今月のひとこと
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コミュニケーションについて

オンライン編集長 三浦 進 [プロフィール] :5月号

 本題に入る前に、「改訂第3版P2Mガイドブック」が刊行されたことを祝したい。改訂に参加された方々のご努力に感謝する次第である。ミッション志向のプログラムマネジメントを柱とするP2M® は改革、価値創造の為のプロセスであり、各分野で益々活用され広がって行くことを願うものである。ジャーナルはその普及の力となる必要がある。

 今月は、コミュニケーションについて触れてみたい。

( 1 ) 単純で良く発生する問題 (言った! 聞いていない!)
 大きく分類するとコミュニケーションは、コミュニケータA,B、メッセージ、とコンテキストの要素で、相手に発信され、受け取ったその相手は、それを解読し意味を理解し新たな内容のメッセージを返すものである。
 プロジェクトの現場では何が起きているであろうか。しばしば見聞きする光景がある。「私は貴方に今日までと依頼したつもりだ!」「そんなこと約束したつもりはない。」とコンフリクトが生じている。良く観察していると「私は貴方に今日までと依頼したつもりだ!」とクレームしている人は何時も同じ人の様な気がする。自分勝ってというか、初めから自分の要求は通っていると思い込んでいる。そんな上司、プロマネがいるのではないか。相手が自分の要求(メッセージ)を“解読し意味を理解”したのか、そのフィードバックを確りと捉えていないが故に問題が発生している。この事例では、上司、プロマネであれば相手から確りとした言葉での要求事項の理解をその時に取付けるべきであり、用心深く進めるなら、その時に「進捗の中間報告をXX日までメールでも良いから下さい。」とチェックポイントを作っておく、若しくは、その要求期日の前までに進捗の確認をFace to Faceかメールで行うべきであろう。忙しいプロジェクトの中で処理する目先の仕事に追われ、コミュニケーション上の問題は多く発生するが、発信する、受取る、返信する、お互いがその場でコンテキストを正しく理解する、問題あれば後に残さないことが円滑なプロジェクト運営につながる。

( 2 ) プロジェクトチーム内の伝達事項 (正式文書が必要)
 プロジェクトがスタートすると、実行方針書(戦略・使命記述等)、実行計画書(含む、組織 (役割・責任)、スケジュール、予算)が作られ、企業組織(文化)により異なるが、通常は上位組織(ボード)での承認を得て実行に移される。キックオフミーティングやプロジェクト会議で基本方針が伝達され、必要な調整が各部門と行われ、各部門ではそれに基づき詳細な計画を立てていく。これらの計画書があることでプロジェクトは動き出すことが出来る。プロジェクト規模によるが実行計画書が完成するまでには時間を要し、「当面の作業スケジュール」を発行しスタートして行く。スケジュールなどは段階的な詳細化が行われる。この時期には、プロジェクトコントロールプロジェジュアー(スケジュール・コスト等)、ドキュメントコントロールプロセジュアー等、各種要領書が作成される。これら要領書は、契約に従って客先の承認を受けていく。ここで承認を受けていくとのことは、共通の理解でこれからのプロジェクトを遂行していくためのコミュニケーションを行っていることである。
 以上は、プロジェクトの立上げ時期に通常必要となる計画に係わる正式文書の例であるが、特にプロジェクト遂行時でのプロジェクトチーム(関連部門を含む)内での指示・伝達事項の発信の仕方について触れたい。
 今は、プロジェクトのメール管理システムがあり、指示事項などはプロジェクトマネジャーから発信されることが多い。数多いプロジェクトチーム内のメールの中で、重要事項がその中の1つとなり埋もれ十分に徹底されない可能性がある。通知はメール管理システムで配信されるとしても、重要事項は1つの文書として管理し通達されるようにすると良い。これが「ジョブインストラクション xxx号」と番号付けした文書である。例えば、特定の会議を定期的に行うことを決め、その趣旨と構成メンバー等を連絡する。「ショブインストラクション xxx号、YYの品質・進捗に関するレビュー会議の実施について」等と文書にして通達する。この様な管理を進めていくとプロジェクトチームメンバーにより徹底することが可能となり、そのジョブインストラクションを作成する際に必要な仔細を検討することになり一層の効果を上げることが出来るようになる。新しい要領書、仕事の進め方等を伝達する場合も、単にメール配布では趣旨が伝わらず徹底されない。また、連番で指示を残していくことでプロジェクト記録、財産ともなり、その後のプロジェクトでも活用が可能である。
 些細なことであるが、プロジェクトの効果的な運営の手法として、もう一段下がったところでも、正式に簡単な文書化を行い伝達することを試してみたら如何かと思う。

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