P2Mを活用した価値創造の広がり(2)
―「価値第一」から始まるプログラムマネジメントの実践―
PMAJ P2M普及・推進部会 藤澤 正則 : 1月号
P2Mと聞いてもご存じない方や、限られた業務に関わる人向けの考え方だと思っている方も多いと思います。実はP2Mには、企業活動における日々の業務にも適用できる「仕事の組み立て方・進め方」の考え方が含まれています。企業活動は、日々の業務(定常的な仕事)だけでなく、新しい取り組み(非定常の仕事)にも支えられています。新しい取り組みを進める場合、「なぜやるのか」「何のためにやるのか」を明確にしながら、関係者と協力し成果を出すための実践的な方法であり、その手法の一つとしてP2Mがあります。
(※定常=普段の仕事、非定常=新しい取り組み)
2025年9月に発行された「P2Mを仕事に活かしている方々の声」には、32名の方から、31のP2Mの活用事例を掲載頂きました。この冊子の作成のために、執筆者の皆様には、ご協力いただけたこと御礼申し上げます。
2025年12月号では、実践されている方々の内容から、「P2Mを活用した価値創造の広がり」として、①活動領域②適用したP2Mの分野③執筆者(または実践者)の視点から俯瞰して、まとめてみました。今回(2026年1月号)は価値の視点でまとめ、2026年2月(予定):構造の視点、2026年3月(予定):人の視点について、連載していきます。
実践者は、なぜ制約条件がある中でも成果(結果)を出しつつ、価値を生み出せたのかを考えてみました。
- 1.はじめに:価値から始まるマネジメントへ
職場では、業務改善、新規取り組み、デジタル活用、チーム改革など、日々さまざまな変化が起きています。
しかし、変化を進めるときに一番大切なのは、「何のためにやるのか?」「どんな価値を生み出したいのか?」という問いです。仕事の目的(価値)が先にあることで、やり方がぶれず、関係者と話がかみ合いやすくなります。
- ① 「なぜ変えるのか」「何を守るのか」を問うことが出発点。
- ② P2Mでは、成果よりも「価値」を軸に全体を設計する。
- ③ 変化が常態化する時代において、“価値を再定義する力”が持続的経営の源泉。
- 2.価値の定義:P2Mにおける価値の三層構造
P2Mでは、価値を以下の3つに整理して考えます。
下記の3つがそろうと、その仕事がモノや成果を超えて、人と組織を動かす力を持ち始めます。
- ① 社会・顧客にとっての価値(存在意義・Purpose)
- ② 組織・事業にとっての価値(成果・競争優位・ブランド)
- ③ 個人・関係者にとっての価値(納得・成長・誇り)
「誰に」「どんな価値を」「どのように提供するか」を明確にすることがプログラムの起点となります。
- 3.価値創造の構造:P2Mの原理と実践モデル
P2Mの活用事例を分析すると、成果を出せた方々には共通点があります。
それは「方法や手順より先に、価値を共有していた」ということです。
- ① P2Mプリンシプルにおける「価値第一主義」
- ② 企画構想モデル/実施モデル/運用モデルの循環
- ③ 定常(守る)と非定常(変える)を価値軸でつなぐ
- ④ プロジェクト単位の“成果管理”ではなく、プログラム単位の“価値管理”へ
<<備考>>
“成果管理”とは、プロジェクト単位の仕事の出来栄えを評価すること。
“価値管理”とは、取り組み全体が「何のためにあるのか」を基準に判断すること。
- 4.価値の共有と可視化:合意形成の仕組み
この価値共有があると、仕事の進行スピードも、関係性の質も変わります。
- ① ミッション・ロードマップ・KGI/KPIを「価値の言語」として設計
- ② 関係者が“価値の実感”を共有できる対話・内省・評価の仕組み
- ③ 成果指標より「納得できる変化」「共感できるストーリー」を重視
- 5.価値を軸にした仕事が動くときの共通点(事例から)
実際に成果が出ている事例には、次の特徴がありました:
- 価値をはっきり言葉にしている
- 関係者同士の理解が進んでいる
- 「意味づけ」が明確
- 共通のゴールがある
- 人が動きやすい雰囲気がある
- つまり、価値を中心に置いた仕事は動く。
- ① DX・人材育成・地域創生・サステナビリティ等で共通する“価値再定義”のプロセス
- ② 「効率化」から「意味づけ」へ、「KPI」から「Why KPI」へ転換
- ③ 価値を中心に据えることで、分断された組織や立場を統合できた事例群
- 6.価値を生み出す人と文化
価値を生み出すためのプログラムマネジメントとは?
難しい言葉に聞こえますが、本質は簡単です。
プログラムマネジメントとは、複数の取り組みや企画を「価値を軸にまとめて進める方法」です。プロジェクト(単体の取り組み)とは違い、複数の取り組みを合わせて、より大きな価値を生み出します。
それを進めるには人です。
- ① 価値を“定義・共有・共創”できる人材とは
- ② ミドル層の「橋渡し」と「翻訳」機能
- ③ 守る文化と変える文化の両立を可能にする“価値の共通言語”
- 7.まとめ:価値の共有が組織を変える
価値を中心に考えると、仕事の優先順位、判断軸、チームの雰囲気、成果の出方、すべてが変わります。
- ① 価値を起点に仕事を進めると、それを実現する仕組み(構造)や関わる人の動き方も変化していきます。
次号(2月号)は「構造の視点」から、価値を実現する仕組み化を探ります。
「あなたの今の仕事の価値は何ですか?」
P2Mについて「もっと知ってみたい」「自分の仕事にも活かしてみたい」と感じていただけた方は、ぜひP2M普及・推進部会の活動にもご関心をお寄せください。
現場に根ざした実践知を共有し合う場として、皆様のご参加をお待ちしております。
備考
本稿で取り上げた内容は、統計的な検証や理論実証を目的としたものではなく、現場で実践してきた個々人の経験に基づく知見を整理したものです。
(出典:PMAJ「P2Mを仕事に活かしている方々の声」2025年9月改訂版)
以上
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