SIG
先号   次号

事例を通してPMの問題解決案を”考え”、”気づき”を得る

富士通株式会社 市川 和芳 [プロフィール] :4月号

1.事例を通してプロジェクトマネジメントのノウハウを共有する
 プロジェクトの現場でプロジェクトマネジャーは日々悩ましい問題に直面し、解決に奮闘している。プロジェクトの独自性から問題の種類は千差万別といってもよいが、これはどこかで聞いた話・・・と思い当たることも多い。問題事象を短文で紹介し、解決案の選択肢を設定してどれがベスト/ベターかを”考え”、WGの選択肢(解説)を通して”気づき”が少しでも得られたらこの上ない。
 本WGは上記を趣旨に昨年6月に活動をスタートし、ほぼ9カ月たった。現在は4社が参加し、毎月プロジェクトマネジメント上の問題解決事例を出し合い解決案の是非を議論している。37件程になったので、今回は活動報告の一環としてその一部を紹介したい。今回は”システムの開発”分野でお客様と開発ベンダーとの間で発生した齟齬に関する内容である。”絶対正解”は無いことが前提なので、その点はご高配の上評価いただきたい。

2.事例紹介
(1) 開発の最終段階で性能問題が発生
【問題事象】
 当社が担当する新規営業店オンラインシステム開発の完成が近づき、最終段階のシステムテストをお客様主体で実施することになった。日曜日の早朝に全国の営業所に出勤をお願いして、全営業店端末から一斉にテストデータを本社サーバに転送する「性能試験」を実施したところ、一瞬でシステム異常となってしまい、テストは中断してしまった。この性能試験方法(一斉転送)は当初の計画には無く、急遽追加されたものであるが、お客様の情報システム部門担当者は「論理上可能性があるので、この方法で是非クリアしておきたい」との意向で実施した。しかし、現行ハードウェア構成上、可能な範囲で環境を見直して翌週も再度トライしたが、結果は同様であった。これ以上性能を向上させるためにはハードウェアの増強が必須という状況である。
 営業店の担当者からは「もういい加減にしてくれ」との声が上がり始めた。当社から見ても、これ以上何度も営業所への協力を要請することは難しいと判断した。当社がとるべき行動として、以下の中から最も適切な解決案を一つ選択しなさい。
【解決案の選択肢】
1: 一旦、ハード増強用の必要機器を貸し出し、性能試験が完了した後に、お客様と費用負担の調整を行う。
2: 机上計算で可能な範囲の営業店端末台数に絞って、再度性能試験を実施するように提言する。
3: 情報システム部門から営業店担当者に再試験要請を行う際の、性能試験の重要性を説明する資料の作成を手伝う。
4: 本性能試験が実運用上はありえないケースと思われるため、試験内容を見直すことを提言する。
【WGの解決案と解説】
■テーマ:お客様からの過剰なテスト要求の見極め
 お客様主体のシステムテストとはいえ、エンドユーザの反発を買ってはプロジェクトの成功はおぼつかなくなるため、当社としても適切な支援が必要です。本件に関しては、実施しようとしている性能試験の妥当性を再度検証する必要があります。”全営業店端末からの一斉転送”という論理上可能性があるケースとはいえ、実運用上はありえない過剰な要求と思われるため、性能試験内容の見直しを提案します。
 実運用上の最大負荷をベースに余裕度も加味した試験内容に変更するべきです。その上で、机上計算や部分試験で見極めを行い、勝算が立ってから再試験を実施するよう営業店に協力を要請してもらうことにします。すなわち、上流工程で性能要件の見極めと合意、その要件に沿った適切な性能試験計画を作成することが重要です。[WGの解決案=4]

