぺこあおむし」(エリック・カール)等々がある。今回の絵本はモノトーンの繊細な絵が描かれ、熊の心の悲しみを色で表し、徐々に立ち直っていく気持ちを僅かなピンクでその兆しを表現している。

くまとことり   ―― 熊の一番の友だち【きのう】 ――
主人公の熊には、仲良しの小鳥がいた。小鳥との会話で、「きょうの朝も『きょうの朝』で、昨日の朝も一昨日の朝もその時は『きょうの朝』だった」と話す。小鳥は『きょうの朝』が一番好きだと言っていた。二人は、いつも『きょうの朝』を共にした。作者は音大卒業たが、小説や絵本、童話も書いている。小説「夏の庭」は、日本児童文学者協会新人賞を受賞し10ヶ国語以上に翻訳され、ボストン・グローブ賞を受賞し海外でも評価されている。

くまの悲しみ  ―― 親友を失った熊【きょう】 ――
ある朝、仲良しの小鳥が亡くなっていた。熊は「昨日の朝に戻れるなら、ボクは何もいらない」と悲しんだ。そして森の木々で小さな箱を作り、木の実の汁できれいな色に染め、中に花びらと小鳥を入れた。熊は、その小さな箱をどこに行く時も持ち歩いていた。この本のもう一人の作者は、多くの絵本に絵を書いている。「ビロードのうさぎ」「よるくま」等があり、「ぼく、おかあさんのこと・・」では、フランスやオランダで表彰されている。

くまとやまねこ  ―― 熊を支えた山猫【あした】 ――
ある日、熊はバイオリンを持った山猫に出会った。そこでバイオリンを聴きながら小鳥のことを思い出し、もう帰ってこないことを知った。熊は、小鳥との思い出の場所に小さな箱を埋め、まわりを花で飾り区切りをつけた。そして、山猫と共に旅に出ることになった。この本のストーリーは、熊と小鳥と山猫の話である。『今日の朝』は、「明日の朝」がくるための朝である。だから「くまとことり」ではなく、『くまとやまねこ』なのだと納得した。

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