例会部会
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第156回 例会報告

例会部会 中前 正: 1月号

 2011年もあとわずかとなりました。日頃、プロジェクトマネジメントの実践、研究、検証等に携わっておられる皆様、いかがお過ごしでしょうか。今回は、11月に開催された第156回例会についてレポートいたします。

【データ】
開催日時: 2011年11月25日(金) 19:00~20:30
テーマ: 「PMI2011北米大会にみるPM最新動向」
講師: 株式会社アイネット 竹腰重徳氏
株式会社ピーエム・アラインメント 中谷英雄氏
株式会社ピーエム・アラインメント 佐藤義男氏

 今回の例会は、1年ぶりとなる、PMI北米大会のレポートとなりました。今年の大会は10月22日からテキサス州ダラスで開催され、世界中から数多くのプロジェクトマネジメント従事者が参加。同25日、盛況のうちに幕を閉じました。例会の冒頭では、まず、大会のハイライトが講師から紹介されました。

R.E.P Breakfast Meetingにて、PMI戦略と最新情報が聞けた
Paper Presentationでは、160件の論文と11トラックから選択
PM展示会にてPM関連製品とサービスの動向を知る
世界70カ国から3000名(日本から60名)が参加
懇親会にて、各国参加者との交流ができた

 そして、基調講演やPMIアワードのセレモニー、展示会場の様子などがシェアされた後、発表論文の解説へと移行しました。発表論文は、以下の11分野で構成され、160を数えました。

1. Consulting and Sales Skills (CNS)
2. General Business Skills (GBS)
3. Government (GOV)
4. Industry Specific Issues (IND)
5. Project Management Issues (ISS)
6. Professional Development (PDS)
7. Project Management Tools (PMT)
8. Project Management Skills (PRJ)
9. Research Track (RSC)
10. Soft Skills (SFT)
11. New Project Management Trends (TRN)

 上記のうち、10.Soft Skillsは、今年新たに開設された分野です。他に、「新しいPM動向(昨年から倍増)」「PMスキル」「PMの課題」の発表が多かったようです。

 例会で紹介された、各論文の詳細な解説はここでは割愛しますが、今年度の特徴として、5つのポイントが挙げられました。以下、内容をおってご説明します。

アジャイル適用の拡大
  要件定義、バーチャル・プロジェクト、一括請負プロジェクトへの適用
  12のアジャイル関連セッション
  アジャイル実践者認定(PMI-ACP)のパイロット開始

 1年前の例会でも紹介されましたが、不確実性が高い環境下で、スコープの変化に柔軟に対応できるアジャイル手法の必要性が高まってきています。その適用範囲を拡げようとする動きが顕著になってきており、大会ではGOV(政府部門のPM)、ISS(PMの課題)TRN(新しいPM動向)などで関連論文が発表されたようです。
 PMI-ACPについては、アジャイル・コミュニティへの支援のため、2009年に開始され、1100人がパイロット受験した模様です。

超上流フェーズを強調したセッションが目立つ
  要求仕様の確定
  BABOKとPMの統合アプローチ

 BABOK(Business Analysis Body of Knowledge)の普及と定着が進められている各業界において、超上流フェーズをいかにこなすか、その重要性は増しています。TRN(新しいPM動向)の分野で発表された、PMとBAの補完的役割や争点を避ける方法が紹介されました。

「PMの課題」セッションの増加
  プロジェクト・マネジャーの役割、PM人材育成
  大規模プログラムとポートフォリオマネジメント

 プロジェクト・マネジャーが直接関与するプロジェクトマネジメントの問題と課題についての発表は、昨年に比べ増加しました。リーダーシップ、コミュニケーション・スキルなどのセッションが、人気があったようです。
 また、プロジェクト・ポートフォリオ・マネジメントは、ここ数年、企業経営上で不可欠になりつつあります。この手法の成功要因として、「組織のあらゆるレベルに、ビジョンが共有され、組織戦略が明示されていること」、「監視手続きを設けること。ただし、処罰が目的ではなく、共同作業を促進させ、ポートフォリオの健全性を評価することを狙いとする」などのポイントが紹介され、個人的に非常に参考になりました。

新PMI実践標準のプロモーション
  Earned Value Management第2版
  Scheduling第2版

 PMスタンダードとして発行されている実務標準については、先日リリースされた、アーンド・バリュー・マネジメント、スケジューリングの2冊が大きくプロモーションされていた模様です。ちなみに、PMBOKの新バージョンは、2012年12月に発行される予定です。

PMIチャネル・フレームワークの拡大
  グローバル・アラインアンス
  製品再販売プログラム(Advanced E-Learning Courses, Standards Navigator, Standards Benchmark)

 Breakfast Meetingにて、2012年以降に向けてのPMIの戦略が紹介されました。R.E.P.ネットワークの拡大、グローバル・アラインアンスの充実、そして製品再販売の強化のためのプログラムなどが挙げられたようです。

 以上、例会の内容をもとに、今年のPMI北米大会のポイントをかいつまんで紹介してきました。今後も、プロジェクトマネジメントの世界的な潮流について、普段からしっかりアンテナを張っておきたいと思います。

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