(2) こんなはずではなかった・・・エンドユーザからの不満の声
【問題事象】
 業務効率化のために、お客様からの依頼を電話やFAXに代えてWebで受け付けるシステムを開発することとなった。受付担当者が行っていた依頼内容の手入力部分をシステム化するものである。関係者が集まり要件定義を行い、システムベンダーから見積もりを取得した。しかし、業務効率化によるコスト削減額をオーバーしていたため、要件の絞込みを行った。システムが完成し、試行導入を行った。ところが、期待とは裏腹に担当者からは不満の声が噴出した。本来、全てが自動化されるはずであったが、要件絞込みの際、従来システムへのデータ受け渡し部分が削除され、手動でのファイル入出力となっていたためだ。結局、Web受付システムの本導入は見送られ、初期投資を回収できなかった。PMとしてどのように対応すべきであったか、反省観点から最も適切な解決案を1つ選択しなさい。
【解決案の選択肢】
1: 多少不便さがあったとしても、効率化の効果について良く説明し、新しい業務を受け入れてもらうべきだった。
2: 業務効率化を目指していたので、多少費用がオーバーしても要件の絞込みを行うべきではなかった。
3: 試行運用で問題が発覚したならば、新たな投資を行ってでも、システムの改修を行うべきだった。
4: 手作業を自動化しても業務の効率化にはならないので、初めからこのプロジェクトを進めるべきではなかった。
【WGの解決案と解説】
■テーマ:新システム導入時の担当者の納得性の確保
 どんなにすばらしいシステムでも、担当者は、業務内容が変わることに戸惑いや不安を覚えるものです。新システムの効果について粘り強く、かつ、丁寧に説明し受け入れてもらう必要があります。
 業務の効率化を目指している以上、効率化によって得られるコスト削減額以上の投資を行うことはできません。投資回収期間をどの程度まで許容するかは個別の事情にもよるため一概には言えませんが、いずれにしても投資可能額には上限があるものです。
 システム化による業務効率化は、実際にシステムが導入されて効率化の効果が現れて初めて成功と言えます。システムを完成させただけで満足せず、現場への導入(要件の絞り込み時の担当者への十分な説明)についても力を注ぐ必要があります。[WGの解決案=1]

(3) お客様からある日突然、開発拠点をお客様先に移すように言われた。
【問題事象】
 Aプロジェクトは、システムテストと、ユーザーテストを並行して進行中であるが、品質の確保が出来ず、本番稼動時期を延伸する事となった。現在の問題点としては、開発側とお客様の仕様の齟齬が多発しており、仕様変更を余儀なくされている。今後の進め方として、お客様からは、現在は開発会社にて行っている問題点分析、仕様調整、設計変更、テストの作業を、お客様先にて実施するよう要望されている。
  【制約条件】
1. お客様側には、開発環境は無い(構築が必要)。
2. お客様側に、開発側メンバー全員が移動する事は、作業スペースとして物理的に不可能。
 PMの貴方は、このお客様の要求に対してどうすべきですか、最も適切な解決案を1つ選択しなさい。
【解決案の選択肢】
1 :分散開発を避けたいので、お客様に開発拠点に来て頂けないか打診する。
2 :止むを得ないので、最低限のSEをお客様先に常駐させる。変更管理の運用は遵守して頂く様申し入れる。
3 :拠点分散はコミュニケーションネックとなり、費用も掛かる為、日程を決めて、集中して課題棚卸しをする方法を提案する。
4 :要求の通り、お客様先に開発環境を構築させて頂き、可能な限り、お客様先に移動させて頂く。
【WGの解決案と解説】
■テーマ:仕様齟齬多発とお客様要求に対する対応
 本番稼動時期を延ばした事の根本原因にもよるが、お客様から不信感を持たれている状態です。従って、「目の前で仕事をしないと信用出来ない」といった感情論になっている節もあり、頭ごなしに拒否する事は得策ではないと思われます。しかし、要求をそのまま受け入れる事は、コミュニケーション、費用、変更管理等の面で問題があり、解決案4は得策ではないです。解決案1は、お客様の対応に追われ、必要以上の介入により逆に混乱する事が想定される為避けたい。従って、解決案2で、コミュニーションネックとならないように工夫する事と、変更管理運用を確実に実施しながら進める事が得策です。解決案3の方法もありますが、その方法で解決出来るような状態ならば、本番延期にはならないと言えます。[WGの解決案=2]

3.WGへの参加のご案内
沢山の事例を集めたく、メンバーを継続的に募集しています。
業種:IT-SIG活動であるが、PMの領域は広くITに限らず広く対象とします。
WG開催:原則月1会の会合。都合により参加できない場合はメール/グループウェアを活用したリモート参加も可とします。
参加ご希望の方は、事務局  こちら までご連絡下さい。詳細は  こちら をご覧ください。

以上


 IT-SIG,内容にご意見ある方、参加申し込みされたい方は こちらまでメールください。歓迎します。

SIG推進部会は こちら
ITベンチマーキングSIGホームページは こちら
ページトップに戻る