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             ダブリンの風(122) 「不適格なPM群像 13」 
            高根 宏士: 10月号             
            
             
            
10 曖昧な目標(方針)設定 
 不適格なPMの例を、これまで12回にわたって書いてきた。ここで最も根本的な問題PMについて述べたい。それは要求されているニーズと現実に対応できるプロジェクトの能力を的確に把握し、その上でプロジェクトの目標とそれを達成するための方針を具体的に設定することができないPMである。 
 2月号で述べた例(嘘をつくこと)ではプロジェクトの方針として「品質第一」を挙げた。しかしこのプロジェクトが「品質第一」をそのままの形で、プロジェクト方針として掲げた場合、それはプロジェクトメンバーや関係者がよりどころとする方針にはなり得ない。このレベルの方針は企業全体とか、社長方針のレベルである。プロジェクトでは、それは単なるスローガンにしかならない。PMは、自分のプロジェクトでは品質の何が最も重要なのか、そしてそれはどのレベルに達したらOKとなるのかを明確にしなければならない。 
 ワインバーグは「品質とは誰かにとっての価値である」と云っている。すなわち受け手(ステークホルダー)が何を最も価値あるものと考えているかによって品質の具体的な内容は異なってくる。自分のプロジェクトでは、それは
  
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    ソフトウェアのバグを極小(ゼロ)にする | 
   
  
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    信頼度を上げる(目標MTBFの設定) | 
   
  
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    使い勝手を容易にする。(使う人はだれか?) | 
   
  
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    レスポンスタイムを短くする(具体的数値?) | 
   
  
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    日々のシステム運用の容易化 | 
   
  
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    システム(ソフトウェア)の改修、バージョンアップの容易化 | 
   
 
のどれか、またそれを達成するためにプロジェクトとしての重点留意事項は何か(例えば具体的な設計方針、レビュー方針、テスト方針等)を明確にすることがプロジェクトとしての「品質第一」を具体化することになる。これらを詰めず、単にスローガン的な言葉をプロジェクトの目標や方針と勘違いしているPMはプロジェクトをまとめていくべき基本を持たない。 
 PMはプロジェクトの開始に当たっては 
「どのような形でプロジェクトを完了したらプロジェクトは成功かを、具体的に示し、その目標と関連させてプロジェクト各メンバーの役割とその役割の目標を具体的に示すこと」 
 またプロジェクト推進中は 
「プロジェクト目標と各担当の役割の目標を常時、しっかりと把握してフォローする」 
ことが肝要である。これによりプロジェクトのベクトルを安定して確保することができるようになる。 
 プロジェクトはこの目標と方針が具体的に明確であり、それが達成できそうだとプロジェクトメンバーが実感したとき、メンバーの達成意欲は最大になり、理想的なチームワークが作られるようになる。
 
 
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