PMプロの知恵コーナー
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マインドフルネスをプロジェクトマネジメントに取り入れる

竹腰 重徳 [プロフィール] :4月号

 マインドフルネスとは、「今、この瞬間」の体験に意識を集中して観察し、評価や判断をせずにありのままに受け入れている心の状態を指します。このような心の状態になる訓練により、ストレスの軽減、集中力の強化、創造性の向上、感情の調整機能の改善などの効果が科学的に実証されており、心理学、医療、教育、ビジネスの分野などマインドフルネス実践が広く活用されています。

 プロジェクトマネジメントに、マインドフルネスを取り入れることで、今この瞬間に意識を向けての気づき、集中力の向上、ストレス低減、コミュニケ―ションの改善、創造性の向上、柔軟性がすすみ、より良いプロジェクト結果やメンバーのウエルビーイングが得られるようになります。具体的に次のような効果が期待できます。
  • 集中力と決断
    心が散漫になることが減り、今取り組んでいることに集中でき、より冷静で適切な決断ができるようになります。
  • ストレスや不安の低減
    厳しい締め切りや複雑な課題に遭遇しても、ストレスや不安が低減して冷静で適切な判断や行動がとれるようになります。
  • チーム・コミュニケーションの改善
    チーム内の対話が深まり、相互理解が進みます。これにより誤解や対立を減らすことができます。
  • 創造的な問題解決
    マインドフルネスは、プロジェクトで発生するいろいろな課題を新しい視点やアイデアを生む助けとなり、創造性を発揮して問題解決ができるようになります。
  • リーダーシップの質の向上
    プロジェクトマネージャーが、マインドフルネスを実践すると、リーダーシップの質が向上し、チームやプロジェクト結果に良い影響をもたらします。
  • チームモラールの向上
    マインドフルネスは、他者への思いやりが向上させます。プロジェクトマネージャーがチームメンバーの気持ちに思いやりをもって寄り添うことにより、メンバーのモチ―ベーションが向上し、メンバーが失敗を恐れない自由闊達なチーム環境を育むことができます。
  • 適応性の向上
    予期しないプロジェクトの変更に対して柔軟に対応できるようになります。

 プロジェクトマネージャーが、マインドフルネスをプロジェクトに取り入れるために、定期的な呼吸瞑想の実践とマインドフルな日常活動をすることにより、チーム全体の意欲と能力を向上させ、プロジェクトを成功に導きます。

  • 呼吸瞑想
    1日の中で、予め時間を決め、最低でも3分間毎日瞑想することを習慣にします。瞑想は背筋を伸ばし、リラックスして座るところから始めます。そして半眼か目を瞑り、自然な呼吸をしていきます。息が入っているときはただそれに気づき、出ていくときはそれにただ気づきます。大切なことは気づきを忘れずに油断せず、一息一息丁寧に息の流れを観察し続けます。途中無意識のうちに過去や未来のことを考えたり、さまざまな雑念が生じ、呼吸から意識が逸れたら、それに気づき何もせずそのまま優しく手放し、呼吸の方に意識を戻していきます。これを時間まで繰り返します。
  • マインドフルな日常活動
    プロジェクト会議ではメンバーやステークホルダーの発言に注意を集中して傾聴し、プロジェクトの状況やニーズを丁寧に観察して対応します。また、メンバーとの一対一の対話に意識を集中し、メンバーのワークロード、課題、ウエルビーイング、貢献に対するフィードバックなどを行います。
  • メンバーへの実践指導
    マインドフルネスをプロジェクトマネージャーだけでなく、メンバーたちに取り入れることで、プロジェクトの成功だけでなく、チーム全体のウエルビーイングや職場環境の改善が期待できます。

参考資料
(1) ジョン・カバットジン、マインドフルネスストレス低減法、春木豊著、北大路書店、2017
(2) Melissa Olander、5 Tips to bring mindfulness to project management、BairesDev

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