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ゼネラルなプロ (160) (プロジェクトマネジメントと契約)

向後 忠明 [プロフィール] :2月号

 先月号までは委託業務を中心とした請負契約、委任契約、準委任契約等のプロジェクト当初において顧客と接する委託業務形態別の契約について述べてきました。
尚、上記の各契約に関連して以下に示すような仕事の範囲、支払い方法、請負方法、支払う通貨、決済時期及び匿名/随意契約等の成約形態の違いによる各種分類方法もあります。
 以下にその分類方法について説明します。

  1. 1) 貿易にかかわる実務において外国に資機材を船積みにて搬送する場合の役務範囲を示す契約
  2. ① FOB型契約
    機械や材料等の購入取引に利用される物品の本船渡しの契約であり、機器材料供給メーカとの売買契約に多く利用される。
  3. ② CIF型契約
    FOB型契約とおなじであるが、船の手配及び運搬中の海上保険を含む現地渡しでの売買契約に利用される。

  4. 2) 一括請負契約をフルターン、メカコン、試運転渡し、訓練指導付き渡しとそれぞれの範囲を示し顧客に引き渡す際の契約に示す条件として使用される。
  5. ① ターンキー契約
    設計、機械・機器供給、建設そして試運転まで含む契約でキー(鍵)を回すと設備が動き出すような範囲までの仕事を言う。
  6. ② メカコン渡し
    機械的完了を示し設備の建設を機械的に完了し、運転の開始ができる準備までの範囲で仕事を引き渡すもので上記のターンキーの一歩手前までの仕事の範囲を言う。
  7. ③ 試運転渡し
    メカコン渡しより一歩踏み込んだ契約で設備の始動、保証運転までの範囲の仕事での引き渡しを言う。
  8. ④ 訓練指導付き渡し
    顧客の運転員の訓練、指導する役務までを含む範囲の仕事を言う。

  9. 3) ソフトウエアー型契約
    要件定義、設計、調達、プログラミング、試運転指導等の個々の役務のみを対象にした契約
    上記のそれぞれの契約形態は受注する請負業者と発注者である顧客とのプロジェクト遂行能力にかかわる部分が大きいので、双方の十分な調査を行ったうえで提案するとよいでしょう。

  10. 4) 請負方法による分類
  11. ① プライム方式
    単独でプロジェクトのすべての設備またはシステムを設計、調達、建設、場合によっては設備の運営までの範囲の仕事を一括で請負う方式。
  12. ② マルチ方式
    設備又はシステムを建設エリア別または技術分野別に分割し、数社に発注する方式。
  13. ③ コンソーシアム方式
    この方式はすでに説明の請負契約の中のものであり、国際または国内問わず数社の企業がプロジェクトの大規模化と複雑化を背景にしたリスク分散、技術の相互利用、資金リソースの多様化、及び法的規制への対応を理由に共同連帯してプロジェクトに取り組む方式であり、大きく分けてジョイントベンチャー方式とコンソーシアム方式がある。

  14. 5) 建値通貨による方式
    この方式は国際プロジェクトの場合であり、①円建て②ドル建て③他通貨建て④オンショアー/オフショアーなどがあるがここでは説明を省略します。

  15. 6) 決済時期による分類
    これには①進捗払い②ファイナンス付きサプライクレジット③ファイナンス付きバイヤーズクレジット④スケジュール払いがあるが、特殊なケースを除いてほとんどの場合①または④です。

 その他にも成約形態別による分類もあるが、このように契約形態には多くの種類があり、どの形態をとるかはそのプロジェクトに求められる要求条件、金融状況、仕事の範囲、仕事の進め方、プロジェクトの規模、そしてプロジェクトを取り巻く環境等々によって変わってきます。
 これまで業務委託契約について話をしてきましたが、その中でも上記に述べられるようなプロジェクトに求められる各種状況によりいろいろな契約形態もあることを考慮に入れた契約書の作成が必要となります。
 なお、契約は締結する目的や相手によって契約内容や構成も変わってくるので、顧客から求められる要求をよく理解し、そして判断してまとめていくことが必要となります。
 なお、ここまでは一般的なプロジェクトについての契約について述べてきたがそのほかにPFI 事業やPPP事業といったファイナンスを含むかなり複雑な契約形態もあるが今回は省略いたします。

 さて次は「契約とリスク」ということで話をしてみたいと思います。
 契約はリスク回避、リスク軽減策の手段でもあり、そのため請負側から見れば顧客要件を精査し各種調査に基づき契約書にその対策を考え対応していくことになります。顧客側も決められた契約条件に自分たちにとって不利なことが示されてないかを注意深く見ていく必要があります。
 この作業がいわゆる契約交渉であり、双方とも全知全能で自分たちに不利にならない様に最大努力する場面となります。
 そこでどのようなリスクが存在するのかは、それぞれの状況とリスクの種類により多岐にわたるが、その概要を以下に示します。
 一般的に海外でのプロジェクトの場合はリスク事象のインパクトが大きいことを考え、海外プロジェクトにかかわるリスクについても見ていくことにします。
  1) プロジェクト遂行中に起きるリスク
  2) 海外プロジェクトにかかわるリスク
 なお、ここで海外プロジェクトにかかわるリスクについては契約以外に日本企業にとってプロジェクト実施国の商習慣や言語の違いそして使用通貨などの対応等々多くの解決すべき問題もあります。特に日本企業の顧客要件の不明確なシステム開発プロジェクトでは言語を含めこの種のプロジェクトでは大きな障壁となっています。来月号ではこの件についても説明していきます。
 なお、リスクについてはPMAJオンラインジャーナルでのゼネラルなプロ(146~152)リスクマネジメントと失敗の構図にリスクについても詳述しているので参照ください。

 今月号はここまでとし続きは来月号とします。

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