PMプロの知恵コーナー
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PMプロフェッショナルへの歩み―14

向後 忠明 [プロフィール] :1月号

 今月号はPMプロフェショナルの歩みー13にて予告したPFI事業について話をします。
 これまでプラント建設、金融システム開発、香港におけるマーケッティング活動、そしてISO 9001に準じた企業変革等々業務形態の異なる分野での活動をしてきました。そして、それぞれの過程で得たプロジェクトリーダとして必要なプロジェクト&エンジニアリングマネジメント等に必要な知識体系及び関連知識が応用できること等、実践を通して示すことができました。
 しかし、このPFI事業はこれまで筆者が手掛けた各種プロジェクトまたは業務とはけた違いに多くの難題を含む仕事でした。
 本事業は筆者が介在する前から開始されていました。筆者はISO 9001の業務を主体として動いていました。しかし、プロジェクトの進捗につれ、本事業を進めている現地グループからの進捗報告や筆者に対する質問の内容が複雑・多岐にわたるようになり、その事業に深く入り込むようになりました。そこで、この事業の仕組みがどのようなものかを知らない限り現地に対して適切なアドバイスができないので、この事業の仕組みを知ることが必要と思い、本事業への出資担当者であるN社国際部にヒアリングを行いました。
 その結果、この事業は前月号にて説明したように出資者(スポンサー)と金融機関との間で締結された完工保証契約下での日本、オーストラリア、そしてインドシアの投資家が設立した多国籍合弁現地法人(SPC)が遂行するという内容のものだと判明しました。
 すなわち、プロジェクトファイナンスといった特別な特定の事業を対象としたファイナンスをベースとした合弁事業です。
 そこでさらに「PFI事業とは、またプロジェクトファイナンスとは何か?」等この事業のスキームを調査する必要があると感じ、ISO 9001にかかわる業務の合間を見て勉強を始めました。
 ここでプロジェクトファイナンスとPFI事業について調べた結果を簡単に話したいと思います。
 これまでの企業に対するファイナンス方式は借入企業活動全体のキャシュフローから債務を返却するコーポレートファイナンス(Corporate Finance)が主流であったが、プロジェクトファイナンスは企業に対する融資というよりその対象となるプロジェクトに対する貸出であり、そのプロジェクトからのキャシュフローを財源としているのです。
 PFI事業の成り立ちは下図に示すように政府(公共部門)の財政逼迫と規制緩和による公共部門の財政逼迫と規制緩和による新ビジネス及び投資機会そして民間企業における投資機会の減少と新ビジネスの模索等の双方の利点を生かした新たな事業として進展し、それに伴いプロジェクトファイナンスといった対象事業に限ったファイナンス方法がとられるようになった。
 このような環境の中でN社は新事業分野開拓を目的に投資家と合弁にて本案件を立ち上げたものです。
 公社の狙いと民間企業の狙いから発生するPFI事業とプロジェクトファイナンスの関係を簡単に図示すると以下のようになります。

公社の狙いと民間企業の狙いから発生するPFI事業とプロジェクトファイナンスの関係

この結果として立ち上がった合弁企業(SPC)の組織図は以下のような構成となっています。

この結果として立ち上がった合弁企業(SPC)の組織図

 当初は上記のN社が担当する建設・戦略計画本部の作業状況の報告を日本側で筆者が受け取りISO9001の作業の合間にプロジェクト管理上のアドバイスをしていました。しかし、時がたつにつれ、この事業体(SPC)を揺るがすような大きな問題が発生し、現地からの求めに従い何度かインドネシアに出張し現地調査を行い問題把握と分析を行いその報告書を筆者所属のNI社長や上記取締役会に送りました。
 残念ながら当初は単なるアドバイザーの意見ということでこの報告書は事業会社の中でもあまり真剣に検討されることはなかったようでした。しかし、その後も事業会社の業績は依然と変わらず、さらなる詳細な調査分析をしてほしいと建設計画本部から依頼があり再度現地に出かけ、建設本部内の日本人スタッフからオーストラリア側スタッフとの関係など詳細な現状を聞き、プロジェクト現況の問題点を詳細に見聞きし、具体的にどのような対応をとっていけばよいか等のヒアリングを行い、印象として下記のような問題点が浮き彫りになりました。その概要を以下に示すと:

 全体的な調査内容では、業者への機材及び業務に関する入札やそれに伴う建設がほとんど進捗ゼロに近い状態であること、そのためN社派遣の日本人スタッフの能力に疑問がもたれ、建設本部内や他の本部のオーストラリア側スタッフによる突き上げが目に余るような状態であった。その原因としては:
  1. ① 建設本部の強いリーダシップがないためオーストラリアやインドネシア等の他の株主企業からの介入
  2. ② 進捗遅れの原因究明がなされないままの会議(問題分析より達成義務の変更に関する会議ばかり)
  3. ③ 建設のキーとなるオーストラリア建設計画部のPM(プログラムマネジャ)のマネジメント能力不足と日本人主体のエンジニアリング設計部門とのコミュニケーション不足そして独自判断による現場の混乱
  4. ④ 日本人本部長の指導や判断の不作為から上記PMの本部長に対する不信感
  5. ⑤ オーストラリア側のコントロール部門の進捗管理のズサンと細かすぎる進捗管理と設計及びPM担当者の理解不足
  6. ⑥ 建設計画部のPMと各サイト責任者(エリアPM)間のコミュニケーションギャップ
  7. ⑦ 各部門間での情報連絡の不備や必要図書の未送達による作業遅延

 すなわち、本件の基本的な問題は建設計画本部の海外事業の不慣れと多国籍企業組織にありがちな問題に起因していることが主な原因と思いながら、調査結果とその問題の具体的対応策を示し、書類をまとめ、今度は取締役会の上位である幹事会を構成する各代表に送り帰国の途につきました。     続きは来月号に・・・

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