PMプロの知恵コーナー
先号   次号

ゼネラルなプロ (21)

向後 忠明 [プロフィール] :7月号

 先月号“ゼネラルなプロ(20)”にて、プロジェクト目標の主なものは「スケジュール」、「資金(コスト)」、そして「品質」としました。そして、契約で求められるすべての条件を基本としてこの3つの目標を最適にマネジメントして行くことであると説明しました。
 確かにそのとおりであり、プロジェクト業務もそうですが他の定常的な業務においても同じことを目標としています。
 この目標達成のための計画作りについてはすでに“ゼネラルなプロ(18)”で話をした通りです。この目標を契約や資源そして取り巻く環境などの各種制約のもとで計画に沿って目標達成する動きがプロジェクト目標マネジメントです。
 プロジェクトマネジメントは以下の図21-1に示すように大きくプロジェクト計画とモニタリング&コントロールに分けられます。
 プロジェクト目標マネジメントはモニタリング&コントロールの部分を言います。
図21-1 プロジェクトマネジメントとモニタリング
図21-1 プロジェクトマネジメントとモニタリング

 すなわち、目標マネジメントは、目標達成を確実にするために、定期的なモニタリング(調達、成果物、品質、コスト、納期、図書、その他)の進捗管理に基づき、計画との違いを分析し、必要な調整と軌道修正をすると言ったコントロールから構成されています。
 モニタリング&コントロールとは「監視、傍受、(調査)」の意であり、プロジェクトでは計画に準じてプロジェクト全般の運営が遅滞なく実行されているかどうかを監視し、その結果として計画との差異が発生した場合の検証およびその調整そして報告を行うまでの仕組みを言います。
 モニタリング&コントロール対象の主なものはコスト、スケジュール、品質でありこの相反する対象を的確に監視し、調整しながらプロジェクトを進める必要がある。
 さらに、要員、資機材および図書等の管理はプロジェクト業務遂行にかかわる書類、必要機材および人材等のリソースそして要求事項変更に伴うコストの変化への対応なども含み、リソースモニタリング&コントロールと称します。
 これらの機能は品質やコストそしてスケジュール等に対するモニタリング&コントロールの補助機能としての役割をもっている。
 以下の表21-1にプロジェクトマネジメントにおけるモニタリング管理項目の主なものを挙げます。

表21-1 管理項目

管理項目 モニタリング/コントロールの対象
・ 要員
・ コスト(資金ないし費用)
・ スケジュール(時間、納期)
・ 品質(製品ないし技術)
・ 資機材
・ 図面(図面、仕様書、報告・連絡等々)
・ 業務負荷状況/要員状況/稼動時間状況
・ 実施予算状況/追加・変更
・ スケジュール進捗度合い
・ 検査/クレーム/仕様・スコープ変更
・ 調達項目/調達時期・機材入手
・ 図書類の発行/承認/変更

 ここでモニタリング&コントロールにおいてのあり方について以下の①から⑤に示してみました。

進捗状況の監視
 “突然の変化”や“驚き”の状況が発生しないように効果的かつ定常的にプロジェクトの現状を計画に従って常に監視する必要がある。

 プロジェクトは必ずしも順風満帆に進むわけではありません。どのように契約書やプロジェクトのリスク回避条件設定にてリスク回避の手を打っても突然の変化や驚きが発生します。このような事態を最小限に抑えることを目的とした行動がモニタリングです。
 原子力発電所の事故で政府が良く使っていた“想定外”という言葉ですが、プロジェクトをマネジメントする立場からすると何度も使いたくなる言葉です。
 しかし、顧客から見れば“そのようなことが起きないようにプロであるあなたがいる会社にこの仕事をお願いしたのでしょー!!!”の一言です。
 そのためには常日頃の状況の監視をプロジェクト関係者全員が見られる、そして分かるような仕組みを考えておく必要があります。
 例えば、プロジェクトの進捗カーブ等を進捗の予想と実際を示した大きな図面を壁のあちらこちらに可視化して張っておくとか、進捗会議をそれぞれの階層で行い進捗度合いを確認し、問題を早期につかむ等の方法があります。

