今月のひとこと
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 史上初の快挙 

オンライン編集長 深谷 靖純 [プロフィール] :11月号

 ようやく秋がやってきたようです。猛暑によって痛んだ枝葉は諦めるしかありませんが、生き残ったものについては、寒暖の差が大きくなっているので見事な紅葉が期待できそうです。京都などの名勝地は、かなり混雑する見通しですので、近場の穴場を探してみようかと目論んでいます。
 そんなこともあって、紅葉にはちょっと早いのですが、先週末に青梅市の酒蔵の蔵開きに参加しました。昨年もこの欄で紹介した編集子の恒例行事です。生憎の雨でしたが、雲間の山の景色は、なかなかのものでした。大勢のお酒好きが集まりましたが、肌寒かったので、皆さんほぼ冬装束でした。

 日本で初めての女性の首相が誕生しました。「憲政史上初の快挙」だそうです。にもかかわらず、この快挙を誰もお祝いしていないように感じるのは編集子だけでしょうか。もちろん、新首相の陣営や支援・応援していた方々が喜ぶ姿は、数多く報道されています。選挙予測が何故狂ったかとか少数与党がどのように政局を運営するかといった話題に、「史上初」が霞んでいるように見えます。新首相の積極財政に期待する「市場」は活況を呈している模様ですが、「史上初」をお祝いしている映像を見た記憶がありません。誰も「史上初」を喜んでいないのでしょうか。
 女性が首相になったからといって特別視するのは差別だと主張する方もいますが、世界の中で日本がジェンダー平等ランキング下位をキープしている最大の理由は、経済や政治の分野での男女間格差です。会社役員や国会及び地方の首長・議員に占める女性比率が低く、男女間に格差があり、日本は差別する国だと評価されているのです。女性を首相に選んだからといって、そんな男女格差がないという証明になるわけではありませんし、評価や格差の実態が直ぐに変わる訳でもありません。ただ、何らかの変化のきっかけになると期待してもいいのではないかと思うのです。とりあえずは、目出たいことだと喜んでもいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
 などと、勝手に想いを巡らせていましたが、誰がどのようにお祝いするのでしょうか。そもそも、歴史的な快挙というものは後から振り返って「あれが快挙だった」と思うもので、何か事が起きた時に快挙かどうかは分からないのかもしれません。多分ですが、将来「昔は男女間格差というものがありました」といえるような時代になって、「女性首相の誕生が格差を解消する契機になりました」と歴史の教科書に載るようになって、初めて快挙だったといえるのだと思います。
 格差是正に取組んでいる方々には申し訳ないのですが、そういった方々の活動によって不平等な法律が改正されたりしてきましたが格差解消とはなりませんでした。女性首相誕生も、格差解消に繋がるかどうかは不透明です。
 「TO BE」を「格差が解消された世界」だと置いて、P2Mが説く3Sモデルに沿って見てみると次のようになります。
  1. ① システムモデルプロジェクト:初の女性首相誕生によって完成
  2. ② サービスモデルプロジェクト:格差解消社会の実現によって完成(価値の獲得)
 新首相の陣営や支援・応援していた方々は、システムモデルプロジェクト完成を喜びお祝いしました。サービスモデルプロジェクトは、まだ誰が担うかも決まっていない状況ですので、お祝いできなくて当たり前ということになります。
 とはいうものの、憲政史上初ということなので、何らかのお祭りみたいなことがあってもいいように思うのです。
以上

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