図書紹介
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「がんばれ!銚子電鉄」 ローカル鉄道とまちづくり
(向後功作著、日経BP社発行、2008年02月04日、1版、178ページ、1,400円+税)

デニマルさん:5月号

この本は今年2月に新聞の地方版の記事として紹介されたもので、直ぐ取り寄せて読んでみた。銚子電鉄の経営問題は、数年前からメディアで取り上げらていたので概要はわかっていた。しかしこの本を読んで、改めて時代の流れを感じさせられた。それは地域における鉄道の役割と時代の変遷であり、インターネットによる情報伝達力とその影響の大きさである。著者は、その渦中にあって変わりつつある状況をこの本にまとめた。仕事の立場上会社のスポークスマンとして奔走されているが、会社を超えて地域をどう活性化するかの問題に立ち向かっているように思われる。その点が人を動かす感動の原点となっている。

ぬれせんべい騒動   ―― 銚子電鉄の危機 ――
この本を読むまで、銚子電鉄の経営が「ぬれ煎餅」等の鉄道以外の売上げで支えていることを知らなかった。裏を返せばそれ程鉄道事業は、儲からないということである。特に、地方の輸送会社は、高齢化、過疎化で利用者が減少し経営が成り立たない状況にある。しかし輸送会社は地元住民にとっては、無くてならない公共機関である。その会社存亡の危機をインターネットで「ぬれ煎餅を買って下さい」と訴えた。それを見た全国の方々が銚子電鉄サポーターズとして救援の手(会員4,530名、基金は1,607万余円)を差し伸べた。

ローカル鉄道  ―― 銚子電鉄と著者 ――
著者は、地元銚子の生れである。学校卒後は、一時期大阪に勤めていたが、長男なので地元の銚子電鉄に再就職した。駅員から運転手を経て本社勤務となり、現在鉄道部の次長である。利用客の少ないローカル鉄道の経営は、苦しい。そこで副業で「たい焼」や「ぬれ煎餅」等の物品販売をして凌いでいる。しかし安全輸送を支える車両や線路等は、一定の基準で交換するので費用が掛かる。営業売上を増やすには、地元でのイベント開催での集客が必要である。著者は地元の方々と積極的に交流を深め、イベント実施の足場を築いた。

銚子のまち  ―― 銚子電鉄とまちおこし ――
銚子は昔から漁港と醤油の街として有名である。また「飯沼観音」と犬吠崎灯台の観光地としても知られている。しかし、鉄道利用者は地元住民が主体である。その意味でローカル鉄道会社は、地元との繋がりが必須である。地元産の醤油でぬれ煎餅を作り売るのは必然性がある。これからのローカル鉄道と地元が活性化するには、計画的なまちおこしが求められる。著者は、今までの経験を実現させるために大学に入り勉強した。そこで将来の銚子の発展と鉄道の特性を活かした「まちづくり会社」構想を練り新たな挑戦を開始した。

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