達成状況の分析と評価
 現状の動向をよく監視し、計画と照らし合わせ評価し、計画への波及効果の分析をする。

 モニタリングの結果は当然計画にて示した目標と照らし合わせ問題があればそれなりの手を打たなければなりません。そのためには発生している問題を分析し、その問題が何によって引き起こされているかの原因究明が必要となります。ここで注視するのがISO9001でも述べている“真の原因”を見つけることです。対処療法はいけません。
 例えばスケジュールの遅れが機材納入に原因があると言うことで業者にクレームをつけて“早くスケジュール通りに納入しなさい”と言うだけではだめです。良く調べると「自社の設計が遅れている」とか「人出がなりない」とか、「顧客の承認が取れていない」とか、果ては「調達において納入時期に間違いがあった」等のいろいろな原因があります。
 また、上記のそれぞれの原因にもまた原因があるはずです。このように“真の原因”を見つけるための分析とその結果の評価を行うのがこの段階です。
 上記のケースは問題が発生した場合の処置ですが、③は問題が起こる前に取る行動を示しています。

予防処置
 ②に示すように問題がモニタリングの結果の分析・評価の他に、問題が起こる前に予防措置がとれるように、対座する問題を予測し、その真の原因を分析し、評価することも必要になります。
 この手段としては上記①および②で述べられる作業と同一であり、上記に示される内容の現状分析により潜在的問題や起こり得る状況を、経験を含め予測を行う。

 このようにモニタリングの結果として何も問題ないようなことであってもプロジェクトの実行において隠れた問題事象を見つけることもこの段階で必要なことでもあります。
  すなわち、状況分析であり、小さな事象でもそれが後で大きな問題に発展することもあるのでここで発揮する手法がケプナートリゴ法などと言った分析手法です。
  “ゼネラルなプロ”を目指す読者諸君はこれらの分析手法も知識として持っておく必要があるでしょう。

是正処置
 上記①~③のプロセスを経由して提供された情報をもとに問題の大きさの程度に従ってトップマネージメントにその改善策を含め報告し、初期の計画より大きな“ズレ”があったら、計画の見直しをする。

 ここで注意することはマイナーな修正は良いとして、大きな修正は必ずコストに影響することになります。是正処置の大小によっては顧客との交渉事になります。
 この交渉を有利に進めるためには契約時にコストやスケジュールに影響する事項についての取り決めをしておく必要があります。なぜなら、明らかに契約の条件に含まれているものは顧客との交渉によりコストやスケジュールの変更は認められる可能性は大きくなります。
 しかし、いわゆる“想定外”と言われる事項の処置は契約に示される不可抗力対象や顧客からの要求と言うものを除いて、変更の対象としては一般的には認められないです。
 このように、自らの技術の未熟さや詰めの甘さそして契約での条件闘争での安易な合意等による場合はほとんど自分の責任に帰することになります。

 以上のモニタリング&コントロールは「課題管理」の範疇にはいる活動であり、課題としてはどのように発生してくるかについては①から④にて説明してきました。これら発見または要求された課題については課題管理表に登録し、その対応策の処理経緯を残しておくことも重要です。
 課題管理とその結果の変更管理の流れを以下の図21-2に示します。
図21-2 課題管理と変更管理
図21-2 課題管理と変更管理

報告
 顧客に対し、現状の進捗度、出来栄えおよび現状の問題点等を月または週次進捗報告書(Monthly or Weekly Progress Report)の形で提出する。

 報告書は進捗によって顧客が契約に従って支払いをするのに必要な証拠書類であり、上記①から④までのモニタリングおよびコントロールの結果を示しているものです。

 以下表21-2報告書の一例を示します。
表21-2 報告書例

表21-2 報告書例

ページトップに戻る